文献情報
文献番号
201324090A
報告書区分
総括
研究課題名
診断困難な(原因不明の)出血性後天性凝固異常症の総合的診療指針の作成
課題番号
H24-難治等(難)-一般-052
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
一瀬 白帝(山形大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 惣宇利 正善(山形大学 医学部)
- 尾崎 司(山形大学 医学部)
- 松下 正(名古屋大学 医学部)
- 浦野 哲盟(浜松医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
人口の高齢化と共に増加しつつある出血性後天性凝固異常症は、一般凝固検査でスクリーニングが容易なものと困難なものに分類され、前者は比較的容易に診療可能であるが、後者は臨床現場では原因不明の出血とされ易い。そこで、後者の実態を初めて調査して、特別精密検査により迅速に診断し、的確に治療するアルゴリズムを構築して、本疾患群の総合的診断基準と治療指針を作成することが本研究の目的である。
研究方法
平成25年度の本研究は、代表者1名、分担者4名、協力者27名の体制で実施した。調査活動を広報し、全国アンケート調査で症例の発掘/集積を実施して、基礎疾患の同定と、新たな検査法の開発を含めた分子病態学的な解析を行った。平成26年3月31日現在で通算121例とその家族についてコンサルテーションと種々の検査を行って診断、治療を実施した。なお、本研究の特別・精密検査は、山形大学医学部倫理委員会の承認と主治医が症例や家族から同意文書を得て実施した。
結果と考察
1)本疾患についての広報
全国アンケート調査の際に、2000件に対して本疾患に関するチラシを郵送によって配布したり、国内外の学会や研究会で本疾患に関する講演を行って、周知するように努力中である。後天性血友病13については、数編の症例報告を国際学術誌に発表、投稿しており、依頼されている総説にも記述して、更に広報に務める。
2)本疾患についての実態調査
平成26年3月末の時点で、32例の後天性凝固異常症疑いの症例を詳細に解析し、15名が後天性血友病XIII(13)、2名が後天性von Willbrand症候群であることが判明した。また、2000件に全国アンケート調査を依頼し、448件の回答があった。22件は原因不明の出血症状を呈した症例を経験した主治医からの回答で、その後追跡調査を実施しつつある。
3)新検査方法の実地試験
前年度開発した抗第XIII因子Aサブユニット自己抗体の迅速検出法を、実地に使用して有用性を確認しつつある。既に、15例の新しい後天性血友病XIII(13)を診断しており、今後もコンサルテーションがある度に本検査法を適用して、迅速診断と適正な治療法選択を可能にする。
4)検査の包括的アルゴリズムの作成
平成26年6月下旬からミルウォーキーで開催される国際血栓止血学会の科学及び標準化委員会において、後天性血友病XIII(13)の診断基準と日本語版出血評価票の作成と試用について講演する予定になっており、これ迄の研究成果をまとめて、国際的な医学・医療の進歩に貢献するよう務める。
5)「後天性第XIII因子欠乏症による出血傾向」に対する第XIII因子濃縮製剤の保険適応認可
前々年度に、本研究班の前身に当たる厚労科研研究班から、「後天性第XIII因子欠乏症による出血傾向」に対する第XIII因子濃縮製剤の適応外申請を提出していたところ、平成24年12月下旬に厚生労働省健康局疾病対策課からデータ提出の要請があったので、平成25年1月上旬に緊急アンケート結果と研究班の調査結果のまとめを送付した。
その後、平成25年3月下旬、厚労省にて「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が行われ、「後天性第XIII因子欠乏症による出血傾向」に対する第XIII因子濃縮製剤の適応取得については公知申請が妥当であるとの判断がなされた。更に、9月13日付けで、その正式な薬事承認(添付文書の改訂等)が実現された。
6)後天性von Willebrand症候群の検査方法と診断方法の開発
