文献情報
文献番号
201324011A
報告書区分
総括
研究課題名
間脳下垂体機能障害に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大磯 ユタカ(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 肥塚 直美(東京女子医科大学 医学部)
- 石川 三衛(自治医科大学附属さいたま医療センター 内分泌代謝科)
- 片上 秀喜(帝京大学ちば総合医療センター 検査部)
- 横谷 進(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
- 峯岸 敬(群馬大学 大学院医学系研究科)
- 島津 章(国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター)
- 柳瀬 敏彦(福岡大学 医学部)
- 沖 隆(浜松医科大学 医学部)
- 中里 雅光(宮崎大学 医学部)
- 有田 和徳(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
- 岩崎 泰正(高知大学 教育研究部)
- 高野 幸路(北里大学 医学部)
- 竹腰 進(東海大学 医学部)
- 山田 正信(群馬大学 大学院医学系研究科)
- 清水 力(北海道大学病院 検査・輸血部)
- 菅原 明(東北大学 大学院医学系研究科)
- 有馬 寛(名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 高橋 裕(神戸大学 大学院医学研究科)
- 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
- 大月 道夫(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 田原 重志(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
50,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
今年度は3年間の研究期間の最終年度に当たるため、この間に進めて来た研究を臨床展開に向けより具現化することを目的とした。本班の対象疾患は先端巨大症、下垂体機能低下症など7病態18疾患と広範なため、班横断的重点研究課題および各疾患の個別研究課題の両面から研究を進めた。
研究方法
重点研究として、自己免疫性下垂体炎の病因解析と新規疾患分類の確立、Cushing病に対する新規薬物療法および診断法の開発、機能性下垂体腺腫の腫瘍発生と腫瘍増殖因子の3研究課題を柱に進めた。また、代表的な個別研究課題としては、Cushing病関連では高感度EIA法の開発、成長ホルモン関連では成人GH分泌不全症の合併症としてのNAFLD/NASHの病態とGH補充治療の意義の解明、AVP分泌異常症関連では中枢性尿崩症の予後悪化要因の検討、下垂体腺腫関連では下垂体TSH産生細胞を用いた下垂体TSHβ遺伝子の発現制御機構を解析、ゴナドトロピン分泌異常症関連では多嚢胞性卵巣症候群の病態解明を行う目的で卵巣機能を抑制するIL-6の病態に対する関与とその作用メカニズムの解明、長期予後研究では本班独自で運営する多施設共同の予後調査の継続、対外連携研究では海外の下垂体疾患専門研究機関との試料の利用推進、社会連携活動では研究成果の社会還元を公開セミナー、ホームページで発信するなど多方面で学術研究と社会的活動を進めた。
結果と考察
重点研究課題では、自己免疫性下垂体炎の病因解析と新規疾患分類の確立(抗PIT-1抗体症候群の発症機構の解明など)、Cushing病に対する新規薬物療法と診断法の開発(異所性ACTH症候群との鑑別診断法の開発、治療に関してはRXRαのアゴニストの有用性の証明)、機能性下垂体腺腫の腫瘍発生と増殖に関与する因子解析(GH産生腺腫におけるメチル化亢進・低下の意義の検討)など多数の新規知見を得て今後の臨床応用への具体的展開性を示した。個別研究では、今回開発したACTHのICT-EIAは既存のいずれの測定法よりも高感度で、また4.5KdaのACTH1-39を主として認識することが明らかとなり、一方、成人GH欠損状態で発生するNASHが、GH補充療法により内臓脂肪減少、IGF-Iによるインスリン抵抗性改善、肝細胞の酸化ストレス低下、ミトコンドリア機能改善および星細胞の細胞老化誘導と活性低下作用など複数の機序により改善されることを明らかにした。さらに渇感障害を伴う中枢性尿崩症患者ではしばしば脱水状態に陥り、重症感染症に罹患しやすく予後にも影響を与える可能性が示され、またRev-erbαアゴニストは濃度依存的にTSHβ遺伝子発現を抑制し、その概日リズム発生に重要な役割をしていることを明らかとした。さらにIL-6はFSHによるLH受容体 mRNA転写活性上昇を増強することが示され、IL-6がFSHと相乗的にLH受容体プロモーター活性を上昇させることが明らかとなった。間脳下垂体疾患の予後調査研究では、7年間で459例が登録され、追跡データの縦断的分析で、「健康上の理由で日常生活に影響のある者の割合」と「主観的健康観」の改善傾向が確認されたが疾患毎に特異性のある傾向が見られた。さらに海外基幹施設との交流を通し試料の効率的利用と解析による診断精度の向上を進め、また国際的診断基準策定に向け始動した。加えて研究成果の社会への還元、行政施策への寄与を積極的に行った。
結論
本班の対象疾患は先端巨大症、下垂体機能低下症など7病態18疾患と広範であるが、重点研究および個別研究を精力的に進めた結果、各疾患の発症機構、診断法開発、種々の臨床的エビデンス等多くの成果を得ることができた。今後、これらを基盤とし臨床展開への行程がより具現化した。また臨床診療の現場に最新の診断・治療指針を提供する目的で、対象18疾患に関し継続的にその診断と治療の手引きを随時改定し、わが国の間脳下垂体疾患の診断・治療のレベルアップに寄与してきた。さらに研究成果を社会へ還元する目的で独自ホームページ、公開セミナーを活用し疾患概要、研究成果の紹介、各種ガイドラインの周知等を積極的に進め、この領域の医学、医療の水準が世界でもトップクラスに位置することに貢献した。
公開日・更新日
公開日
2014-07-23
更新日
2015-06-30