アレルギー性気管支肺真菌症の診断・治療指針確立のための調査研究

文献情報

文献番号
201322026A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー性気管支肺真菌症の診断・治療指針確立のための調査研究
課題番号
H25-難治等(免)-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
浅野 浩一郎(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 正実(相模原病院 臨床研究センター)
  • 下田 照文(福岡病院 臨床研究部)
  • 亀井 克彦(千葉大学 真菌医学研究センター)
  • 松瀬 厚人(東邦大学 医学部)
  • 小熊 剛(東海大学 医学部)
  • 今野 哲(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 福永 興壱(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者の松瀬厚人の異動にともない、所属が長崎大学医学部から東邦大学医学部に変更(平成26年4月)

研究報告書(概要版)

研究目的
アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)に関する知見は、環境真菌相や背景疾患が異なる海外でのものがほとんどで、本邦での当疾患に関する体系的検討は行われていなかった。そこで、本研究班はABPMの疫学、臨床像、血清診断法、真菌学的要因、環境要因、合併症、治療法等を多面的に調査し、本邦の実情に則した診断・治療指針を作成することを目的とした。
研究方法
(1)全国調査は日本呼吸器学会認定施設・関連施設、日本アレルギー学会認定教育施設(内科系)計906施設を対象にABPMの診療実態に関する症例フォームを送付した。(2)真菌感作重症喘息の解析は、2つの重症喘息コホート(北海道難治性喘息コホート研究、慶應重症喘息研究プログラム)に登録した重症喘息患者にMAST33あるいはCAP-RAST法を用い真菌抗原への感作をスクリーニングした。(3)アレルゲンコンポーネント特異的IgE抗体の意義を検討するため、国立病院機構相模原病院通院中のABPA症例等において、Asp f 1/2/3/4/6特異的IgE抗体価を測定した。(4)ABPM原因真菌の特性に関する予備的検討として、長崎大学病院で血清学的所見および画像所見により確定診断されたABPA症例、千葉大学真菌医学研究センターで2013年4~11月に全国の医療機関からコンサルテーションを受けたABPMあるいはMIBと思われる症例の粘液栓子中の真菌を、形態学的および遺伝子学的に同定した。
結果と考察
(1) 本邦におけるABPM臨床像とその地域差
906施設中134施設より、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 390例、アスペルギルス以外の真菌によるABPM 59例、鑑別不能 23例の計472症例が登録された。性別では女性がやや多く、発症年齢は60歳代がピークと従来の海外の報告に比し高齢発症であった。また、78%で喘息を有し、胸部CT上83%で中枢性気管支拡張を認めた。喀痰検査ではアスペルギルス属が喀痰検査施行例216例中155例(72%)と最多で検出されたが、スエヒロタケも16例で検出され、本邦のABPMの特徴である可能性が示唆された。治療は経口ステロイド剤が344例(76%)で投与され、約半数で(52%)で1年以上継続投与されていた。抗真菌剤は259例(55%)で使用されていた。また、これらの治療に関わらず48%で再発・再燃が認められた。
(2) 重症喘息患者における潜在的ABPM症例の頻度
北海道難治性喘息コホートでは、特異的IgE抗体陽性率は難治性喘息患者ではアルテルナリア2.4%、カンジダ24.4%、アスペルギルス17.3%、ペニシリウム18.9%、クラドスポリウム3.9%、慶應大の重症喘息コホート(Keio-SARP)では、特異的IgE抗体陽性81症例中、真菌抗原IgE陽性者は38人(47%)であった。
(3) 血清学的診断法の基準値
アレルゲンコンポーネント特異的IgEの解析ではABPA群におけるAsp f 1/2/3/4/6-IgEの陽性率はそれぞれ73, 68, 60, 43, 40%であり、Asp f 1/2/3の陽性率が高く、抗体価もAsp f 4/6に比べ高かった。Asp f 1と2のどちらか一方に対して陽性反応を示したものは83%(n=33)であった。ABPA診断におけるAsp f 1/2/3/4/6-IgE抗体価の診断能力(ROC解析でのAUC)はそれぞれ、0.86、0.86、0.82、0.68、0.65で、Asp f 1とAsp f 2-IgEの診断能が優れていた。
(4) ABPM起因真菌の特性
長崎大でのABPA症例11例中で気道から最も高頻度に同定されたのは、Aspergillus属(n=8)であり、以下Schizophyllum commune (n = 4)等であった。Aspergillus属の中では、Aspergillus fumigatus (n=2)よりもAsp. niger, Asp. terreus and Asp. sydowii (総計6例)の方が高頻度に同定された。多くの症例が血清学的に複数の真菌に感作されており、感作真菌と定着真菌は乖離していた。千葉大学真菌医学研究センター臨床感染症分野に対して菌株の同定依頼のあった臨床例中、臨床診断として何らかの真菌によるABPM/MIBが疑われていた症例は9例あったが、いずれもS. communeが分離された。
結論
本邦におけるアレルギー性気管支肺真菌症の実態を明らかにするための基礎データが集積しつつある。今後2年間の検討により、本邦独自のABPM診療指針作成を目指す。

公開日・更新日

公開日
2014-08-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201322026Z