文献情報
文献番号
201324033A
報告書区分
総括
研究課題名
混合性結合組織病の病態解明、早期診断と治療法の確立に関する研究
課題番号
H23-難治-一般-030
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 俊治(藤田保健衛生大学 医学部 リュウマチ・感染症内科)
研究分担者(所属機関)
- 岡本 尚(名古屋市立大学大学院医学研究科・内科学・分子生物学・免疫学)
- 川口 鎮司(東京女子医科大学リウマチ科)
- 川畑 仁人(東京大学医学部付属病院アレルギー・リウマチ内科・膠原病内科学)
- 桑名 正隆(慶応義塾大学医学部内科・膠原病内科学)
- 田中 住明(北里大学医学部膠原病感染内科学・膠原病内科)
- 中西 宣文(国立循環器病研究センター・心臓血管内科部門・肺循環科・肺循環)
- 深谷 修作(藤田保健衛生大学医学部 リウマチ・感染症内科)
- 藤井 隆夫(京都大学医学部附属リウマチセンター)
- 松下 雅和(順天堂大学医学部付属病院順天堂医院・膠原病・リウマチ内科・膠原病内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,131,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
混合性結合組織病(MCTD)は、複数の膠原病の要素を持ち抗U1-RNP抗体陽性という特徴を持つ予後良好な疾患として提唱された。しかし一般には非常に稀な肺高血圧症(PH)が最大の死因になるなど、難治性病態の存在も明らかとなった。残された課題としては、抗U1-RNP抗体自身の病原性の解明、難治性病態の中で特に肺動脈性肺高血圧症(PAH)の病態解明と診断・治療法の確立があげられる。これらの解明を目的とする。
研究方法
ⅠMCTDの疾患としての病態の解明と新規治療薬開発
MCTDにおける新規治療薬としてのIKKαの阻害薬の検討をモデルマウスを用いて、発症リスク要因の解明を質問紙法で、抗U1RNP抗体の産生機序の検討をモデルマウスを用いて、そして疾患関連遺伝子と抗細胞表面抗体の検索を生体試料バンクを用いて行った。
Ⅱ 肺高血圧症やその他の重要臓器病変
単球の役割の解明をモデルマウスを用いて、一酸化窒素合成酵素2(NOS2)の遺伝子多型と疾患関連遺伝子検索を生体試料バンクを用いて行った。
膠原病性PAHにおける肺静脈病変の検討を膠原病性PAHの剖検肺を用いて、イソフラボノイドGenisteinの効果に関する研究を慢性低酸素曝露肺高血圧ラットを用いて行った。
レイノー現象に伴う指尖血管内皮機能評価法の確立、MCTD-PAH治療における免疫抑制療法の実態と専門医の意識調査を行い、膠原病に合併する中枢神経症状の病態に関する検討を患者の血清と髄液を用いて行った。
MCTDにおける新規治療薬としてのIKKαの阻害薬の検討をモデルマウスを用いて、発症リスク要因の解明を質問紙法で、抗U1RNP抗体の産生機序の検討をモデルマウスを用いて、そして疾患関連遺伝子と抗細胞表面抗体の検索を生体試料バンクを用いて行った。
Ⅱ 肺高血圧症やその他の重要臓器病変
単球の役割の解明をモデルマウスを用いて、一酸化窒素合成酵素2(NOS2)の遺伝子多型と疾患関連遺伝子検索を生体試料バンクを用いて行った。
膠原病性PAHにおける肺静脈病変の検討を膠原病性PAHの剖検肺を用いて、イソフラボノイドGenisteinの効果に関する研究を慢性低酸素曝露肺高血圧ラットを用いて行った。
レイノー現象に伴う指尖血管内皮機能評価法の確立、MCTD-PAH治療における免疫抑制療法の実態と専門医の意識調査を行い、膠原病に合併する中枢神経症状の病態に関する検討を患者の血清と髄液を用いて行った。
結果と考察
MCTDを自己抗体と遺伝子の面からとらえる努力を続けている。
MCTDの血清学的特徴である抗U1-RNP抗体産生への関与が考えられる細胞亜群をモデル動物から見いだした。さらに細胞表面蛋白のよりすぐれた精製により抗U1-RNP抗体以外の自己抗体である抗内皮細胞抗体を見いだした。
