改正法後の脳死下臓器提供におけるコーディネートに関する研究

文献情報

文献番号
201322015A
報告書区分
総括
研究課題名
改正法後の脳死下臓器提供におけるコーディネートに関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小中 節子(日本臓器移植ネットワーク )
研究分担者(所属機関)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院 医学研究科 外科学 救急医学)
  • 岡田 眞人(聖隷三方原病院 救命救急センター 小児科)
  • 朝居 朋子(日本臓器移植ネットワーク)
  • 芦刈 淳太郎(日本臓器移植ネットワーク)
  • 岩田 誠司(福岡県メディカルセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,129,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、①臓器提供病院におけるドナー家族対応関連調査と②臓器斡旋時のコーディネートを担うコーディネーター関連調査を通して救急医療における終末期ケアの現状と臓器植コーディネーター(以下Co)のドナー家族支援を含む業務状況を調査する。この調査結果から、今後の①救急医療における家族支援、②グリーフケアのシステム構築アプローチ、③Coの家族支援を含むコーディネート業務について検討し、臓器移植医療におけるコーディネートの質の向上を図る。又、④並行して効率的なコーディネート体制の構築、及び有効な教育体制についても検討する。
研究方法
1)臓器提供病院関連:小児終末期医療を経験した36家族の死別から退院後の現在に至るまでの家族心情のインタビュー面接結果の分析(修正グラウンドセオリーアプローチ)。4脳死ドナー家族の臓器提供のオプション提示、臓器提供意思決定から死別後の生活に至るまでの心情の面接結果の分析。社会福祉士を中心に、グリーフィングの知識と技術を高める方法の検討。「脳死患者対応セミナー」開催し、意義の確認。
2)コーディネート業務関連:23・24年度の研究結果を基に家族対応プロトコールの策定、臓器あっせん時のCo体制の検討。
3)Coの教育・体制関連調査と有効な教育方法の検討:先行研究(平成5年度「コーディネーターの養成・研修カリキュラムに関する研究」と平成24年度実施のCoの負担感に関する調査、改正法を契機にJOTが採用したCoの業務習得状況調査結果を参考にしてJOT上級職Co7人の研究協力者と共にわが国のCoの教育体制を検討する。更に、平成24年度作成したCo業務マニュアルと、家族支援・提供施設の双方の分担研究結果を活かしたCo教育カリキュラム検討。「仮想のドナー」情報をもとにした実際に即したコーディネーション研修の実際運用に向けて、体験型研修会開催用マニュアルと院内調整研修に必要な説明用冊子を作成する。
結果と考察
1)実際に小児終末期医療を経験した36家族の意識調査の結果から、家族は様々な心理的な不安や自責の思いをかかえており、治療スタッフだけではそれに応えきれていないことが明らかになった。今後、不安や怒りなどを受けとめてくれる臨床心理士の存在や、遺族同士が話し合える場の提供など家族とともに考え実践する終末期医療の実現が必要である。4脳死ドナー家族の調査結果から、ドナー家族は臓器提供に関して家族全員が同一時期に一致した考えに至らないこともあり、そのことが提供後の家族間の思いに違いが生じることもあると思われた。Coは家族の心理的負荷に配慮するためにも、家族内での心理的負荷の違いを把握する事が重要と考えられ、また提供に至らなかった場合の心理的ケアも配慮する必要があると思われた。「救急医療における脳死患者の対応セミナー」は、救急医師・看護師等の医療チームとCo間の役割・連携・課題を探り、議論を深める良い機会であった。提供病院における家族支援はグリーフケアチーム体制が必要であり、グリーフィングのない社会福祉士等の育成には緩和ケア病棟のカンファレンス参加と予期的グリーフィングは実践可能な有効な教育システムと考える.
2)改正法前後では、脳死下臓器提供件数が増加、本人意思不明で家族承諾による割合(7割)の増加、家族申し出より主治医等による選択肢の提示が増加した。今回の研究結果で得られた内容をもとに改正法後の「脳死下臓器提供における家族対応のためのガイドブック」を作成した。家族対応するCoにはドナー家族の心理的負荷を理解した支援が重要となるため、このガイドブックは大きな指標となると考える。Co派遣状況と業務内容は改正法前後ともに5人程度と変化はないものの、業務集約化により個々の対応時間は短縮という効率化が図れていたが、複数回以上の臓器提供事例の経験を有する臓器提供施設ではより効率化が見られたており、提供数の増加はCo業務量も増加するが、逆に経験を増し熟練することで効率化すると考える。
新人の業務習得率は入職前の臨床経験の有無によって大きく異なった為臨床経験有無別の新人教育プログラムを作成した。これまでの研究成果のCoの専門的4業務マニュアルを活かした教育カリキュラムを作成した。 “仮想ドナー発生情報”を基に研修はCo習熟に有効であり、実際運用に向け院内調整Co用説明冊子等を作成した。
結論
ドナー家族ケアには臓器提供病院の医療チームとCoの双方がグリーフケア視点をもって関わり、連携することが重要である。多岐で詳細な臓器提供時のコーディネーションを担う専門Coの育成には、臨床経験の有無別の新人教育と、業務マニュアルによる教育、臓器移植全般を考えたマネージメントスキル向上が必要である。Coの職責は重要であり、Co資質を社会的に保障するためにも公的資格化が課題である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201322015B
報告書区分
総合
研究課題名
改正法後の脳死下臓器提供におけるコーディネートに関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小中 節子(日本臓器移植ネットワーク )
