文献情報
文献番号
201324015A
報告書区分
総括
研究課題名
アミロイドーシスに関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
安東 由喜雄(熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 山田 正仁(金沢大学 医薬保健研究域医学系 脳老化・神経病態学(神経内科学))
- 池田 修一(信州大学 医学部内科学、神経内科)
- 樋口 京一(信州大学 大学院医学系研究科疾患予防医科学系・加齢生物学講座)
- 玉岡 晃(筑波大学 大学院人間総合科学研究科・疾患制御医学専攻・神経病態学分野)
- 高市 憲明(虎の門病院 腎センター)
- 山田 俊幸(自治医科大学 臨床検査医学)
- 内木 宏延(福井大学 医学部医学科・病因病態医学講座・分子病理学領域)
- 本宮 善恢(医療法人翠悠会(社団))
- 今井 裕一(愛知医科大学 医学部内科学講座腎臓・リウマチ膠原病内科)
- 吉崎 和幸(大阪大学 大学院工学研究科応用化学専攻)
- 東海林幹夫(弘前大学 大学院医学研究科附属脳神経血管病態研究施設脳神経内科学講座)
- 麻奥 英毅(広島赤十字・原爆病院 検査部・血液内科)
- 奥田 恭章(道後温泉病院 リウマチセンター内科)
- 水口 峰之(富山大学 大学院医学薬学研究部(薬学)構造生物学研究室)
- 工藤 幸司(東北大学病院 臨床試験推進センター)
- 水澤 英洋(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野)
- 西 慎一(神戸大学 大学院医学研究科腎臓内科 腎・血液浄化センター)
- 畑 裕之(熊本大学 大学院生命科学研究部生体情報解析学)
- 宇根 有美(麻布大学 獣医学部病理学研究室)
- 岩坪 威(東京大学 大学院医学系研究科神経病理学分野)
- 小池 春樹(名古屋大学 医学部附属病院神経内科)
- 島崎 千尋(社会保険京都病院 血液内科)
- 植田 光晴(熊本大学 医学部附属病院神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
38,424,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
アミロイドーシスは、組織の細胞外へアミロイド線維の沈着を生じ、各臓器の機能障害をきたす疾患群であり、共通した病理学的な特徴を有する。多様な基礎疾患や原因蛋白質を有することから、各診療科が連携して横断的な研究に取り組み、本疾患群に対する診療を改善する目的で研究を実施した。
研究方法
本疾患群に共通した臨床的な課題に取り組むと共に、各病型の分子病態に基づいた早期診断・治療法の開発・改善を行った。本症の発症動向を調査・把握し、各医療機関と病診連携を構築・改善することを目的に実施した。
結果と考察
1)家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP):アミロイドーシスの早期診断および診療支援を行うために診断システムを構築し、全国の施設より609 例の依頼があった。トランスサイレチン(TTR)安定化剤であるジフルニサルが心筋症を合併した非Val30Met型FAPに対して有効である可能性が示された。トリプシンによるTTRの断片化がFAPの病態に関わることが示唆された。2) ALアミロイドーシス: 自家造血幹細胞移植とメルファラン/ デキサメタゾン併用療法は適応症例を厳密に選択することで高い有効性が示されているが、新規治療法との適切な組み合わせによって近年さらに治療成績が向上していることが示された。現在、メルファラン/ デキサメタゾンにボルテゾミブを併用したBMD療法の臨床試験を継続している。完全寛解が得られない症例も新規薬剤を含めた移植後維持療法により予後の改善が期待できる。3) AAアミロイドーシス:IL-6を標的としたトシリズマブはAAアミロイドーシスに対して優れた治療効果を示すことが、多施設共同研究で明らかになった。JAK阻害を介してサイトカインシグナル伝達を阻止する新規低分子化合物であるトファシチニブは、関節リウマチ(RA)患者の血中IL-6、SAA濃度低下させることで、本症の発症に抑制的に働くことが示唆された。アミロイドに特異的に反応する抗AA76抗体を用いたイムノブロット法は、本症の診断および病態評価の優れたツールになりうる。実態調査によりRA合併AAアミロイドーシスは早期に診断され、生物学的製剤などの最新医療で治療される傾向にある。4) 脳アミロイドーシス: Aβ貪食機能を有する骨髄細胞由来M-CSF処置ミクログリア様細胞を用いた細胞治療の有用性、およびAß4-10組み換え大豆蛋白による経口免疫療法の有用性を示した。毒性AβコンフォマーがAD の新たな治療標的、診断マーカーとして有用であることを示した。さらに、新たに発見したガンマ・セクレターゼ結合蛋白はAPPの安定性などのメカニズムを介し、ガンマ・セクレターゼ活性を調節している可能性がある。また、脳のAß沈着量は年齢ではなく、Aß seedsが脳内に存在した期間によって変動することを示した。5) 透析アミロイドーシス(DRA):身体機能をもとにしたDRAの重症度を評価する指標を作成した。個々の患者のβ2MG負荷量を検討することにより、CTS発症予防する透析条件を検討できる可能性がある。DRAの発症に慢性炎症・酸化ストレスが関与している可能性がある。緑茶特有のカテキンは抗アミロイド効果が期待できる。アミロイド線維はエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ毒性を発揮すると考えられる。等温滴定熱量計を用いて、β2mのアミロイド線維形成の熱測定に成功し、熱力学的な構造安定性が検証できた。6) アミロイドーシスに共通する発症・伝搬機構の解析および診断・治療法の開発など:アミロイドに親和性を有する近赤外線蛍光プローブTHK-5XYを用いたアミロイドイメージング技術の基礎的な知見が得られた。医原性アミロイドーシスであるインスリンアミロイドーシスが疑われる症例は、従来考えられていたよりも発生頻度は高い。各種の動物に特徴的なアミロイドーシスが生じていることが確認された。ヒトの病態を考察する上でこれらの知見は大変貴重であると考えられる。
結論
各病型に対する病態解析、治療法の開発等を実施した。また、アミロイドーシス診療体制構築事業などの診療システムの構築も行った。
公開日・更新日
公開日
2014-07-23
更新日
2015-06-30