文献情報
文献番号
201324082A
報告書区分
総括
研究課題名
消化管を主座とする好酸球性炎症症候群の診断治療法開発、疫学、病態解明に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-難治等(難)-一般-044
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
野村 伊知郎(国立成育医療研究センター 免疫アレルギー研究部および、生体防御系内科部アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
- 木下 芳一(島根大学医学部 内科学講座第二)
- 千葉 勉(京都大学医学研究科 内科学 消化器内科学講座)
- 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院 消化器・消化器病学)
- 山田 佳之(群馬県立小児医療センター、アレルギー感染免疫科 )
- 大塚 宜一(順天堂大医 小児科学講座)
- 藤原 武男(成育医療研究センター 成育社会医学研究部)
- 新井 勝大(国立成育医療研究センター 消化器科)
- 松本 健治(成育医療研究センター 免疫アレルギー研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
好酸球性消化管疾患(以下Eosinophilic Gastro-intestinal Disorder: EGIDとする)は、消化管の持続炎症性疾患であり、新生児-乳児における、食物蛋白誘発胃腸炎 (N-FPIES)、幼児から高年期(高齢者)まで罹患する、好酸球性食道炎 (EoE)、好酸球性胃腸炎 (EGE)の総称である。N-FPIESは急激に増加しつつあり、現在の発症率は0.21%である。EGIDは診断治療が困難であり、10%は重症となる。重症者では、腸閉塞、ショック、栄養障害から脳神経発達の後遺症を残すことがある。治療寛解不能の場合、N-FPIESはEGEに移行する。このため将来はEGID全体の増加が予想される。
日本のEGIDはphenotypeが欧米と大きく異なる。特にN-FPIESとEGEは日本特有である。これらの患者を多く擁する日本の医学研究者に本症解明の責任が課せられている。
本研究班では、1) 正確な疾患概念を確立する2) 診断治療指針を完成させ、一般公開する。3) 診断検査法、バイオマーカーを開発する。4) 6種食物除去と種々の薬物と組み合わせて、最適な治療法を開発する。5) 発症原因、発症リスクファクターの同定、遺伝的背景の探索を行う。6) 世界の症例のシステマテイックレビューにより、国別の実態を把握する。以上の6つのプロジェクトを行い、全体として患者を救う、優れたシステムを構築することを目的とする。
日本のEGIDはphenotypeが欧米と大きく異なる。特にN-FPIESとEGEは日本特有である。これらの患者を多く擁する日本の医学研究者に本症解明の責任が課せられている。
本研究班では、1) 正確な疾患概念を確立する2) 診断治療指針を完成させ、一般公開する。3) 診断検査法、バイオマーカーを開発する。4) 6種食物除去と種々の薬物と組み合わせて、最適な治療法を開発する。5) 発症原因、発症リスクファクターの同定、遺伝的背景の探索を行う。6) 世界の症例のシステマテイックレビューにより、国別の実態を把握する。以上の6つのプロジェクトを行い、全体として患者を救う、優れたシステムを構築することを目的とする。
研究方法
1)正確な疾患概念を確立するためにオンライン登録システムを作成、稼働させ、2000名の登録を目標とする。この臨床データを解析する。2) 診断治療指針開発について、N-FPIES, EoE, EGEそれぞれに作成し、一般公開する。3) 診断検査開発(すべての検体がオンラインシステムの詳細な臨床データと紐づけられている);血液を使用した、リンパ球刺激試験、30種類の血清ケモカイン測定、消化管組織マイクロアレイを行い、疾患特異的発現パターン同定する。便 EDN測定を整備する。4) 6種食物除去と種々の薬物と組み合わせて、最適な治療法を開発する。5) GWAS、オンライン情報によるリスクファクターの検出、6) 世界の症例報告600についてシステマテイックレビューを行う。以上の研究について、患者の人権、健康に最大の注意を払いながら遂行する。
結果と考察
1) オンライン登録システムに650名の登録が行われた。N-FPIESの初期疾患概念が構築され、4つのクラスターに分類されることが明らかとなった。また、EGE, EoEの初期疾患概念構築にも成功した。2) 診断治療指針開発について、N-FPIES, EoE, EGEそれぞれ作成し高い検索数を維持している。3) 診断検査開発;リンパ球刺激試験において、N-FPIESクラスター1~4の陽性率が明らかとなり、かつクラスターごとのサイトカイン産生パターンが異なることが発見された。今後は増殖の中心となったIL13,5産生細胞の同定をはじめとした、メカニズム解明を行い、責任T細胞サブセットに絞った高い次元の検査法へと発展させる。また30種類の血清ケモカインを測定し、N-FPIES、成人EGEの血清診断検査として有望な4分子の同定に成功、消化管組織マイクロアレイを行い、疾患特異的発現パターン同定にも成功しつつある。将来は診断マーカーについて保険収載を求め、全国で正確な診断評価が行えるようにしたい。4) N-FPIESの特に治療が困難であるクラスター3の多くを原因食物の同定を行って、寛解させることができた。年長者のEGE, EoEについても、6種食物除去と種々の薬物と組み合わせて、最適な治療法を開発しつつある。5) 発症原因、発症リスクファクターの同定に一部成功し、N-FPIESの妊娠中の切迫流産の頻度が高いこと、クラスター3において先天性疾患、手術症例が多いことが明らかとなった。また、GWASの検体収集を行った。6) 世界の症例のシステマテイックレビューを完成させた。
結論
2000名を目指した、詳細な臨床データと、それにリンクした免疫学的なデータが支えあって、高いレベルの事実が明らかになってきたと言える。世界の大規模な臨床研究を見ても、このリンクが行われているところは、信頼できるデータが次々と出るが、リンクのない研究は大規模であっても失敗に終わる傾向にある。本研究班は成功しつつある。
欧米の代表的な学術会議にシンポジストとして招聘されるとともに、欧米のFPIES診断治療指針作成グループにも編入され、国際的にも実力をもった研究グループとして認められつつある。
この研究を続けて、世界を代表する臨床研究グループへと発展させ、世界中に存在し、苦しんでいる患者を救う方策を行ってゆく。
欧米の代表的な学術会議にシンポジストとして招聘されるとともに、欧米のFPIES診断治療指針作成グループにも編入され、国際的にも実力をもった研究グループとして認められつつある。
この研究を続けて、世界を代表する臨床研究グループへと発展させ、世界中に存在し、苦しんでいる患者を救う方策を行ってゆく。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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