RAS関連自己免疫性リンパ球増殖症候群様疾患(RALD)の実態調査および病態病因解析

文献情報

文献番号
201324087A
報告書区分
総括
研究課題名
RAS関連自己免疫性リンパ球増殖症候群様疾患(RALD)の実態調査および病態病因解析
課題番号
H24-難治等(難)-一般-049
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高木 正稔(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 水谷 修紀(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 金兼 弘和(富山大学附属病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
RAS関連自己免疫性リンパ増殖症候群様疾患(RALD)の臨床症状は自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)と近似し、症状、一般検査所見からは両者を区別することは難しい。一方、若年性骨髄単球性白血病(JMML)はRAS-MAPK経路の異常を基調とする疾患でRALD と同様にRAS変異に基づいて発症する悪性腫瘍である。JMMLの一部は自己免疫症状を伴いRALDに近い臨床症状を呈する症例も存在する。一般的にJMMLは予後不良の疾患で救命には造血幹細胞移植が必須とされている。しかし軽微な化学療法、分化誘導療法や経過観察のみで寛解した症例も報告があり、自己免疫症状を伴うJMMLとRALDの差異は明らかでない。本研究では希少疾患であるであるRALDや自己免疫症状を伴うJMML症例を集積することにより、疾患概念の確立を行い、行われた治療法を解析することにより、RALDに行える標準療法があるか検討を行った。またその病態を明らかにするための基礎的な研究を行った。
研究方法
全国からRALD疑い例の紹介を受け診断のための遺伝子検査の標準化を試みた。
希少疾患であり、一例一例の臨床情報を集積することにより、共通項の洗い出しおこなった。
RALDの表現系とALPSとは臨床症状からは区別することができない。ALPS-FAS以外のALPSからRALD類縁疾患がある可能性を考え遺伝子解析法を模索した。
RAS変異がどの血液細胞系列に認められ、そして影響を与え、自己免疫疾患の発症に影響を与えるか、検討した。
RASの変異の種類の差が表現系に影響を与えるか検討した。
RASによる細胞増殖シグナルに細胞がどのように反応するか、分子細胞生物学的な解析を行った。
結果と考察
自然完解するJMMLの一部に自己免疫症状を認め、RALDとオーバーラップする疾患があることが明らかとなった。
プレドニゾロンの自己免疫症状に対する有効性は臨床的に明らかであったが、高容量が必要であり、ミコフェノール酸モフェチルの有効性が示唆された。
今回典型的ALPSでありながら、既存の遺伝子変異が同定されず、ALPS-Uと考えられるがあり、全エクソン解析の手法が試みられた。この結果NRAS遺伝子の変異が認め得られRALDであることが明らかとなった。
結論
造血幹細胞移植なしで生存しているJMML症例は寛解後もRAS変異を抱えたままであり何らかの免疫異常を呈することが明らかとなった。症状的にALPS/RALDに非常に近い症例も存在し、RALDとJMMLの差が非常にあいまいであることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201324087B
報告書区分
総合
研究課題名
RAS関連自己免疫性リンパ球増殖症候群様疾患(RALD)の実態調査および病態病因解析
課題番号
H24-難治等(難)-一般-049
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高木 正稔(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 水谷 修紀(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 長澤 正之(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 石井 榮一(愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 金兼 弘和(富山大学医学部付属病院 小児科)
  • 滝田 順子(東京大学医学部付属病院)
  • 杉本 昌隆(国立長寿医療研究センター 老化細胞研究プロジェクトチーム)
  • 林 泰秀(群馬県立小児医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
RAS関連自己免疫性リンパ増殖症候群様疾患(RALD)の臨床症状は自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)と近似し、症状、一般検査所見からは両者を区別することは難しい。一方、若年性顆粒単球性白血病(JMML)はRAS-MAPK経路の異常を基調とする疾患でRALD と同様にRAS変異に基づいて発症する悪性腫瘍である。JMMLの一部は自己免疫症状を伴いRALDに近い臨床症状を呈する症例も存在する。一般的にJMMLは予後不良の疾患で救命には造血幹細胞移植が必須とされている。しかし軽微な化学療法、分化誘導療法や経過観察のみで寛解した症例も報告があり、自己免疫症状を伴うJMMLとRALDの差異は明らかでない。本研究では希少疾患であるであるRALDや自己免疫症状を伴うJMML症例を集積することにより、疾患概念の確立を行い、行われた治療法を解析することにより、RALDに行える標準療法があるか検討を行った。またその病態を明らかにするための基礎的な研究を行った。
研究方法
全国からRALD疑い例の紹介を受け診断のための遺伝子検査の標準化を試みた。
希少疾患であり、一例一例の臨床情報を集積することにより、共通項の洗い出しおこなった。
RALDの表現系とALPSとは臨床症状からは区別することができない。ALPS-FAS以外のALPSからRALD類縁疾患がある可能性を考え遺伝子解析法を模索した。
RAS変異がどの血液細胞系列に認められ、そして影響を与え、自己免疫疾患の発症に影響を与えるか、検討した。
RASの変異の種類の差が表現系に影響を与えるか検討した。
RASによる細胞増殖シグナルに細胞がどのように反応するか、分子細胞生物学的な解析を行った。
今回典型的ALPSでありながら、FAS, FASLG, CASP10変異が同定されない一例を経験し,責任遺伝子同定のため、全エクソン解析を行った。
結果と考察
6名の造血幹細胞移植なしで生存しているJMML患者が同定された。このうち4名で高ガンマグロブリン血症が認められ、全例で何らかの自己抗体が陽性であった。2例ではALPS/RALDと類似の臨床所見を示し、またこのうち1例はSLE様の症状を呈していた。JMMLは予後不良の血液腫瘍性疾患で、造血幹細胞移植が唯一の治療法とされる。しかしながら造血幹細胞移植なしで生存している症例も存在し、その多くがRAS変異を抱えたままであり、何らかの免疫異常を呈することが明らかとなった。症状的にALPS/RALDに非常に近い症例も存在し、RALDとJMMLの差が非常にあいまいであることが明らかとなった

