患者支援団体等が主体的に難病研究支援を実施するための体制構築に向けた研究

文献情報

文献番号
201324059A
報告書区分
総括
研究課題名
患者支援団体等が主体的に難病研究支援を実施するための体制構築に向けた研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 建雄(一般社団法人日本難病・疾病団体協議会 理事会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,723,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の研究目的、患者もしくは患者支援団体等が自らの疾患や日常生活の情報を提供することなどで研究開発に主体的かつ継続的に研究支援を実施することのできる環境を整備することである。本研究は、時として分担者的役割、時として協力者的役割と形を変えながらも、各研究項目全てに患者と専門家が参画し、協働して検討をおこなった。一項目として、患者「だけ」、専門家「だけ」という研究はない。こういった協働体制構築こそが、本研究で目指していた形の一つである。研究班全体として、目標としていた「研究開発に主体的かつ継続的に関わることのできる環境整備」の基盤は構築できたと考える。
研究方法
本目的に沿って、研究期間中に大きく分けて以下に示す2つの研究を実施し、それぞれ成果を得た。
A 患者が主体となった患者レジストリの構築
希少・難治性疾患や長期慢性疾患に代表される「難病」は、長期に渡って生活に支障が生じる。長期的な影響を把握するためには、個々人の患者情報を長期間に渡って蓄積していくことが重要である。この蓄積したデータベースを患者レジストリ(患者情報登録)と呼ぶ。患者レジストリを構築するためには、病院で取得する臨床情報も重要だが、患者が日常生活から得る情報を欠かせない。後者の情報を取得するためには、患者の協力の下情報収集が必要である。このような患者が主体となって登録する患者レジストリを患者主導型患者レジストリと呼ぶ。患者を研究対象とするのではなく、研究パートナーとして共同研究をすることにより、より効果的・効率的に研究が推進できる。本研究では患者・研究者による関連法規や既存レジストリなどの検討・議論を踏まえ、患者レジストリ(名称:J-RARE.net(ジェイ・レア・ネット))を構築し、期間内に運用を開始した。
B 国内患者会運営への反映を目的とした国内外患者会実態調査、調査分析および体制整備のための具体的検討
国内外患者調査では、難病患者会全国調査、研究班―患者会間研究連携実態調査、海外協議会実態調査など、過去に実施例がない多くの新規調査を実施し、患者会が研究支援に継続的に関わることができる体制整備に向けた基礎的データを数多く収集することができた。国内患者会調査によると、患者会側も研究班側も研究協力には大きな期待を持っており、今後ますます進展するものと思われる。一方で研究協力に関して必要と思われるものは患者会、研究班双方ともにあまり相違がなかったが、研究協力内容や満足度については相違があり、その原因は研究そのものへの理解不足やコミュニケーション不足と考えられた。研究協力という言葉自体も患者会によってとらえ方が異なっている可能性があり、文言の整理も重要であることがわかった。なお、患者会および研究班の双方が研究協力を行っていると認め合った関係では互いの満足度は高値であり、研究協力を介して患者会と研究班の関係が深まり、双方とも満足できる関係が構築可能であることが示唆された。また、海外協議会(米国・欧州)との正式連携締結によって、日本国内協議会では初の日米欧三極連携が実現した。本連携締結により、今後に向けた複数の海外事例の収集や具体的連携といった国際的視点に立った研究遂行が開始された。
結果と考察
これらの知見を集約させたガイドラインの作成は、得られた知見をどのように(学術研究者だけでなく)患者・関係者に届けるか検討したうえで実現した。患者の視点に立ったガイドラインを作成・公開することで、患者会・関係者と研究班が更に促進されることが期待される。ガイドラインは患者会向けに作成しているが、これから研究協力・連携を検討するライフサイエンス分野の全ての関係者に理解できる内容となっており、学術研究者対象のそれとは別視点からのガイドラインとして社会的意義が大きい。
結論
本研究活動を通じて、患者会の活動そのものにも広がりができたと評価する。従来の患者会活動に含まれていなかった「研究支援・連携」や「創薬開発支援・協力」がどれだけの価値があるのか、またそのために患者側として必要な検討・実施事項はなにか、について、本研究は多くの示唆を与えた。この中には多くの課題も含まれるが、それらをどのように検討するか、患者側にとって非常に大きな、しかし前向きな挑戦となった。
 今後はここから得られた知見をさらに深め、希少・難治性疾患(難病)患者にとって有益な各種基板を構築すること、そしてそれを協働者とともに患者「主体」かつ「継続的」に実施していくことが、我々のさらなる目標である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201324059B
