文献情報
文献番号
201324074A
報告書区分
総括
研究課題名
腸管希少難病群の疫学、病態、診断、治療の相同性と相違性から見た包括的研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-036
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
日比 紀文(北里大学 北里研究所病院)
研究分担者(所属機関)
- 金井 隆典(慶應義塾大学 医学部)
- 渡辺 守(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
- 中島 淳(横浜市立大学 医学部)
- 山本 博徳(自治医科大学 医学部)
- 松本 主之(九州大学 医学部)
- 松井 敏幸(福岡大学 筑紫病院)
- 平田 一郎(藤田保健衛生大学 医学部)
- 三浦 総一郎(防衛医科大学校 医学教育部)
- 清水 誠治(西日本旅客鉄道株式会社 大阪鉄道病院 診療部)
- 田中 正則(弘前市立病院 臨床検査科)
- 福土 審(東北大学 医学部)
- 藤本 一眞(佐賀大学 医学部)
- 正木 忠彦(杏林大学 医学部)
- 杉原 健一(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
- 岩男 泰(慶應義塾大学 医学部)
- 小林 清典(北里大学 東病院)
- 岡本 隆一(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
- 松橋 信行(NTT東日本関東病院 消化器内科)
- 佐藤 俊朗(慶應義塾大学 医学部)
- 武林 亨(慶應義塾大学 医学部)
- 松岡 克善(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在、原因不明の腸管障害として潰瘍性大腸炎ならびにクローン病は、代表的な疾患として、ともに診断基準、治療指針が確立されているが、その他の希少腸管難病は、診断基準、治療指針はもとより実態調査も進んでいないのが実情である。そこで今回の研究班では、腸管希少難病として、腸管ベーチェット病/単純性潰瘍、非特異性多発性小腸潰瘍症、Cronkhite-Canada症候群、セリアック病、蛋白漏出性胃腸症・吸収不良症候群、静脈硬化性大腸炎、腸管気腫症、顕微鏡的大腸炎、Henoch-Schonlein紫斑病を取り上げ、複数の疾患の病態の相同性と相違性に着眼し、さらにオールジャパンの研究組織としてのスケールメリットを活かし、実態調査・診断基準作成・治療指針策定を行うことを目的とした。
研究方法
(1)単純性潰瘍/腸管ベーチェット、(2)非特異性多発性小腸潰瘍症、(3)顕微鏡的大腸炎、(4)Cronkhite-Canada症候群、(5)セリアック病、(6)蛋白漏出性胃腸症、(7)静脈硬化症性大腸炎、(8)腸管気腫症、(9)Henoch-Schonlein紫斑病、(10)消化器顕微鏡的大腸炎の10疾患を対象とし、それぞれの疾患について、①全国規模の疫学調査、②診断基準の確立、③診療ガイドラインの作成、④基礎病態の解明を行う。以上の研究を通じて腸管希少難病の実態を明らかとし、診断基準・治療ガイドラインを作成する。
結果と考察
単純性潰瘍、非特異性多発性小腸潰瘍症は、本邦で提唱された疾患概念であり、また、Cronkhite-Canada症候群は、世界で報告されている患者の2/3は日本人であることから、これらの疾患概念の確立、診断基準・治療ガイドライン作成は日本でのみ可能であり、本研究班の成果は日本から世界に発信すべきものと考えられる。全国実態調査については全10疾患群に関して完遂することができた。単純性潰瘍/腸管ベーチェットの実態調査では全国49施設から338例の症例が集積された。患者数は全国で約3,000名と考えられており、これは、その約10%にあたる症例数である。その結果、腸管に潰瘍を発症しているもののベーチェット徴候を有さない症例が約40%いることが明らかとなった。非特異性多発性小腸潰瘍症については全国調査で75例の症例が集積し、診断基準案を作成した。顕微鏡的大腸炎については全国調査を行い、140例の症例を集め解析を行った。その結果、長期的な中心静脈栄養管理や外科手術を要した症例は共通して初発年齢が20-30代の女性であり、発症年齢・性別が難治化を予想する因子である可能性が示された。実態調査を通して、これまで原因不明とされてきた腸間膜静脈硬化症のうち、実に87%において漢方薬の服用が確認され、特に山梔子成分がその原因として極めて有力であることが明らかになった。診断基準については、腸管ベーチェット、非特異性多発性小腸潰瘍症、顕微鏡的大腸炎、Cronkhite-Canada症候群、腸管気腫症、蛋白漏出性胃腸症・吸収不良症候群、慢性特発性偽性腸閉塞の6疾患群について、素案の策定も含め著しい成果が得られた。治療指針については、腸管ベーチェットについてのコンセンサス・ステートメントの策定と改訂をはじめとして、腸顕微鏡的大腸炎、Cronkhite-Canada症候群、腸管気腫症について治療指針案が作成された。
本研究班のもっとも重要な成果のひとつとして非特異性多発性小腸潰瘍症の原因遺伝子の同定があげられる。実態調査から見えてきたその遺伝性をもとにエ、さらにその機能解析を進めており、原因不明の難治性疾患であった本疾患についての理解と治療に飛躍的な進歩が期待できる。
本研究班のもっとも重要な成果のひとつとして非特異性多発性小腸潰瘍症の原因遺伝子の同定があげられる。実態調査から見えてきたその遺伝性をもとにエ、さらにその機能解析を進めており、原因不明の難治性疾患であった本疾患についての理解と治療に飛躍的な進歩が期待できる。
結論
今まで希少性がゆえに着目されておらず、個々の医師や施設の経験に依存した医療が行われてきた疾患に対し、本研究課題を通じて、病態理解、患者の実態、診断や治療の方向性とアウトカムを把握することが飛躍的に進歩した。代表的疾患である腸管ベーチェット病や単純性潰瘍ではコンセンサス・ステートメントの樹立が可能であったが、それ以外の疾患でも、実態調査だけでなく、診断基準や治療指針の策定に向けての多大な進歩があった。さら特筆すべきことに、非特異性多発性小腸潰瘍症と腸間膜静脈硬化症についてはその病因の解明に迫る極めて重要な成果が得られた。
本邦で特に頻度の高い疾患もあることから、これらの病態理解、病因解明へ向けての進歩は世界を先駆けたものであるということができる。得られた成果を今後の患者QOL向上へフィードバックしていくために、さらなる研究の継続と発展が必要である。
本邦で特に頻度の高い疾患もあることから、これらの病態理解、病因解明へ向けての進歩は世界を先駆けたものであるということができる。得られた成果を今後の患者QOL向上へフィードバックしていくために、さらなる研究の継続と発展が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
-