リンパ脈管筋腫症に対するシロリムスの安全性確立のための医師主導治験

文献情報

文献番号
201324048A
報告書区分
総括
研究課題名
リンパ脈管筋腫症に対するシロリムスの安全性確立のための医師主導治験
課題番号
H24-難治等(難)-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中田 光(新潟大学 医歯学総合病院)
研究分担者(所属機関)
  • 三嶋 理晃(京都大学 大学院)
  • 赤澤 宏平(新潟大学 医歯学総合病院)
  • 井上 義一(国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター)
  • 瀬山 邦明(順天堂大学 医学部)
  • 田澤 立之(新潟大学 医歯学総合病院)
  • 三上 礼子(東海大学 医学部 )
  • 高田 俊範(新潟大学 医歯学総合病院)
  • 中山 秀章(東京医科大学病院 )
  • 西村 正治(北海道大学 大学院)
  • 海老名 雅仁(東北薬科大学病院)
  • 久保 惠嗣(信州大学 医学部)
  • 服部 登(広島大学 大学院)
  • 渡辺 憲太朗(福岡大学 医学部)
  • 玉田 勉(東北大学病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
169,939,000円
研究者交替、所属機関変更
平成24年度の東北大学の分担研究者であった海老名雅仁(教授)が、平成25年度より東北薬科大学病院へ異動となった為、東北地区患者の治験統括・責任医師の引継ぎとして東北大学の研究協力者であった玉田勉(講師)が平成25年度の分担研究者となった。

研究報告書(概要版)

研究目的
リンパ脈管筋腫症(LAM)は、LAM細胞とよばれる低悪性度の腫瘍細胞が肺や腎臓に転移し、増殖する若年女性の難病である。LAM細胞は肺に転移すると、蛋白分解酵素を放出するために、正常な肺胞構造を破壊し、嚢胞を形成するため、呼吸不全にいたる。調節遺伝子mTORの阻害剤シロリムスがLAM細胞の増殖を抑制すると考えられ、2006年から2010年に日米加3ヵ国が参加した国際共同治験(MILES試験)において、有効性が証明された。しかし、本試験は我が国では臨床研究として行われたこと、実薬被験者が13名しかいなかったことから、LAMの治療薬として実用化するためには、安全性を主要評価項目とする医師主導治験を実施する必要があった。本治験は2年間投与の安全性を調査し、MILES試験と同様の投薬方法により有効性を確認することを目的とする医師主導治験を実施する。
研究方法
本治験は、患者、ファイザー社、ノーベルファーマ社、厚生労働省難治性疾患克服研究事業の支援を得て実施される医師主導治験である。新潟大学医歯学総合病院に治験調整事務局をおき、全国9施設で統一プロトコールに基づいて行われる。以下に組織の概要を示す。
治験調整委員会:プロトコールの立案、倫理申請、規制当局、製薬企業との連絡交渉を行う。 
調整医師:中田 光、井上義一、瀬山邦明、田澤立之、高田俊範、GCPアドバイザー:三上礼子
情報センター:新潟大学医歯学総合病院医療情報部 EDC作成、管理、データ解析赤澤宏平
治験調整事務局:新潟大学医歯学総合病院生命科学医療センターに置く。
治験実施施設:北海道大学病院、東北大学病院、順天堂大学病院、信州大学病院、京都大学病院、国立病院機構近畿中央胸部疾患センター、新潟大学医歯学総合病院、広島大学病院、福岡大学病院
受託臨床試験機関CRO:綜合臨床メディフィ,治験薬提供:ファイザー社  
治験の概要:登録期間:平成24年9月から12月 
治験期間:平成24年9月から平成27年4月,治験デザイン:第ⅠⅠ相オープン試験
主要評価項目:リンパ脈管筋腫症患者におけるシロリムスの長期投与による有害事象の頻度、副次的評価項目:1.肺一秒量 2.努力生肺活量 3.QOLアンケート調査 4.血清VEGF-D、選択基準:a. 18歳以上の女性 b.インフォームド・コンセントの文書による同意が得られている患者c.胸部HRCTでLAMに一致するのう胞性変化を認め、次の1から4のいずれかを認める。1.生検によってLAMが確認されたこと、2.乳び液中のLAM細胞クラスターの証明により細胞診診断されたこと、3. 血清VEGF-D値≧800pg/mLであること、4.LAMに特徴的な臨床所見を認めること(1.結節性硬化症の診断が得られている;2.腎血管筋脂肪腫の合併;3.乳び胸水や乳び腹水の合併;後腹膜リンパ節や骨盤腔リンパ節の腫大)
結果と考察
治験の経過:2012年6月に治験届をPMDAに提出、30日調査を経て、同9月から登録、投薬開始され、同年12月末までに63例を組み入れた。投薬12ヶ月の調査では、978件の有害事象が報告され、うち25件の重篤有害事象が発生した。MILES試験では、実薬46例で959件の有害事象、23例の重篤有害事象が12ヶ月で認められたことから、安全性についてMILES試験と同等であった。ただし、3件はMILES試験では報告がなかったシロリムス肺臓炎であった。肺予測一秒量の変化では、ベースラインの予測一秒量が70%未満の群では、51.4%から57.1%まで改善したが、70%以上の群では、89.9から90.7%とほぼ不変であった。2013年10月に6ヶ月総括報告と薬事承認申請をノーベルファーマ社がPMDAに提出した。2014年2月にPMDAによるGCP信頼性調査が新潟大学と近畿中央胸部疾患センターに対して実施され、同4月に適合という通知を受けた。同年6月に薬事承認の見込みである。治験はその後も続き、全患者が2年間の服薬を終える2015年1月をもって終了する。2015年3月末までに報告書をまとめ、厚生労働省に提出し、国際学会誌に投稿する。

結論
リンパ脈管筋腫症に対するシロリムス療法の12ヶ月投与の安全性を確認した。ただし、MILES試験で報告のなかったシロリムス肺臓炎が3件みとめられた。また、有効性については、肺一秒量の改善は予測一秒量が70%未満の中等重症例にみとめられたが、軽症例では不変であった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201324048Z