神経フェリチン症の実態調査と診断基準の構築に関する研究班

文献情報

文献番号
201324101A
報告書区分
総括
研究課題名
神経フェリチン症の実態調査と診断基準の構築に関する研究班
課題番号
H24-難治等(難)-一般-063
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高尾 昌樹(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) )
研究分担者(所属機関)
  • 百島 祐貴(慶應義塾大学医学部・射線診断科)
  • 山脇 健盛(広島市立広島市民病院・神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経フェリチン症は、フェリチン軽鎖の遺伝子変異により、変異フェリチンと正常フェリチンからなる封入体が、神経細胞やグリア細胞を中心に蓄積し、多彩な錐体外路徴候、錐体路徴候、認知障害を長期にわたり認める疾患である。頭部MRIで両側基底核の変性所見が特徴的である。しかし、現在、診断基準(指針)や本邦における実態は明らかではない。平成24年度の経過を背景に,申請時の予定通り臨床、バイオマーカーと、遺伝子変異確定例は表現形の対応を検討した。メールあるいは、直接電話などにより、診断支援の継続を行う。班会議において主治医参加の依頼を行い診断支援を継続する。
 診断基準(指針)を確定し、24年度調査を実施した施設へ再送付を行い、ひろく啓発することを目的とする。成果を関連学会や論文で報告することも目指す。剖検例が存在する場合は、共同研究を依頼し画像対比も含め検討する。
 本症のような稀少疾患のiPS作成を共同で開発することを目標とした、「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」班(代表、慶應義塾大学 岡野栄之教授)との共同研究で、本研究班で確認された神経フェリチン症例のiPS構築を行う。
研究方法
24年度の調査票解析
臨床:発症年齢、振戦・小脳失調・錐体路徴候・錐体外路徴候・高次機能障害・その他を、性状、頻度別等検討。
画像:画像の種類、特に頭部MRIにおける基底核を中心とした鉄、フェリチン沈着の所見、撮像シーケンス、機種、その他の所見など詳細な画像基準を確立。
検査所見:一般採血、血清鉄、フェリチン、脳脊髄液(特に血清および脳脊髄液における鉄関連マーカーの検討は欧米でも稀)の検討と、神経生理学的検査である脳波、体性感覚誘発電位などの検討確立。
病理:24年度に引き続き、未診断剖検例の掘り起こし、新規症例がある場合は共同研究の形態で病態を解明。神経放射線画像と剖検例が対比できる症例の詳細な検討。
主治医の班会議参加による個別症例を継続、診断精度をあげ、診断基準(指針)作成の根幹とする。
類似症候を呈する関連遺伝子も含めた診断依頼の支援を継続。同時に本邦の神経フェリチン症遺伝子変異の特性も含め実態を把握する。
診断基準(指針)を完成。24年度に調査を実施した施設に対し、診断基準(最終案)を用いて、神経フェリチン症例の有無、および基準の妥当性の調査依頼をし、診断基準(指針)を確定。状況により疫学・統計学者とも相談予定とする。
本研究班で認知された神経フェリチン症例でiPS構築に前向きな患者様への説明と、共同研究を、文部科学省「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」班と可能な範囲で施行予定。
(倫理面への配慮)各種ガイドライン、当施設倫理委員会等に拠る。
結果と考察
診断基準(指針)作成:神経フェリチン症(神経フェリチン症)の申請時診断基準(指針)を、班員と研究協力者による検討、日本神経学会総会シンポジウム、平成24年度の班会議などを背景に最終的に作成した。診断基準(指針)は、臨床症候、必要なMRI撮像方法や診断のポイントを示した。施設によりMRIの機種・性能が異なることを考慮して作成され、鑑別すべきパントテン酸キナーゼ関連神経変性症との違いも明記するなどの工夫がされた。平成24年度にアンケート調査をした施設など(神経内科施設(768施設)と、さらに神経放射線科(708施設))に、上記診断基準(指針)を送付した
診断支援:平成24年度からの診断支援を継続した。しかし、いずれも神経フェリチン症ではなく、1例は剖検で他疾患であることが確認された。
24年度に研究班で発見された、新規遺伝子変異症例の論文発表は受理された。
遺伝子変異と臨床表現型:確定症例数が少なく、表現型の特徴を結論づけることは難しいが、研究班で同定できた症例だけでも、その症候は、錐体路、錐体外路、小脳など多彩であった。血清、脳脊髄液バイオマーカー:血清フェリチン値に関しては、症例数が少なく結論をだせなかった。しかし、最近の欧米における家系内の検討でも、一定のデータが得られていないこと、遺伝子診断により確定ができることから、血清や脳脊髄液バイオマーカーの必要性が必ずしも高くない。
本研究班で発見された新規症例のiPS樹立が開始された。
結論
神経フェリチン症は極めて稀な疾患と考えられるが、本研究班によって、本症の存在と鑑別すべき疾患の存在がひろく啓発することができたこと、実際新規症例を確認することができた。また、本研究班により、本症を疑い診断支援をされる例もあったことなど、一定の貢献ができた。現在、鉄と神経変性に関しては、様々な疾患を通して注目されているところである。また、iPSに関して、樹立が開始されたことも、大きな進展である。