RASの細胞膜への移行とprenylation化を阻害するbisphosphonateであるゾレドロン酸も一定の効果があることが明らかとなった。今後臨床試験を展開していくためのプロトコールの作成を行いIRB承認を得た。

ALPS-Uの一例の全エクソン解析による網羅的遺伝子解析の結果、患児はNRAS遺伝子の変異を持っていることが明らかとなった。
結論
RAS変異のあるJMMLのうち自然寛解を示す一群があることが明らかとなった。またこのうちの一部は自己免疫症状を呈していた。こういった症例は診断当初JMMLの診断基準を満たしてはいたが、よりRALDに近い病態と考えられた。RAS変異のあるJMMLに対し治療法の選択を考える上で造血幹細胞移植の選択は慎重にあるべきと考えられた。また従来のJMMLの診断基準をRALDの存在を含め再考する余地があると考えられた。

RALDの治療法としてステロイドを含めた免疫抑制剤が臨床症状の緩和に有用であることが明らかとなった。またミコフェノール酸モフェチルの有用性が臨床的に、またその薬理学的効果からも示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201324087C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来から提唱されている若年性骨髄単球性白血病だけでなく、RAS遺伝子変異によるALPS類縁疾患RALDが数名存在し、また一部の若年性骨髄単球性白血病患者は自然寛解し、のちに自己免疫症状を呈することが明らかとなった。また治療法開発に向けて臨床試験が策定され、本年度から開始となった。
臨床的観点からの成果
2009年米国で策定されたALPS診断基準、分類を整備することにより、診断の全国レベルでの均一化が行えると考えられる。
ガイドライン等の開発
2009年米国で策定されたALPS診断基準、分類を整備し、日本語で公開した。
その他行政的観点からの成果
免疫不全症の遺伝子診断が保険診療として行われるようになったが。その解析対象遺伝子としてALPSおよびALPS類縁疾患の責任遺伝子のリスト作成に貢献した。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takagi M, Shinoda K, Piao J et al
Autoimmune lymphoproliferative syndrome-like disease with somatic KRAS mutation.
Blood , 117 (10) , 2887-2890  (2011)
10.1182/blood-2010-08-301515.
原著論文2
Takagi M, Piao J, Lin L et al
Autoimmunity and persistent RAS-mutated clones long after the spontaneous regression of JMML
Leukemia , 27 (9) , 1926-1928  (2013)
10.1038/leu.2013.82.
原著論文3
Shiota M, Yang X, Kubokawa M, et al
Somatic mosaicism for a NRAS mutation associates with disparate clinical features in RAS-associated leukoproliferative disease: a report of two cases.
J Clin Immunol , 35 (5) , 454-458  (2015)
10.1007/s10875-015-0163-3.
原著論文4
Takagi M, Ogata et al.
Haploinsufficiency of TNFAIP3 (A20) by germline mutation is involved in autoimmune lymphoproliferative syndrome
J Allergy Clin Immunol , 139 (6) , 1914-1922  (2017)
10.1016/j.jaci.2016.09.038
原著論文5
Takagi M, HOshino A, et al.
Genetic heterogeneity of uncharacterized childhood autoimmune diseases with lymphoproliferation
Pediatr Blood Cancer , 65 (2)  (2018)
10.1002/pbc.26831

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2018-06-11

収支報告書

文献番号
201324087Z