遺伝子においても、全ゲノムに対する疾患関連遺伝子の検索を行っている。世界的に見ても抗U1-RNP抗体陽性患者でこれだけ多数のDNAを集めているところは稀と思われる。関連が見いだされた遺伝子の中には他の膠原病で報告のないものもあるため、MCTDを特徴づける遺伝子の可能性もあり、疾患独立性や診断への寄与についても検証が必要であろう。
最も重要な合併症であるPHについて、遺伝子面の検討と各種バイオマーカー、さらに生体検査に収穫が得られた。つまり単球のFra-1やNOS2のCCTTT繰り返し配列の数とPHとの関連が示唆される。これがさらに検証できれば、MCTDにおけるPHを来すハイリスク群が同定でき、早期診断が可能となることが期待される。
臨床的に運動負荷心エコー検査や指尖動脈の血管内皮機能の検査により、PAHをはじめとする血管内皮機能障害を早期に診断できる可能性が示唆された。
各施設からの症例の集積により前のMCTD班が改訂したMCTD-PAH診断の手引きの高い有用性が検証された。さらに膠原病性PAHの治療に関しては、免疫抑制療法がSLEで高率になされ、強皮症では低率であること、MCTDはその中間に位置することが、班内の多数の集積例でも確認され、班内の施設の専門医の考えでも裏付けされた。今後は、MCTDにおいてSLE様病態と強皮症様病態のどちらに基づくPAHであるかの評価により免疫抑制療法など治療法の選択が異なっていく可能性が考えられる。
MCTDの血清学的特徴である抗U1-RNP抗体産生への関与が考えられる細胞亜群をモデル動物から見いだした。さらに細胞表面蛋白のよりすぐれた精製により抗U1-RNP抗体以外の自己抗体である抗内皮細胞抗体を見いだした。
遺伝子においても、全ゲノムに対する疾患関連遺伝子の検索を行っている。世界的に見ても抗U1-RNP抗体陽性患者でこれだけ多数のDNAを集めているところは稀と思われる。関連が見いだされた遺伝子の中には他の膠原病で報告のないものもあるため、MCTDを特徴づける遺伝子の可能性もあり、疾患独立性や診断への寄与についても検証が必要であろう。
最も重要な合併症であるPHについて、遺伝子面の検討と各種バイオマーカー、さらに生体検査に収穫が得られた。つまり単球のFra-1やNOS2のCCTTT繰り返し配列の数とPHとの関連が示唆される。これがさらに検証できれば、MCTDにおけるPHを来すハイリスク群が同定でき、早期診断が可能となることが期待される。
臨床的に運動負荷心エコー検査や指尖動脈の血管内皮機能の検査により、PAHをはじめとする血管内皮機能障害を早期に診断できる可能性が示唆された。
各施設からの症例の集積により前のMCTD班が改訂したMCTD-PAH診断の手引きの高い有用性が検証された。さらに膠原病性PAHの治療に関しては、免疫抑制療法がSLEで高率になされ、強皮症では低率であること、MCTDはその中間に位置することが、班内の多数の集積例でも確認され、班内の施設の専門医の考えでも裏付けされた。今後は、MCTDにおいてSLE様病態と強皮症様病態のどちらに基づくPAHであるかの評価により免疫抑制療法など治療法の選択が異なっていく可能性が考えられる。
結論
診断については、ゲノム解析によりハイリスク群を抽出して早期診断に役立つ可能性が考えられた。また特に予後に大きく関与するPHについてもNOS2の多型などの遺伝子分析やその他の種々のマーカーの解析からハイリスク群を抽出し、PHの診断がより早期にできる可能性が考えられた。実際、前の班で改訂されたPH診断の手引きの有用性を検証できた。
治療に関しては、予後に大きく関連するPAHについてステロイドや免疫抑制薬の使用現状が明らかとなり専門医の考えも明確となった。またやはり難治性の中枢神経症状についても自己抗体の面から分けられる可能性が判明した。さらに長期的には抗U1-RNP抗体の病原性の検討やモデル動物による単球の関与の検討から新しい薬剤の開発につながる可能性が期待できる。
治療に関しては、予後に大きく関連するPAHについてステロイドや免疫抑制薬の使用現状が明らかとなり専門医の考えも明確となった。またやはり難治性の中枢神経症状についても自己抗体の面から分けられる可能性が判明した。さらに長期的には抗U1-RNP抗体の病原性の検討やモデル動物による単球の関与の検討から新しい薬剤の開発につながる可能性が期待できる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
-