研究分担者(所属機関)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院 医学研究科 救急医学)
  • 岡田 眞人(聖隷三方原病院 救命救急センター 小児科)
  • 朝居 朋子(日本臓器移植ネットワーク)
  • 芦刈 淳太郎(日本臓器移植ネットワーク)
  • 岩田 誠司(福岡県メディカルセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2010年7月17日に臓器移植法の一部改正が行われた。本研究では1)臓器提供病院におけるドナー家族対応関連調査と2)臓器あっせん時のコーディネートを担うコーディネーター関連調査を通して救急医療における終末期ケアの現状と臓器植コーディネーター(以下Co)のドナー家族支援を含む業務状況を調査した。この調査結果から、今後の①救急医療における家族支援、②グリーフケアのシステム構築アプローチ、③Coの家族支援を含むコーディネート業務について検討し、臓器移植医療におけるコーディネートの質の向上を図る。又、④並行して効率的なコーディネート体制の構築、及び有効な教育体制も検討した。
研究方法
1)小児救急医療における家族対応実態と小児終末期医療を経験した家族心情の調査分析。脳死ドナー家族の心情の調査分析。提供病院のグリーフィング体制構築検討。「脳死患者対応セミナー」開催し、意義の確認。2)改正法後の臓器提供の家族対応したCo調査、改正法前後の脳死下事例の背景調査、臓器あっせん時のCo体制検討、改正法施行後に応じたドナー家族対応プロトコールの策定。3)韓国とわが国のCo体制の訪問調査、Co教育関連先行研究調査、Coの負担感に関する調査、新人JOTCoの業務習得状況調査、Co専門業務項目検討と業務マニュアル作成。Coの教育体制(含む業務習得に有効な研修方法)の検討。
結果と考察
1)終末期医療の実態と小児終末期医療を経験した36家族の意識調査の結果から、看取りの医療に関する支援体制の未熟さが示唆され、家族は様々な心理的な不安や自責の思いをかかえており、治療スタッフだけではそれに応えきれていないことが明らかになった。今後、不安や怒りなどを受けとめてくれる臨床心理士の存在や、遺族同士が話し合える場の提供など家族とともに考え実践する終末期医療の実現が必要である。4脳死ドナー家族の調査結果では、ドナー家族は臓器提供に関して家族全員が同一時期に一致した考えに至らないこともあり、そのことが提供後の家族間の思いに違いが生じることもあると思われた。Coは家族の心理的負荷に配慮するためにも、家族内での心理的負荷の違いを把握する事が重要と考えられ、また提供に至らなかった場合の心理的ケアも配慮する必要があると思われた。救急医療の状況下における臓器提供のコーディネート体制にはCo活動が要になる。「救急医療における脳死患者の対応セミナー」は、救急医師・看護師等の医療チームとCo間の役割・連携・課題を探り、議論を深めCo教育の良い機会であった。86人のCoの負担・課題調査で34Co(61.8%)がGHQ12において不健康のリスク値を示したことの改善にはCoの資格化・教育システムの充実等で自覚と誇りの維持できる職種し、待遇改善が必要と考える。提供病院における家族支援にはグリーフケアチーム体制構築が必要であり、グリーフィング教育には緩和ケア病棟のカンファレンス参加と予期的グリーフィングは実践可能な有効と考える.
2)改正法前後では、脳死下臓器提供件数が増加、本人意思不明で家族承諾による割合(7割)の増加、家族申し出より主治医等による選択肢の提示が増加した。今回の研究結果で得られた内容をもとに改正法後の「脳死下臓器提供における家族対応のためのガイドブック」を作成した。家族対応するCoにはドナー家族の心理的負荷を理解した支援が重要となるため、このガイドブックは大きな指標となると考える。Co派遣状況と業務内容は改正法前後5人と変化はないが、業務集約化により個々の対応時間は短縮という効率化が図れ、複数回以上の臓器提供事例の経験を有する臓器提供施設ではより効率化が見られた。提供数の増加はCo業務量も増加するが、逆に経験を増し熟練することで効率化すると考える。
新人の業務習得率は入職前の臨床経験の有無で大きく異なった為、臨床経験有無別の新人教育プログラムを作成した。“仮想ドナー発生情報”を基の研修方法はCo習熟に有効であり、実際運用に向け院内調整Co用説明冊子等を作成した。Coの専門的業務を検討、家族対応、ドナー管理、臓器摘出手術対応、多臓器あっせん対策本部の4業務とした。各業務マニュアル作成(改変)、マニュアルを活かした教育カリキュラムを作成した。この研究成果から、Coの育成、待遇改善が行え、今後のコーディネートの質の向上に繋がると思われる。
結論
ドナー家族ケアには臓器提供病院の医療チームとCoの双方がグリーフケア視点を持って関わり、連携することが重要である。多岐で詳細な臓器提供時のコーディネーションを担う専門Coの育成には、臨床経験の有無別の新人教育と、業務マニュアルによる教育、臓器移植全般を考えたマネージメントスキル向上が必要である。Coの職責は重要であり、Co資質を社会的に保障するためにも公的資格化が課題である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201322015C

収支報告書

文献番号
201322015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,129,000円
(2)補助金確定額
6,129,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 446,809円
人件費・謝金 1,489,800円
旅費 2,972,190円
その他 1,220,201円
間接経費 0円
合計 6,129,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-