肝細胞増殖因子による筋萎縮性側索硬化症の新規治療法開発

文献情報

文献番号
201324040A
報告書区分
総括
研究課題名
肝細胞増殖因子による筋萎縮性側索硬化症の新規治療法開発
課題番号
H24-難治等(難)-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅田 隆太(京都大学医学部附属病院・臨床研究総合センター開発企画部)
  • 安達 喜一(クリングルファーマ株式会社・事業開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
247,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経難病の象徴的疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対して、わが国発の肝細胞増殖因子(HGF)を用いた治療法開発を推進する。本研究代表者らは、まずALS病変が生じる中枢神経系に薬物を効率よく送達できる髄腔内投与が可能なALSモデルラットを世界に先駆けて完成した。ついでALSラットにHGF蛋白を髄腔内持続投与した結果、明瞭な治療効果を得た。このHGF髄腔内投与によるALS治療法開発を念頭に、サルを用いて臨床用量の設定と安全性試験を実施、用いる医療器具と薬物動態の検査施設を選定、GMP基準の治験薬を製造、そして治験プロトコルを作成し前臨床試験を終了した。その成果をもって現在、安全性と薬物動態を検証する第I相試験(治験)を実施中、終了間近である。本研究は以上の研究成果を第II相試験に着実に進展させることを目的とし、研究期間内に第II相試験を開始することを目標とする。
研究方法
本研究では、運動ニューロン保護因子HGFによるALS治療法開発における第II相試験(治験)開始に必須の、非臨床試験、原薬・治験薬製造、原薬・治験薬関連試験、そしてプロトコル開発等を行う。(1) 非臨床試験:第II相試験でHGF蛋白質を長期間髄腔内投与することから、サル慢性毒性試験によって長期投与の安全性を確認する。本年度は予備試験による条件検討の後にGLP準拠の本試験を開始する。また、生殖能や次世代の発生に関する安全性を評価するための生殖毒性試験を前年度から継続実施する。胚胎児試験の予備試験を終了し、本試験を開始する。さらに、ALS唯一の既存薬リルゾールとHGFとの薬物相互作用試験を終了する。(2) 原薬・治験薬製造:原薬をGMP基準で製造する。(3) 原薬・治験薬関連試験:品質保証に要する規格・分析試験として宿主由来蛋白試験を前年度から継続し、HGF蛋白質の糖鎖構造解析を行う。 また、治験薬の予備安定性試験も継続する。(4) プロトコル開発等:第II相試験のプロトコル開発、併せてモニタリング・監査・データマネジメントの整備を継続する。
結果と考察
(1) 非臨床試験:カニクイザルを用いた慢性毒性試験は予備試験を終了、至適条件が得られたため、GLP準拠の本試験を開始した。ラットとウサギを用いた胚胎児試験も予備試験を終了したため、本試験を開始した。このうち、ウサギの試験を終了し、明らかなHGF毒性を認めなかった。第II相試験においてALS既存薬リルゾールとの併用が想定されるため薬物相互作用試験を行った結果、HGFとリルゾールの相互作用はないことが明らかとなった。(2) 原薬・治験薬製造:原薬のGMP製造を終了した。(3) 原薬・治験薬関連試験:宿主由来蛋白試験を行い、遺伝子増幅およびクローニングまで終了した。また、HGF蛋白質の糖鎖構造解析を終了した。さらに、治験薬の予備安定試験では36か月までの安定性を確認した。-70℃保存品質試験も追加実施した。(4) プロトコル開発等:現在終了間近の第I相試験データを集積している中で、第II相試験のプロトコル案を作成した。第II相試験で採用する用法用量をほぼ確立し、主要評価項目、副次評価項目、選択基準と除外基準を策定した。現案における目標症例数(サンプルサイズ)を検討中である。また、前年度に引き続き、第II相試験を専任で担当できる人材育成を行った。なお、第II相試験で一定の効果が得られ、かつ安全性が示されればオーファン医薬品として承認申請を前倒しできる可能性がある。このため、第I相試験後に医薬品医療機器総合機構と相談予定である。
結論
研究計画に則って、ALSに対するHGF臨床応用の第II相試験(治験)開始に必要な本年度の試験等を概ね終了できた。ここまでの達成状況から、上記の研究目的は十分達成可能と考えられる。平成26年度は引き続き各種試験を遂行し、実施中の第I相試験データを総括してプロトコル完成に至り、第II相試験の開始体制を整える。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201324040Z