文献情報
文献番号
201324020A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫性神経疾患に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
楠 進(近畿大学 医学部(神経内科))
研究分担者(所属機関)
- 池田修一(信州大学医学部内科学(脳神経内科、リウマチ・膠原病内科))
- 出雲周二(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科附属難治ウイルス病態制御研究センター)
- 大原義朗(金沢医科大学生体感染防御学)
- 荻野美恵子(北里大学医学部神経内科学)
- 梶 龍兒(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部感覚情報医学講座臨床神経科学分野)
- 神田 隆(山口大学大学院医学系研究科脳神経病態学・神経内科学)
- 吉良潤一(九州大学大学院医学研究院神経内科学分野)
- 桑原 聡(千葉大学大学院医学研究院神経内科学)
- 高 昌星(信州大学医学部保健学科生体情報検査学)
- 郡山達男(広島市立広島市総合リハビリテーションセンター リハビリテーション病院)
- 清水 潤(東京大学医学部附属病院神経内科)
- 清水優子(東京女子医科大学神経内科)
- 鈴木則宏(慶應義塾大学医学部神経内科)
- 錫村明生(名古屋大学環境医学研究所神経免疫学)
- 園生雅弘(帝京大学医学部神経内科学)
- 祖父江元(名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学)
- 田中正美(国立病院機構宇多野病院神経内科)
- 中辻裕司(大阪大学大学院医学系研究科神経内科)
- 中村龍文(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座)
- 新野正明(国立病院機構北海道医療センター神経内科)
- 西澤正豊(新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学)
- 野村恭一(埼玉医科大学総合医療センター神経内科)
- 原 寿郎(九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野小児科学)
- 藤井義敬(名古屋市立大学大学院医学研究科腫瘍・免疫外科学)
- 藤原一男(東北大学大学院医学系研究科多発性硬化症治療学寄附講座)
- 松井 真(金沢医科大学神経内科学)
- 松尾秀徳(国立病院機構長崎川棚医療センター神経内科)
- 水澤英洋(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学)
- 本村政勝(長崎総合科学大学医療電子コース)
- 山村 隆(国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部)
- 吉川弘明(金沢大学保健管理センター)
- 渡邊 修(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経病学講座神経内科・老年病学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
59,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
多発性硬化症(MS)、重症筋無力症(MG)、ギラン・バレー症候群(GBS)、フィッシャー症候群(FS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、単クローン抗体を伴う末梢神経炎(クロウ・フカセ症候群)、HTLV-Ⅰ関連脊髄症(HAM)の8指定対象疾患、並びに関連のある免疫性神経疾患について全国的な調査研究班を組織して、1)全国臨床疫学調査に基づき日本人における疫学的特徴、現状の治療成績などを明らかにすること、2)全国調査結果と実験室での分子神経免疫学的研究成果を結びつけて発症機序を解明すること、3)発症機序と病態に立脚した新しい治療法を開発すること、および、4)疾患感受性遺伝子や環境要因の解析を通じて発症予防法を見出すことを目的とする。
研究方法
患者の臨床検査データやサンプルの使用、治療薬の投与など、すべての臨床研究において、各施設の倫理委員会の承認後、十分なインフォームドコンセントを得て行った。さらに、臨床疫学調査では患者のプライバシーの保護に十分配慮し、個人情報が流出しないように細心の注意を払った。動物を使用する研究は動物愛護の観点より各施設の動物実験に関する指針・マニュアルを遵守した。
結果と考察
