結節性硬化症の皮膚病変に対する有効で安全性の高い治療薬の開発と実用化

文献情報

文献番号
201324046A
報告書区分
総括
研究課題名
結節性硬化症の皮膚病変に対する有効で安全性の高い治療薬の開発と実用化
課題番号
H24-難治等(難)-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
金田 眞理(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 片山 一朗(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
  • 玉井 克人(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
  • 濱崎 俊光(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
  • 梅垣 昌士(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
  • 中村 歩(大阪大学医学部附属病院 薬剤部)
  • 齋藤 充弘(大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
126,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、薬事承認をめざした医師主導治験を行ない、有効な治療薬のない稀少難治性疾患結節性硬化症(TSC)の皮膚病変に対するラパマイシン外用薬の実用化を目指すことにある。
TSCはmTORの活性化の結果、種々の神経症状と全身の腫瘍を呈する、頻度1/6,000の遺伝性疾患で、未成年者の割合も高い。TSCの顔面血管線維腫等の皮膚腫瘍は、出血や感染、痛み、機能障害を起こし、整容的には社会生活のQOLを低下させる。現時点でのTSCの治療法は外科的な対症療法のみで、局所麻酔での治療が不可能な重度の精神発達遅滞を伴う患者や乳幼児の患者には有効な治療法が無い。ラパマイシン等のmTOR阻害剤の全身投与により、皮膚を含む全身の腫瘍が抑制されるが、副作用の観点から、幼小児や重度のTSC患者には使用し難い。そこで安全性の高い本症皮膚病変に対する治療薬として、mTOR阻害剤の外用治療薬の開発が急務である。
研究方法
TSCの皮膚病に対するラパマイシン外用療法の症例報告はあるが、外用薬の経皮吸収や血中移行などの基礎データを示した報告はなく、有効性・安全性の検証にも至っていない。我々は、吸収性、安定性のよいラパマイシン外用薬を開発し、臨床試験(パイロット試験)でTSC 患者皮膚病変に使用し、その有効性と安全性を確認した。そこで我々は、患者がいつでもどこでも使用できる様にするために、薬事承認をめざした医師主導治験を行なった。方法は、1)ラパマイシン原薬(原薬GMP適合)よりラパマイシン外用薬(GMP)を製造し、2)安定性も検証し、3)GLPレベルの前臨床の動物試験を施行した。さらに、4)稀少難治性疾患で患者数が少ないこと、小児の割合が高いこと、臨床試験で血中への薬剤の移行が認められなかったこと、小児において特に有効で有害事象がなかったことを踏まえて、小児を含む第ⅠⅡ相の治験として治験実施計画書を作成した。4)ラパマイシン内服薬は、国内未承認だが海外では免疫抑制剤として承認済みであり、外用薬の実用化に必要な内服薬の非臨床・臨床データはファイザーより提供をうけ、前臨床の動物試験の結果とあわせて、治験薬概要書を作成した。5)これらの結果をもってPMDA対面助言、IRBの承認、治験届提出をおこない、6)医師主導治験(第ⅠⅡ相試験)を開始した。7)今後、26年度前半に治験を終了し、27年2月中には治験総括報告書の作成を終了し、研究協力企業に本シーズを移行し、第Ⅲ相以降の企業治験に向けての準備を行う。
結果と考察
我々は、ラパマイシンの原薬GMP適合を安定入手し、GMPレベルの外用薬の製造、治験薬GMPレベルの安定性の検証、GLPレベルの前臨床の試験を終え、治験薬概要書、小児を含む第ⅠⅡ相試験としての治験実施計画書も作成し、2013年7月30日に対面所減を終え、9月24日にIRBの承認を得、10月15日に治験届をPMDAに提出し、12月10日に本治験を開始し、全治験患者のエントリーを終えた。さらに11月22日に研究協力企と契約を締結し、特許もライセンスアウトし、技術移行も行っている。
結論
効果判定はまだであるが、現時点では副作用もなく、治験は順調に進んでいる。今後2014年前半に本治験を終了し、治験総括報告書を作成する。その後研究協力企業に移行し、稀少難治性疾患薬の申請、第Ⅲ相試験の実施と薬事申請の予定である。
本外用薬が承認され使用できれば、治療法が無かった重症患者の治療が可能となる。一方社会生活が可能な軽症患者にとっては、QOLが改善する。さらに痛みも時間的制約も少ない外用薬治療は、医療費の軽減にもつながる。また、患者数が少なく企業による治療薬の開発が望めない、稀少難治性疾患に新しい治療薬提供の道を開くことになり、医学的、社会的意義は大きい。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201324046Z