報告書区分
総合
研究課題名
患者支援団体等が主体的に難病研究支援を実施するための体制構築に向けた研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 建雄(一般社団法人日本難病・疾病団体協議会 理事会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の研究目的、患者もしくは患者支援団体等が自らの疾患や日常生活の情報を提供することなどで研究開発に主体的かつ継続的に研究支援を実施することのできる環境を整備することである。本研究は、時として分担者的役割、時として協力者的役割と形を変えながらも、各研究項目全てに患者と専門家が参画し、協働して検討をおこなった。一項目として、患者「だけ」、専門家「だけ」という研究はない。こういった協働体制構築こそが、本研究で目指していた形の一つである。研究班全体として、目標としていた「研究開発に主体的かつ継続的に関わることのできる環境整備」の基盤は構築できたと考える。
研究方法
本目的に沿って、研究期間中に大きく分けて以下に示す2つの研究を実施し、それぞれ成果を得た。
A 患者が主体となった患者レジストリの構築
希少・難治性疾患や長期慢性疾患に代表される「難病」は、長期に渡って生活に支障が生じる。長期的な影響を把握するためには、個々人の患者情報を長期間に渡って蓄積していくことが重要である。この蓄積したデータベースを患者レジストリ(患者情報登録)と呼ぶ。患者レジストリを構築するためには、病院で取得する臨床情報も重要だが、患者が日常生活から得る情報を欠かせない。後者の情報を取得するためには、患者の協力の下情報収集が必要である。このような患者が主体となって登録する患者レジストリを患者主導型患者レジストリと呼ぶ。患者を研究対象とするのではなく、研究パートナーとして共同研究をすることにより、より効果的・効率的に研究が推進できる。本研究では患者・研究者による関連法規や既存レジストリなどの検討・議論を踏まえ、患者レジストリ(名称:J-RARE.net(ジェイ・レア・ネット))を構築し、期間内に運用を開始した。
B 国内患者会運営への反映を目的とした国内外患者会実態調査、調査分析および体制整備のための具体的検討
国内外患者調査では、難病患者会全国調査、研究班―患者会間研究連携実態調査、海外協議会実態調査など、過去に実施例がない多くの新規調査を実施し、患者会が研究支援に継続的に関わることができる体制整備に向けた基礎的データを数多く収集することができた。国内患者会調査によると、患者会側も研究班側も研究協力には大きな期待を持っており、今後ますます進展するものと思われる。一方で研究協力に関して必要と思われるものは患者会、研究班双方ともにあまり相違がなかったが、研究協力内容や満足度については相違があり、その原因は研究そのものへの理解不足やコミュニケーション不足と考えられた。研究協力という言葉自体も患者会によってとらえ方が異なっている可能性があり、文言の整理も重要であることがわかった。なお、患者会および研究班の双方が研究協力を行っていると認め合った関係では互いの満足度は高値であり、研究協力を介して患者会と研究班の関係が深まり、双方とも満足できる関係が構築可能であることが示唆された。また、海外協議会(米国・欧州)との正式連携締結によって、日本国内協議会では初の日米欧三極連携が実現した。本連携締結により、今後に向けた複数の海外事例の収集や具体的連携といった国際的視点に立った研究遂行が開始された。
結果と考察
これらの知見を集約させたガイドラインの作成は、得られた知見をどのように(学術研究者だけでなく)患者・関係者に届けるか検討したうえで実現した。患者の視点に立ったガイドラインを作成・公開することで、患者会・関係者と研究班が更に促進されることが期待される。ガイドラインは患者会向けに作成しているが、これから研究協力・連携を検討するライフサイエンス分野の全ての関係者に理解できる内容となっており、学術研究者対象のそれとは別視点からのガイドラインとして社会的意義が大きい。
結論
本研究活動を通じて、患者会の活動そのものにも広がりができたと評価する。従来の患者会活動に含まれていなかった「研究支援・連携」や「創薬開発支援・協力」がどれだけの価値があるのか、またそのために患者側として必要な検討・実施事項はなにか、について、本研究は多くの示唆を与えた。この中には多くの課題も含まれるが、それらをどのように検討するか、患者側にとって非常に大きな、しかし前向きな挑戦となった。
 今後はここから得られた知見をさらに深め、希少・難治性疾患(難病)患者にとって有益な各種基板を構築すること、そしてそれを協働者とともに患者「主体」かつ「継続的」に実施していくことが、我々のさらなる目標である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201324059C

収支報告書

文献番号
201324059Z