新たな造血幹細胞移植法の開発:生着効率の向上を目指して

文献情報

文献番号
201322035A
報告書区分
総括
研究課題名
新たな造血幹細胞移植法の開発:生着効率の向上を目指して
課題番号
H25-難治等(免)-一般-104
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
村田 誠(名古屋大学 医学部付属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤 敬也(自治医科大学医学部)
  • 豊嶋 崇徳(北海道大学大学院医学研究科医学専攻内科学講座血液内科学分野)
  • 小川 啓恭(兵庫医科大学医学部内科学講座)
  • 前田 嘉信(岡山大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,808,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、生着効率の向上を目指した新しい造血幹細胞移植法の開発を行うことである。主たるプロジェクトは、骨髄非破壊的前処置を用いた非血縁臍帯血移植において、解凍した臍帯血を直接骨髄内へ移植する移植法の臨床試験を実施し、その安全性と有効性を確認すること。またこれとは別に間葉系幹細胞を併用する移植法の開発も行う。
研究方法
1. 成人血液悪性疾患に対する減量強度前処置を用いた骨髄内臍帯血移植法の臨床試験:対象は減量強度前処置による同種臍帯血移植の適応となる成人血液悪性疾患患者。骨髄穿刺針を局所麻酔下で腸骨に穿刺し、解凍洗浄した臍帯血を注入する。試験デザインは臨床第II相試験、主要評価項目は移植後60日の生着生存率。予定登録数は22例。安全性担保のため、生着不全、生着前早期死亡、骨髄内輸注に伴うgrade 4以上の有害事象の発生患者数で規定した試験早期中止基準を設定し、独立した効果安全性評価委員会を設置した。またモニタリングを定期開催し、その結果に基づき必要に応じて監査も適宜実施する。尚、全ての参加施設で倫理審査委員会の承認を得て実施する。
2. 臍帯血を洗浄せずに注入する骨髄内臍帯血ミニ移植の臨床試験:対象は初回臍帯血移植の適応となる55~70歳の血液悪性疾患患者で、かつ骨髄線維症を有しない患者に限る。フルダラビン+シクロフォスファミド+放射線全身照射による前処置法と、シクロスポリン+MMFによるGVHD予防法を用いる。試験デザインは臨床第I/II相試験で、安全性を評価する第I相試験は10例、有効性を評価する第II相試験は30例の登録数を予定している。
3. その他の施設における骨髄内臍帯血移植:上記の他に、単施設で骨髄内臍帯血移植を試みている施設があり、これらの施設における研究の進捗状況を把握する。
4. 造血幹細胞移植における間葉系幹細胞の臨床応用:日本ケミカルリサーチ社による多施設第I/II相臨床試験「同種造血幹細胞移植後に発症した標準治療抵抗性の急性GVHDに対するJR-031投与の第I/II相試験」(治験調整医師:小澤敬也)の評価を行う。対象はステロイド不応性のgrade II以上急性GVHDを呈した患者14例で、間葉系幹細胞(開発名:JR-031)2×106個/kgを週2回、4週間投与した。
5. 移植後免疫応答に関する基礎的解析:マウス移植モデルを用いて、移植後免疫応答に関する基礎的解析を行う。
結果と考察
1. 平成25年度中に4例実施し、これまでの試験実施症例数は計17例となった。他施設で実施した際にも、臍帯血ユニットの解凍、洗浄、濃縮や、骨髄内への注入などは問題なく実施できた。今年度中に発生した至急報告義務のある有害事象は2例。いずれも通常の臍帯血移植後に一定の頻度で起こりうる事象であり、効果安全性評価委員によりその後の試験継続は可と判断された。2013年7月7日にモニタリング検討会を行った。
2. 既に第I相試験(10例)を終えており、解凍した臍帯血を洗浄せずに直接骨髄内へ輸注することの安全性を確認した。現在は有効性を検討する第II相試験を多施設共同研究として実施中。これまでに26例の登録が終了した。
3. 単施設で骨髄内臍帯血移植を実施している施設に、実施状況の情報提供を依頼した。
4. 既に第I/II相臨床試験(14例)を終えており、間葉系幹細胞投与による輸注毒性、異所性組織形成は認めず、有害事象の多くは同種造血幹細胞移植後に一般的に認められるものであった。14例中13例で奏功(CR or PR)が得られた。またgrade IIIの5例中、2例でCR、2例でPRが得られた。
5. RAGE欠損マウスを使用したマウス急性GVHDの系で、致死率にWTマウスと有意な差を認め、HMGB1-RAGE系がGVHDに関与していることを確認した。今後はそのメカニズムを明らかにするため抗原提示細胞と組織損傷について検討を行う。
考察:放射線を用いない骨髄非破壊的前処置による骨髄内臍帯血移植法の開発に成功すれば、生着率の高い、放射線性二次癌のない、小児成長障害の少ない、治療関連合併症の少ない臍帯血移植法が確立されるものと期待される。また骨髄内移植法や間葉系幹細胞を用いた移植法を骨髄移植や末梢血幹細胞移植にも応用すれば、生着に必要な移植細胞数を減らすことができ、ドナーに掛かる身体的・精神的負担が軽減され、その結果ドナー拡大も期待できる。
結論
引き続き、臍帯血を洗浄した上で移植する骨髄内臍帯血移植と、洗浄しないで移植する骨髄内臍帯血移植の両臨床試験を推進していく。同時に、間葉系幹細胞を用いた新しい移植法の開発基盤を整備する。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201322035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,850,000円
(2)補助金確定額
8,849,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,707,528円
人件費・謝金 0円
旅費 1,391,910円
その他 708,463円
間接経費 2,042,000円
合計 8,849,901円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-