小児心臓移植医療の社会的基盤に関する研究

文献情報

文献番号
201322033A
報告書区分
総括
研究課題名
小児心臓移植医療の社会的基盤に関する研究
課題番号
H25-難治等(免)-一般-102
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中西 敏雄(東京女子医科大学 医学部循環器小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 市田 蕗子(富山大学 医学部小児科)
  • 賀藤 均(国立成育医療センター 循環器科)
  • 小川 俊一(日本医科大学 医学部小児科)
  • 山岸 敬幸(慶應義塾大学 医学部小児科)
  • 土井 庄三郎(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 住友 直方(埼玉医科大学 国際医療センター小児心臓科)
  • 犬塚 亮(東京大学 医学部小児科)
  • 白石 公(国立循環器病センター 小児循環器診療部 )
  • 朴 仁三(榊原記念病院 小児科)
  • 小野 安生(静岡県立こども病院 循環器科)
  • 丹羽 公一郎(聖路加国際病院 循環器内科)
  • 佐地 勉(東邦大学医療センター 大森病院小児科)
  • 岡田 芳和(東京女子医科大学 医学部脳外科学)
  • 日沼 千尋(東京女子医科大学 看護学部 )
  • 福嶌 教偉(大阪大学 大学院医学系研究科重症臓器不全治療学寄附講座・外科学)
  • 中川 聡(国立成育医療研究センター 病院手術集中治療部集中治療科)
  • 清水 直樹(東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部)
  • 山崎 健二(東京女子医科大学 医学部心臓血管外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)小児心筋症患者の登録システムを構築し、小児心筋症の内科管理と予後についての調査研究を施行し、心臓移植が必要な患者数を把握すること、2)我が国の小児脳死患者数と臓器提供できる体制についての調査を行うこと、3)国内外の小児心臓移植実施施設についての調査をおこなうことである。
研究方法
1.移植が必要な心筋症小児患者の病態と数の把握
 小児心筋症患者を登録し、遺伝的解析、病態把握、自然歴の把握、予後に関するデータの集積を多施設共同で行い、心臓移植が必要な患者数を調査する。
後方視的研究:各分担研究施設において、過去20年間の患者を登録する。得られたデータから、我が国の小児心筋症の予後を調べ、予後を決定する因子について分析する。
前方視的研究:各分担研究施設において、小児心筋症の新規患者を登録する。病歴、病態、心臓エコーなどの生理検査データ、血液検査データ、治療などに関するデータを収集する。死亡時、または生存の場合は年1回、経過を入力する。後方視的研究と前方視的研究で得られたデータをあわせて予後研究に使用する。
遺伝子解析:承諾が得られた患者の末梢血から遺伝的解析を行う。遺伝子型と心筋症病態、予後との関連を調べる。小児心筋症において、遺伝子型と予後の関係を検討する。

2.移植施設の基準
 我が国の小児心臓移植は、どのような施設が担っていくべきか、議論されたことはなく、小児心臓移植実施施設の基準は未だ定められていない。成人施設の基準が適用されるため、我が国の小児病院は、小児心臓移植実施施設として申請できないのが現状である。本研究では、国内の実態と国外での小児心臓移植実施施設基準とその実態を調査する。
結果と考察
1.心筋症小児患者の病態
18歳以下の拡張型心筋症(特発性、心筋炎後)、肥大型心筋症、拘束型心筋症、左室緻密化障害、心内膜線維弾性症を診療している主要施設による多施設共同の疫学研究としてスタートした。各分担研究者は、所属する施設の小児心筋症患者を登録し、病態、治療、予後などに関するデータを収集した。全国で、200例の臨床データの収集を行った。拡張型、拘束型心筋症の予後が悪かった。各分担研究者から集められた末梢血を用いて東京女子医科大学において、中西により遺伝子解析を行った。
 18歳以下で発症した心筋症患者77例の臨床データを集計した。さらに全例で、βミオシン重鎖(βMHC)、ミオシン結合蛋白(MyBPC)、トロポニンT (TNT),トロポニンI (TNI),トロポミオシン(TPM1)、ミオシン軽鎖(MYL2, MYL3)、αアクチン(ACTC)の8個の遺伝子変異の有無をダイレクトシーケンス法で調べた。心筋症の内容は、肥大型53例、拡張型14例、拘束型5例、左室緻密化障害5例であった。平成26,27年度でさらなる症例の集積を行う予定である。
2.移植必要患者数
年間の小児移植適応患者数は、約50名の新規患者が発生している。そのうち、約10名が死亡している。
3.心臓移植患者数
2011年から2013年までに施行された心臓移植のうち、ドナーが10歳未満で、レシピエントも10歳未満は、2012年6月に施行された1例のみである。
4.小児ドナー数
2011年の15歳未満例 1例、2012年の10歳未満例1例のみである。
5.我が国での小児心臓移植施設
11歳未満に移植可能なのは、大阪大学、国立循環器病研究センター、東京大学。東京女子医科大学の4施設である。11歳以上に移植可能なのは、上記に加え、東北大学、九州大学、北海道大学、埼玉医科大学、岡山大学の9施設である。
6.我が国での小児心臓移植施設基準
外科医の基準として、1)心臓移植経験者、外国において Transplantation Fellow または心臓移植実施施設 でSurgical (Clinical) Fellow の経験を有する者、またはこれに相当する経験を有する者が複数名、常勤していること。 2) 心臓外科医 チーム内に以下の条件を満たす常勤の心臓外科医(前項の心臓移 植経験者と重複可)か5 名以上いること。3)心臓外科医チーム内に小児の先 天性心疾患を専門とする心臓外科医か 2 名以上いることとなっている。我が国の多くの小児病院にとって、1)と2)の条件を満たすことは困難な状況である。
結論
・小児臓器提供施設
小児からの臓器提供を受けるためには、虐待を除外しなければならない。その為には、病院内体制の整備が必要である。我が国の体制整備は進んでいるものの、実際的に稼働可能であるかは、各病院での検証が必要である。
・ドナーを増やすために
小児移植医療の発展のためには、小児臓器提供が増えることが最も重要である。脳死に至った場合には臓器提供できる機会があることを国民全員に啓蒙する活動が重要であろう。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201322033Z