既に名古屋大学の研究分担者が、抗von Willebrand因子抗体の検出法及びそのIgGクラスの分析方法を開発しており、更に多くの後天性von Willebrand症候群疑いの症例に適用して、方法論を確立した。
7)グローバル抗線溶能検査の開発
浜松医科大学の研究分担者がこの課題に取り組んでおり、ローカルな症例を対象にして有用性を試験している。既に、原因不明の出血症状を呈する本疾患の症例に実地に適用され、国内第2例目の先天性plasminogen activator inhibitor-1欠損症が診断された。
全国アンケート調査の際に、2000件に対して本疾患に関するチラシを郵送によって配布したり、国内外の学会や研究会で本疾患に関する講演を行って、周知するように努力中である。後天性血友病13については、数編の症例報告を国際学術誌に発表、投稿しており、依頼されている総説にも記述して、更に広報に務める。
2)本疾患についての実態調査
平成26年3月末の時点で、32例の後天性凝固異常症疑いの症例を詳細に解析し、15名が後天性血友病XIII(13)、2名が後天性von Willbrand症候群であることが判明した。また、2000件に全国アンケート調査を依頼し、448件の回答があった。22件は原因不明の出血症状を呈した症例を経験した主治医からの回答で、その後追跡調査を実施しつつある。
3)新検査方法の実地試験
前年度開発した抗第XIII因子Aサブユニット自己抗体の迅速検出法を、実地に使用して有用性を確認しつつある。既に、15例の新しい後天性血友病XIII(13)を診断しており、今後もコンサルテーションがある度に本検査法を適用して、迅速診断と適正な治療法選択を可能にする。
4)検査の包括的アルゴリズムの作成
平成26年6月下旬からミルウォーキーで開催される国際血栓止血学会の科学及び標準化委員会において、後天性血友病XIII(13)の診断基準と日本語版出血評価票の作成と試用について講演する予定になっており、これ迄の研究成果をまとめて、国際的な医学・医療の進歩に貢献するよう務める。
5)「後天性第XIII因子欠乏症による出血傾向」に対する第XIII因子濃縮製剤の保険適応認可
前々年度に、本研究班の前身に当たる厚労科研研究班から、「後天性第XIII因子欠乏症による出血傾向」に対する第XIII因子濃縮製剤の適応外申請を提出していたところ、平成24年12月下旬に厚生労働省健康局疾病対策課からデータ提出の要請があったので、平成25年1月上旬に緊急アンケート結果と研究班の調査結果のまとめを送付した。
その後、平成25年3月下旬、厚労省にて「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が行われ、「後天性第XIII因子欠乏症による出血傾向」に対する第XIII因子濃縮製剤の適応取得については公知申請が妥当であるとの判断がなされた。更に、9月13日付けで、その正式な薬事承認(添付文書の改訂等)が実現された。
6)後天性von Willebrand症候群の検査方法と診断方法の開発
既に名古屋大学の研究分担者が、抗von Willebrand因子抗体の検出法及びそのIgGクラスの分析方法を開発しており、更に多くの後天性von Willebrand症候群疑いの症例に適用して、方法論を確立した。
7)グローバル抗線溶能検査の開発
浜松医科大学の研究分担者がこの課題に取り組んでおり、ローカルな症例を対象にして有用性を試験している。既に、原因不明の出血症状を呈する本疾患の症例に実地に適用され、国内第2例目の先天性plasminogen activator inhibitor-1欠損症が診断された。
結論
本年度の調査研究を実施して、新規の検査方法を開発し、検査・診断のアルゴリズムと診療ネットワーク/システムを構築することにより、世界一多い人数の後天性血友病XIII(13)症例を確定診断し、新たに後天性von Willbrand症候群症例の発掘を開始することができた。また、実態調査のデータを提供して特異的止血治療薬の保険適用を実現し、国民の医療水準の向上に貢献する基盤を作ることができた。今後、より大規模な研究プロジェクトの企画と実現により、本研究の成果を更に拡充、発展させたい。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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