文献情報
文献番号
201324002A
報告書区分
総括
研究課題名
ライソゾーム病(ファブリ病含む)に関する調査研究
課題番号
H22-難治-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
衞藤 義勝(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 田中 あけみ(大阪市立大学医学部)
- 島田 隆(日本医科大学医学部)
- 酒井 規夫(大阪大学医学部)
- 高橋 勉(秋田大学医学部)
- 高柳 正樹 (千葉県こども病院)
- 成田 綾(鳥取大学医学部)
- 辻 省次(東京大学医学部)
- 難波 栄二(鳥取大学医学部)
- 鈴木 康之(岐阜大学医学部)
- 桜庭 均(明治薬科大学薬学部)
- 北川 照男(東京都予防医学協会)
- 奥山 虎之(国立成育医療研究センター)
- 坪井 一哉(名古屋セントラル病院)
- 松田 純子(川崎医科大学医学部)
- 遠藤 文夫(熊本大学医学部)
- 下澤 伸行(岐阜大学医学部)
- 今中 常雄(富山大学医学部)
- 小林 博司(東京慈恵会医科大学医学部)
- 加我 牧子(東京都立東部療育センター)
- 横山 和明(帝京大学薬学部)
- 石垣 景子(東京女子医科大学)
- 高村 歩美(鳥取大学医学部)
- 井田 博幸(東京慈恵会医科大学)
- 大橋 十也(東京慈恵会医科大学)
- 渡邊 順子(久留米大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
62,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究はライソゾーム蓄積症(LSD),副腎白質ジストロフィー(ALD)などが含まれるペルオキシソーム病(PD)患者の現状並びに予後、日常生活動作(ADL),生活の質(QOL)の改善を目指すため自然歴との比較、現在の治療特に酵素補充療法の長期効果、阻害因子を解明する。又LSD, PDの病態を、iPS細胞等を用いて明らかにし、早期診断の為の新しい診断法、治療法を検討する。濾紙血を用いての新生児、ハイリスクスクリーニングによる早期診断治療、シャペロン治療、基質合成抑制治療の効果判定、ウイルスベクターあるいはZnフィンガー法など相同組換えを用いた遺伝子治療・細胞治療に関わる新規治療法の開発を進める。LSD, PDの多くは中枢神経障害を呈し、中枢神経障害に対する酵素髄注治療、遺伝子治療による治療効果を明らかにする。同時に我が国での遺伝子治療体制を整備する。
研究方法
①LSD, PD患者の臨床像の把握
1.QOL, ADLの全国調査&酵素治療効果の登録システムの導入
2.バイオマーカーの開発
3.造血幹細胞移植の評価、ガイドライン作成
4.酵素補充療法の評価、ガイドライン作成
②LSD, PD(ALD)患者スクリーニングの開発、実施
③LSD, PD(ALD)患者病態の解析
④新規治療法の開発
1.ケミカルシャペロン
2.造血幹細胞移植
3.遺伝子・細胞治療
4.基質合成抑制治療、
5.iPS細胞治療
6.抗体治療
⑤遺伝病の遺伝子治療体制の整備
1.QOL, ADLの全国調査&酵素治療効果の登録システムの導入
2.バイオマーカーの開発
3.造血幹細胞移植の評価、ガイドライン作成
4.酵素補充療法の評価、ガイドライン作成
②LSD, PD(ALD)患者スクリーニングの開発、実施
③LSD, PD(ALD)患者病態の解析
④新規治療法の開発
1.ケミカルシャペロン
2.造血幹細胞移植
3.遺伝子・細胞治療
4.基質合成抑制治療、
5.iPS細胞治療
6.抗体治療
⑤遺伝病の遺伝子治療体制の整備
結果と考察
ADL,QOLの全国調査をすることにより、各疾患の実際の臨床像および現在の問題点が浮き彫りになってきたといえる。酵素補充療法が保険適応となりライソゾーム病も治療可能な疾患となりつつある現在、患者および家族のニーズも大幅に変化している。またバイオマーカーの検討は疾患の早期発見や治療効果判定に役立つ重要な研究であるが、徐々に実際の成果は出つつある。 造血幹細胞移植の効果も欧米では従来無効とされたムコ多糖症Ⅱ型においても証明されつつあり、ガイドラインの詳しい作成が進行中である。酵素補充療法の市販後調査も進んでおり、現時点でゴーシェ病、ムコ多糖症Ⅰ、Ⅱ、Ⅵ型、ファブリー病、ポンペ病の各疾患において中枢病変、心臓、骨系統への効果は限定的であるがそれ以外の効果は明らかになりつつある。今後はアレルギー事例への対応や髄腔内投与の検討が課題となる。またスクリーニングはライソゾーム病では濾紙血を用いた方法での分析が主流となるが、カットオフ値の決定で問題となるのはpseudodeficiencyの存在である。これらのコンセンサスは今後重要な課題である。病態解析は今回も遺伝子解析だけでなく、多岐にわたる解析が進み、臨床応用に結びつく研究が数多くなされている。新規治療法の開発面では遺伝子治療においてマウスなどを用いた実験報告で中枢への効果を含めた効果の大幅な改善が認められている。さらにZinc Fingerなど相同組換えを用いた遺伝子編集といった新たな手法も開発が進んでいる。またシャペロン療法や基質合成阻害などの方法論にも進歩が見られている。特にシャペロンはわが国から世界へ発信する新しい治療法であり、今後の発展が期待される。また同じく日本発の話題として取り上げられるiPS細胞は今後ライソゾーム病、ペルオキシゾーム病の領域でも新規治療開発、病態解明に有用な可能性を秘めており、疾患由来の細胞作製から標的臓器への分化が現在の課題である。
また遺伝病の臨床遺伝子治療への整備として毎年国際協力遺伝病遺伝子治療フォーラムが開催され整備は徐々に進んでいるといえる。
また遺伝病の臨床遺伝子治療への整備として毎年国際協力遺伝病遺伝子治療フォーラムが開催され整備は徐々に進んでいるといえる。
結論
ライソゾーム病、ペルオキシゾーム病に対する実態調査、病態解析、新規治療法開発といった柱となる各研究は着実に進んでおり、今後の課題も明確になっている現状で増々の成果が期待される。
公開日・更新日
公開日
2014-07-23
更新日
2015-06-30