文献情報
文献番号
201324057A
報告書区分
総括
研究課題名
疾病中心から患者中心の希少難治性疾患研究を可能とする患者支援団体と専門家集団とのネットワーク構築
課題番号
H24-難治等(難)-一般-019
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
福嶋 義光(信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 松原洋一(国立成育医療研究センター)
- 野村文夫(千葉大学大学院医学研究院)
- 斎藤加代子(東京女子医科大学・遺伝子医療センター)
- 高田史男(北里大学大学院医療系研究科)
- 小杉眞司(京都大学医学研究科)
- 玉置 知子 (橋本 知子)(兵庫医科大学)
- 櫻井晃洋(札幌医科大学医学部)
- 関島良樹(信州大学医学部)
- 涌井敬子(信州大学医学部)
- 加藤光広(山形大学医学部)
- 小泉二郎(NPO法人希少難病支援事務局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
希少難治性疾患の種類は,5000~7000存在し,少なくとも70%程度は遺伝子の変化によるものと考えられている.希少難治性疾患対策として,個々の疾患ごとに研究を推進することは極めて重要であるが,現在,難治性疾患克服研究事業に採択されている疾患は,300程度であり,その他の疾患の研究は重点的には進められていないのが現状である.希少難治性疾患研究をさらに推進させるためには,従来の研究事業では採択されていない疾患や未分類の疾患を含め網羅的に希少難病患者の臨床情報を収集し,臨床的診断を行い,既知の疾患ではないことを従来の遺伝学的検査により否定した上で,次世代遺伝子解析装置による解析・研究に移行させることが有効であると考えられる.本研究の目的は,希少難病患者支援事務局(SORD),遺伝子医療(遺伝カウンセリング)部門,遺伝学的検査部門,拠点研究班,およびその他の研究班など,希少難治性疾患研究の推進に必要な部門間の有機的連携ネットワークシステムを構築し,すべての領域にわたる難治性疾患の研究を推進させるための基盤を構築することである.
研究方法
希少難病患者・家族間のコミュニティー形成,および希少難病の研究推進を目的に活動しているSORDにおいて,既存の患者情報登録システムを,研究支援の側面をもたせた「研究アンケート」機能を新たに加え,さらに活用しやすいシステムである「研究・災害手帳」を構築し,研究協力の意思のある患者自身に,登録していただく.登録された患者のうち,生殖細胞系列遺伝子変異によると考えられる遺伝性疾患,および 原因不明の多発奇形・精神遅滞(MCA/MR)を対象に,専門家による遠隔検討会議を開催し,臨床診断支援を行う.臨床診断支援グループは,多領域にわたる希少難治性疾患の診療・研究を行っている医師(研究分担者,研究協力者等)により構成され,SORDから提供される基本情報をもとに,遠隔会議システムにより,原則として月に1回1時間程度,会合の機会をもつ.SORDから1回につき20例程度の新しい症例が提示され,一例ごとに研究に結びつける前提として臨床診断,鑑別診断のために必要な検査項目,不足する情報等について検討する.必要な場合には,SORDを介し,患者本人あるいは,患者の主治医から詳細な情報を得て,確定診断のための方向性を定める.最終的に既知の遺伝性疾患が疑われ,遺伝学的検査の実施が必要となった場合には,SORDとの連携を基礎に患者・主治医に生体試料採取を依頼し,遺伝学的検査部門に解析を依頼する.遺伝カウンセリングが必要な場合は,全国遺伝子医療部門連絡会議を通じ実施施設を紹介する. 種々の検討の結果,既知の遺伝性疾患ではなく,次世代遺伝子解析装置による解析・研究を行う意義があると考えられる場合には,拠点研究班に解析を依頼する.
結果と考察
「研究・災害手帳」には,平成24年12月の運用開始から,平成26年3月現在まで,123名の登録があった.そのうち,67例について,遠隔会議システムを用いて,専門医グループによる検討会を定期的(原則として月1回1時間)に実施した.全国遺伝子医療部門連絡会議において,本ネットワークを紹介し,必要な場合には,希少難治性疾患患者・家族に対する遺伝カウンセリングの実施を依頼した.今回構築したネットワークによる具体的な成果としては,大頭症を伴う多小脳回3家系中2家系で新しい遺伝子変異を同定したこと,および 責任遺伝子未解明の同一の骨系統疾患3例について,拠点研究班の了解が得られ,SORDおよび患者主治医を介して,患者・家族からのインフォームドコンセントの取得,および検体採取が近日中に行われることになっていることなどがある.患者数が極めて少ない疾患においても,拠点研究班と連携することにより,疾病の解明を可能とする研究に結びつけることができたことは学術的にも意義がある.平成25年度以降,遠隔会議システムを介して臨床診断支援がより円滑に行われるようになり,臨床診断支援のペースを高めることが出来た.専門医グループによる検討を原則月1回1時間行い,研究アンケートに応じた情報提供のもと,遺伝カウンセリングに繋がったもの,他の研究班へつながったものなど,SORD,遺伝子医療(遺伝カウンセリング)部門,遺伝学的検査部門,拠点研究班,およびその他の研究班など,希少難治性疾患研究の推進に必要な部門間の有機的連携ネットワークシステムを構築することができた.
結論
希少難病患者支援団体,臨床診断支援グループ,遺伝子医療部門,遺伝学的検査部門,拠点研究部門,等の連携を図るネットワークシステムがほぼ構築され,運用を開始した.このネットワークの推進により,未診断例や未採択疾患を含め全ての希少難治性疾患の研究が進むことが期待され,継続的支援が望まれる.
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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