文献情報
文献番号
201324092A
報告書区分
総括
研究課題名
リンパ管腫症の全国症例数把握及び診断・治療法の開発に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-難治等(難)-一般-054
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小関 道夫(岐阜大学 医学部附属病院 小児科)
研究分担者(所属機関)
- 黒田 達夫(慶應義塾大学 外科学(小児外科))
- 藤野 明浩(慶應義塾大学 外科学(小児外科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,276,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
リンパ管腫症は希少難治性疾患で、中枢神経系を除く骨、肝臓、肺などにリンパ管組織が異常増殖する原因不明の疾患である。主に小児期に罹患し、胸水により半数以上が窒息死し、予後不良である。1990年代の報告では世界で約200例程度とされていたが、国内からは症例報告程度で疫学的データもない。原因不明で診断困難例が多く、治療法も確立されていない。昨年に続き、これらの国内症例の調査を行い、本疾患のデータベースの作成と情報提供、診断、治療指針の作成、また基礎的研究を行うことが目標である。
研究方法
平成24年度に行った全国の小児科研修指導認定520施設からの一次調査および、また「日本におけるリンパ管腫患者の実態調査及び治療指針の作成班」にて小児外科専門施設を対象に行われた調査のデータベースの中でリンパ管腫症症例を登録した施設、国内から学会発表および文献で症例報告されている施設にも調査の依頼を行う。二次調査は、基礎情報、発症時の症状、経過中に出現した症状、診断に使用した画像検査、病理検査、治療、予後、改善度、公費の状況、必要性について調査する。
解析された患者情報を基に、確定に至った診断方法を分析し、重要な検査値、画像および病理組織所見を明らかにする。全国調査の結果を客観的評価した上で、重症度分類を作成し、重症度に合わせた治療指針を提唱する。
リンパ管腫症患者から得られた組織を培養し、細胞の発現する遺伝子プロファイルの解析や薬物添加後の生存解析などを行う。リンパ管腫との病理学的差異や遺伝子発現を解析し、疾患特異的なマーカーの検索や診断治療への応用を目指す。また次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析を行い、発症に相関すると考えられる候補遺伝子を解析する。
乳児血管腫に対するプロプラノロール療法および、リンパ管腫症、ゴーハム病に対するプロプラノロール、ペグインターフェロン療法の臨床研究を行う。
解析された患者情報を基に、確定に至った診断方法を分析し、重要な検査値、画像および病理組織所見を明らかにする。全国調査の結果を客観的評価した上で、重症度分類を作成し、重症度に合わせた治療指針を提唱する。
リンパ管腫症患者から得られた組織を培養し、細胞の発現する遺伝子プロファイルの解析や薬物添加後の生存解析などを行う。リンパ管腫との病理学的差異や遺伝子発現を解析し、疾患特異的なマーカーの検索や診断治療への応用を目指す。また次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析を行い、発症に相関すると考えられる候補遺伝子を解析する。
乳児血管腫に対するプロプラノロール療法および、リンパ管腫症、ゴーハム病に対するプロプラノロール、ペグインターフェロン療法の臨床研究を行う。
結果と考察
一次調査は420施設(80.7%)から回答を得た。平成26年2月末現在で、35施設、79例に二次調査を実施することができた。発症時年齢は0か月から64歳と全年齢にまたがっていたが、平均12.6歳、中央値が6歳で81.3%が小児期までに発症していた。骨病変(68%)、胸部(66.6%)、血液検査異常(61.3%)、腹部(48%)、皮膚(32%)であった。骨病変は骨溶解が96.3%、病的骨折が29%、側彎が18.1、脚長差が10.9%であった。溶骨部位は脊椎が最も多く、45%で四肢が40%、頭蓋骨が25%、骨盤、腸骨が21%、肋骨21%であった。胸部病変は66%に認め、そのうち乳び胸も含む胸水が82.6%、縦隔病変が34.6%、心嚢水が26.9%、心不全7.6%、心タンポナーデ3.8%であった。腹部病変は全36例で脾臓病変(脾腫、脾内腫瘤など)が69.4%、腹水44.0%、肝脾腫11.1%、消化管出血5.6%であった。全症例の生存率は53.8%で、死因は全例が胸部病変に関連していた。20歳以下の小児65例中、胸部病変を持っていたのは44例でそのうち11例(25%)が死亡していた。診療状況は主に入院が35例で、半々が7例と53.1%は入院加療を必要としていた。また治癒率は2.5%と異常に低く、診療が継続的に必要な症例は89.8%、深刻な状態もしくは致死的な症例は55.6%であった。重症例が多く、長期に渡り、診療が必要な症例が多いことがわかった。
リンパ管腫由来リンパ管内皮細胞株の確立により、正常リンパ管内皮細胞との遺伝子発現プロファイル比較が可能となり、15種類のリンパ管腫細胞株プロファイルと6種類の正常リンパ管内皮遺伝子プロファイルを比較する全90通りで共通した差異を認める遺伝子が列挙された。その中で特にリンパ管腫細胞に発現が強い転写因子を選択し、リンパ管腫の病態との関連の検討を開始した。同遺伝子のマイクロアレイ結果は定量的RT-PCRによりvalidationが行われ確認された。
乳児血管腫に対するプロプラノロール療法は30例について解析し、全例に明らかな有効性を認めた。またリンパ管腫症2例、ゴーハム病3例に対して、プロプラノロール単剤を2例、併用療法を3例に施行し、ある一定の効果を認めた。全例ともインターフェロン後に発熱や倦怠感などを認める以外は特に有害事象は認めていない。
リンパ管腫由来リンパ管内皮細胞株の確立により、正常リンパ管内皮細胞との遺伝子発現プロファイル比較が可能となり、15種類のリンパ管腫細胞株プロファイルと6種類の正常リンパ管内皮遺伝子プロファイルを比較する全90通りで共通した差異を認める遺伝子が列挙された。その中で特にリンパ管腫細胞に発現が強い転写因子を選択し、リンパ管腫の病態との関連の検討を開始した。同遺伝子のマイクロアレイ結果は定量的RT-PCRによりvalidationが行われ確認された。
乳児血管腫に対するプロプラノロール療法は30例について解析し、全例に明らかな有効性を認めた。またリンパ管腫症2例、ゴーハム病3例に対して、プロプラノロール単剤を2例、併用療法を3例に施行し、ある一定の効果を認めた。全例ともインターフェロン後に発熱や倦怠感などを認める以外は特に有害事象は認めていない。
結論
本研究によって、これまで明らかではなかった本疾患の疫学的データおよび臨床的な特徴が判明し、ホームページや学会で公開した。さらに診断基準、重症度分類を作成し、今後の一般診療に還元できるものと思われる。また基礎研究、新規治療薬の臨床研究によって、リンパ管腫症および関連疾患の病態の解明や有用な治療薬の開発につなげることが出来た。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
-