公開日・更新日

公開日
2017-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201324101B
報告書区分
総合
研究課題名
神経フェリチン症の実態調査と診断基準の構築に関する研究班
課題番号
H24-難治等(難)-一般-063
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高尾 昌樹(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) )
研究分担者(所属機関)
  • 百島 祐貴(慶應義塾大学医学部・射線診断科)
  • 山脇 健盛(広島市立広島市民病院・神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経フェリチン症は、フェリチン軽鎖の遺伝子変異により、変異フェリチンと正常フェリチンからなる封入体が、神経細胞やグリア細胞を中心に蓄積し、錐体外路徴候、錐体路徴候、認知障害など多彩な神経症候をを長期にわたり認める疾患である(Vidal et al 2004)。頭部MRIで両側基底核の変性所見(特に病期が進行すると嚢胞性変化を来す)が特徴的であると考えられている。しかし、現在、診断基準(指針)や本邦における実態は明らかではない。本研究班では、神経フェリチン症の調査、診断基準の確立を主に目指し、平成24年度から25年度までに2年間の期間で検討が行われた。
研究方法
24年度は、研究班で準備した診断基準(指針)案を用い、全国の主な神経内科、放射線科施設に対しアンケート調査と、主治医参加による診断支援を施行した。25年度は、診断支援を継続するとともに、24年度の調査票解析などももとに、診断基準の作成を行った。最終的に、24年度に調査を実施した施設に対し、診断基準(最終案)を送付することを思う的とした。本研究班で認知された神経フェリチン症例でiPS構築に前向きな患者様への説明と、共同研究を、文部科学省「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」班と可能な範囲で施行予定。(倫理面への配慮)各種ガイドライン、当施設倫理委員会等に拠る。
結果と考察
臨床、バイオマーカーと、遺伝子変異確定例は表現形の対応を検討するとともに、メールあるいは、直接電話などにより、診断支援の継続を施行した。班会議において主治医参加の依頼を行い診断支援を継続した。また、最終的な目的であった、診断基準(指針)を確定し、24年度調査を実施した施設へ診断基準を送付することができた。特に、診断基準の中では、臨床症候に加えて、頭部MRI画像の撮像方法と診断に重要な所見を記載した。平成26年の第55回日本神経学会総会、及び第55回日本神経病理学会総会シンポジウムで公開する。
 文部科学省「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」班(代表、慶應義塾大学 岡野栄之教授)と共同研究により、本症のような稀少疾患のiPS作成を共同で開発することを目標とした。本研究班で発見された、新規遺伝子変異症例の神経フェリチン症例でiPS構築に極めて協力的な患者様から血液が供与され、iPS樹立が開始された。
結論
本研究班により、本邦での認知度が低い神経フェリチン症を広く啓発するとともに、診断支援のシステムを用いて、症例の確定を行うとともに、診断に苦慮される症例を、主治医を含め検討できた。神経フェリチン症は、当初予想していた以上に、極めて稀な疾患と考えられるが、本研究班によって、本症の存在と、鑑別すべき疾患の存在をひろく啓発することができ、実際新規症例を確認することもできた(Nishida et al. 2014)。また、本症を疑い診断支援をされる例もあったことなど、一定の貢献もできた。
 研究班の目的である診断基準の作成など、現在、鉄と神経変性に関しては、様々な疾患を通して注目されているところである。また、iPSに関して、樹立が開始されたこともふまえ、将来的な治療法開発、鉄-フェリチン-神経変性病態解明や、基礎研究への橋渡し、適切な医療費助成といったことに貢献できるものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-04-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324101C

成果

専門的・学術的観点からの成果
研究班の目的である診断基準の作成を行った。現在、鉄と神経変性に関しては、様々な疾患を通して注目されているところである。また、iPSに関して樹立が開始されたことから、将来的な治療法開発、鉄-フェリチン-神経変性病態解明や、基礎研究への橋渡し、適切な医療費助成といったことに貢献できるものと考えられた。
臨床的観点からの成果
本邦での認知度が低い神経フェリチン症を広く啓発するとともに、診断支援のシステムを用いて、症例の確定を行い、診断に苦慮される症例を、主治医とともに検討できた。神経フェリチン症は、当初予想していた以上に、極めて稀な疾患と考えられるが、本研究班によって、本症の存在と鑑別すべき疾患の存在をひろく啓発することができ、実際新規症例を確認することもできた。また、本症を疑い診断支援をされる例もあったことなど、一定の貢献ができた。
ガイドライン等の開発
「神経フェリチン症の診断基準」を作成し、平成26年3月10日に関連施設へ送付。特に、診断基準の中では、臨床症候に加えて、頭部MRI画像の撮像方法と診断に重要な所見を記載した。
その他行政的観点からの成果
本研究班の診断基準により、神経フェリチン症だけでなく、関連する類縁疾患の診断に寄与できるものである。また、その結果、本症や類縁疾患が、他の疾患と診断されてしまう可能性を排除でき、適切な医療費助成などに貢献できる。
その他のインパクト
2013年10月21日の「上毛新聞」で、神経フェリチン症が取り上げられた。2012年日本神経学会総会,2014年日本神経病理学会総会学術研究会のシンポジウムで本疾患が取り上げられ我々による発表の機会を得た。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
上毛新聞,学会シンポジム2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishida K, Garringer HJ, Futamura N,et al
Atypical presentation of neuroferritinopathy associated with a novel ferritin light chain gene mutation.
J Neurol Sci  (2014)
http://dx.doi.org/10.1016/j.jns.2014.03.060
原著論文2
Funabe S, Takao M, Saito Y,et al.
Neuropathologic analysis of Lewy-related alpha-synucleinopathy in olfactory mucosa.
Neuropathology , 33 , 47-58  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201324101Z