MS/NMOは、病態解析の手段として、髄膜におけるリンパ類似濾胞構造、軸索への栄養供給、アストロサイト、ミクログリア、BBB由来内皮細胞、プラズマブラストなどを解析し様々な知見がもたらされた。これらの結果からMS/NMOには多様な病態が混ざっていることが想定され、抗MOG抗体、Sema4A、TCRα鎖コピー数多型、11C酢酸PETなどの病態識別マーカーが今後も続々と登場し、疾患がより細分化されてゆくものと思われる。そして、病態によって治療法が選択され、抗IL-6受容体抗体、免疫修飾薬OCH、フィンゴリモドなどの薬剤が適切に投与されることが期待される。動物モデルEAEの研究では、TPB2、プロテオグリカン、PIR-B、HCA3551などの新規治療標的候補も続々報告されており今後の発展が期待される。自己免疫性脳炎は、抗GAD抗体、抗NMDAR抗体、抗LGI-1抗体、抗NAE抗体などの自己抗体関連脳炎の病態や臨床像の解析が進展した。
HAMは、CXCL10、 N-アセチルラクトサミンによる糖鎖修飾、CCL1など病態に関連する因子が規定されてきた。今後はこれらを標的にした治療法の開発も必要である。
MGは、多施設共同研究にて臨床像の解析、PSLや免疫抑制薬の長期使用例の解析など、貴重なデータが示された。今後もさらなる症例の蓄積が求められる。
GBS/FSは、インフルエンザ先行感染例、治療前後の血清IgG値による重症度予測、新たな標的抗原などの治験が得られたが、これらの症例蓄積とともに、さらに新たな因子の発見も求められる。抗ganglionic AChR抗体陽性症例の臨床像はかなり明らかになったが、解析の継続が必要である。
CIDP/MMNは、病態解析や診断方法の確立が遅れており、神経超音波検査のような新たな検査方法やTAG-1欠損マウスのような動物モデルでの研究成果が期待される。
クロウ・フカセ症候群は、サリドマイドの医師主導型治験を継続しており、その結果が期待される。
筋炎は、様々な原因や病態の疾患が混同しており、その病態解析や診断方法の確立が求められる。
HAMは、CXCL10、 N-アセチルラクトサミンによる糖鎖修飾、CCL1など病態に関連する因子が規定されてきた。今後はこれらを標的にした治療法の開発も必要である。
MGは、多施設共同研究にて臨床像の解析、PSLや免疫抑制薬の長期使用例の解析など、貴重なデータが示された。今後もさらなる症例の蓄積が求められる。
GBS/FSは、インフルエンザ先行感染例、治療前後の血清IgG値による重症度予測、新たな標的抗原などの治験が得られたが、これらの症例蓄積とともに、さらに新たな因子の発見も求められる。抗ganglionic AChR抗体陽性症例の臨床像はかなり明らかになったが、解析の継続が必要である。
CIDP/MMNは、病態解析や診断方法の確立が遅れており、神経超音波検査のような新たな検査方法やTAG-1欠損マウスのような動物モデルでの研究成果が期待される。
クロウ・フカセ症候群は、サリドマイドの医師主導型治験を継続しており、その結果が期待される。
筋炎は、様々な原因や病態の疾患が混同しており、その病態解析や診断方法の確立が求められる。
結論
MS/NMOの病態には感染、液性免疫、細胞性免疫などが複雑に関与しており、各々の作用部位を標的とした治療薬が開発されており、すでに臨床応用がはじまった薬剤もある。また、病態や治療反応性を分類するためのマーカーが蛋白レベル、遺伝子レベルでも解析が進み、ある一定の成果が得られた。NMO全国疫学調査が終了した。
自己免疫性脳炎は、抗GAD抗体、抗NMDAR抗体、抗NAE抗体などの自己抗体と脳炎脳症の臨床像や病態が徐々に明らかになった。
HAMは、慢性炎症病巣形成の病態解析や治療薬についての新たな知見があった。また、患者ネットワーク「HAMねっと」の構築も進んだ。
MGは、多施設共同研究にて治療薬の長期投与に関する情報が得られ、抗MuSK抗体陽性例の診断方法や病態解析について成果が得られた。
GBS/FSは、先行感染や抗糖脂質抗体に関する新たな知見が得られ、抗ganglionic AChR抗体陽性症例の臨床像が明らかになった。
CIDP/MMNは、臨床的特徴や神経超音波検査を用いた検査方法などが報告された。
クロウ・フカセ症候群は、サリドマイドの医師主導型治験を継続している。
筋炎は、免疫学的病態や悪性腫瘍との関連などが報告された。
自己免疫性脳炎は、抗GAD抗体、抗NMDAR抗体、抗NAE抗体などの自己抗体と脳炎脳症の臨床像や病態が徐々に明らかになった。
HAMは、慢性炎症病巣形成の病態解析や治療薬についての新たな知見があった。また、患者ネットワーク「HAMねっと」の構築も進んだ。
MGは、多施設共同研究にて治療薬の長期投与に関する情報が得られ、抗MuSK抗体陽性例の診断方法や病態解析について成果が得られた。
GBS/FSは、先行感染や抗糖脂質抗体に関する新たな知見が得られ、抗ganglionic AChR抗体陽性症例の臨床像が明らかになった。
CIDP/MMNは、臨床的特徴や神経超音波検査を用いた検査方法などが報告された。
クロウ・フカセ症候群は、サリドマイドの医師主導型治験を継続している。
筋炎は、免疫学的病態や悪性腫瘍との関連などが報告された。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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