文献情報
文献番号
201324005A
報告書区分
総括
研究課題名
血液凝固異常症に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
村田 満(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 冨山佳昭(大阪大学医学部付属病院・輸血部)
- 藤村欣吾(安田女子大学・共通教育部)
- 桑名正隆(慶應義塾大学医学部)
- 倉田義之(四天王寺大学人間福祉学科)
- 藤村吉博(奈良県立医科大学付属病院・輸血学)
- 和田英夫(三重大学医学部)
- 小亀浩市(国立循環器病研究所センター・分子病態部)
- 小嶋哲人(名古屋大学大学院 医学系研究科)
- 坂田洋一(自治医科大学分子病態治療研究センター・分子病態研究部)
- 宮田敏行(国立循環器病研究所センター・分子病態部)
- 川﨑富夫(厚生会第一病院)
- 横山健次(慶應義塾大学医学部)
- 小林隆夫(浜松医療センター)
- 榛沢和彦(新潟大学教育研究院呼吸循環器外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
56,077,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者川崎富夫 平成25年10月1日付 大阪大学医学部より厚生会第一病院へ所属機関を変更
研究報告書(概要版)
研究目的
特定疾患治療研究対象事業である3つの疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性微小血管障害症(TMA)、特発性血栓症について、サブグループに分かれ課題に取り組み、分子病態解析に基づいた診断基準・治療指針の確立と普及と検証、疫学的解析による我が国での発症頻度、予後などの正確な把握を目的としている。平成25年度は研究班3年目として、疫学調査、診断や治療の標準化(新たな診断基準の作成、治療の参照ガイドの作成および改訂)、疾患のさらなる病態解析と新規治療法の開発に取り組んだ。
研究方法
<ITP>治療の参照ガイドの作成:これまでの臨床研究成果、並びに国内外のITP治療ガイドを参考に原案を作成した。これを本研究班員で構成するITP治療の参照ガイド作成委員会のメンバーで意見交換し、加筆、修正を加えた。さらに本研究班班員全員に公開し意見聴取を行い、訂正されたものを本研究班の見解として日本血液学会雑誌「臨床血液」に公表した。(B)全国のITP臨床調査個人票の解析:各都道府県からのデータを入手し解析した。(C) 特異的診断法の開発:TPO測定、網状血小板比率の測定法の検討を行った。その他、(D) ITPの病態解析、(E) 新規治療法の基礎研究:ITP自然発症モデルマウスを用いた免疫寛容を誘導する新規治療法の開発。<TTP>日本国内の症例を集積した。その中から、先天性TTP:USS症例について同意の得られたものからADAMTS13遺伝子解析を実施した。また、後天性TTPについては、その自己抗体の認識部位などの基礎的な解析を行うとともに、臨床的にinhibitor boostingに注目して解析した。また本研究班が中心となりTTPの診断と治療に関する2つの医師主導治験を計画した。1つは、リツキシマブのTTPに対する保険適用取得を目指すものであり、もう1つはADAMTS13活性とインヒビターの測定の保険収載のための治験である。<特発性血栓症>全国実態個別調査に基づき日本人の静脈血栓塞栓症に適したワルファリンの適正使用の指針づくり、日本人特有な先天性血栓性素因・プロテインS K196E変異につき静脈血栓塞栓症の発症・再発予防に資するエビデンス収集、日本人での静脈血栓塞栓症の発症リスク変異の同定や再発予防に資するエビデンス収集、新潟中越/中越沖/岩手・宮城内陸の各地震、東日本大震災後の被災者に発症した静脈血栓塞栓症の調査、日本人での周術期や産婦人科、精神科、内科領域とくに悪性腫瘍患者などでの静脈血栓塞栓症の発生頻度調査、等を実行した。
結果と考察
<ITP>臨床個人調査表:平成21-23年度に関し、発症年齢、更新年齢とも中高年の男女に最も多い事が確認された。ITP治療の参照ガイドの作成、公表:本研究班にて「成人ITP治療の参照ガイド」を作成し公開した(「臨床血液」誌掲載)、さらに臨床個人調査表の改訂(案)も作成し、新たに「妊娠合併ITP診療の参照ガイド」を産科、小児科、麻酔科の専門家と共同で作成した(「臨床血液」誌に投稿予定)。ITPの病態解析、診断:引き続き検査の標準化を検討した。自己抗体のエピトープの局在部位を同定、新たに開発したITPマウスモデルの解析を行った。<TMA>本邦のデータベース:2012年12月までに日本国内から集積した症例は1149例(2013年末までは現在集計中)。この中からUSSを49例、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の診断基準に合致する症例を55例同定した。後天性TMAは1045例。TTP診断基準案を作成した:英国のTTP診断基準作成責任者Scully先生を日本にお招きし、意見交換を行った。その他USSの遺伝子解析、USS患者の妊娠時の管理、後天性TTPにおけるinhibitor boosting、難治性、再発性TTPに対するリツキシマブの医師主導治験を開始した。<特発性血栓症>医療行政上での成果として、「プロテインS活性測定検査の保険収載」と「ヘパリン在宅自己注射の保険適用」があげられる。その他「不育症を対象とした先天性血栓性素因に関する研究」、「ワルファリン療法施行患者におけるプロトロンビン時間(PT-INR)自己測定の有効性と安全性に関する臨床研究」、「先天性アンチトロンビン欠損症・SERPINC1解析研究」、「アンチトロンビン・レジスタンス」、「自家移植を施行した、比較的若年の日本人多発性骨髄腫患者における血栓症発症の解析」「入院患者における静脈血栓塞栓症発症予知に関する研究」「震災後の静脈血栓塞栓症に関する研究」が行われた。
結論
各研究グループにおいて、診療ガイドの作成、調査票による疾患の実態調査や基礎研究の発展を認め、それら結果に基づいた診断・治療法の確立を目指す研究を遂行した。
公開日・更新日
公開日
2014-07-23
更新日
2015-06-30