文献情報
文献番号
201322008A
報告書区分
総括
研究課題名
アトピー性皮膚炎の発症・症状の制御および治療法の確立普及に関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 玉利真由美(理化学研究所 統合生命医科学研究センター呼吸器・アレルギー疾患研究チーム)
- 中村晃一郎(埼玉医科大学皮膚科 )
- 大矢 幸弘 (国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 アレルギー科)
- 稲垣 直樹 (岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室 )
- 菅谷 誠 (東京大学大学院医学系研究科 皮膚科学)
- 佐伯 秀久 (東京慈恵会医科大学皮膚科 )
- 秀 道広 (広島大学大学院医歯薬保健学研究院皮膚科学 )
- 高森 建二 (順天堂大学医学部附属浦安病院 皮膚科 )
- 相馬 良直(聖マリアンナ医科大学皮膚科学 )
- 浜崎 雄平 (佐賀大学医学部小児科学 )
- 竹内 聡(九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,016,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々は、これまでの厚生労働省科学研究で数多くの研究成果とともに「アトピー性皮膚炎について一緒に考えましょう」(http://www.kyudai-derm.org/atopy/)、「アトピー性皮膚炎―よりよい治療のためのEvidence-Based Medicineとデータ集」(http://www.kyudai-derm.org/atopy_ebm/index.html)「アトピー性皮膚炎、かゆみをやっつけよう」(http://www.kyudai-derm.org/kayumi/index.html)、「アトピー性皮膚炎の標準治療」(http://www.kyudai-derm.org/atopy_care/index.html)を公表し、医療従事者へのエビデンスに基づき、整理された専門知識の提供および患者に向けにわかりやすい治療、病状解説の場を提供し、リニューアルしてきた。これらのウェブサイトでは多くの患者を悩ましQOLの低下を招いているアトピー性皮膚炎(AD)の痒みの具体的な治療法、家庭での対策わかりやすく解説し、開設以来、患者を中心に非常に多くのアクセスを記録している。本研究では、ADの発症に関与する諸因子をコホート研究にて明らかにするとともに、ADの重要な症状である痒みと炎症の機序を生物学的ならびに遺伝学的に解明し、これらの研究成果を踏まえ、標準治療とその工夫・治療効果を分かりやすく具体的に国民に普及させることを目的とする。
研究方法
2001年から樹立した石垣島検診コホートでは、毎年700名前後の0-6歳保育園児の検診、アンケート、採血を行っている。本研究では血中MDC測定、フィラグリン遺伝子多型解析を行った。また遺伝学的研究では既採取のAD患者919例、健常人1032例の遺伝子サンプルを含む集団で遺伝学的解析を行った。
基礎研究では、アトピー・掻痒マウスモデルを用いた、in vivo siRNAによる治療的制御、かゆみ・皮膚炎抑制遺伝子のプロモーター領域の同定と制御法の探索、治療薬のタクロリムス軟膏のかゆみ予防効果、セロトニン感受性痒み伝達神経の電気生理学的探索、抗IL-33抗体治療効果をみた。臨床研究では、ADが睡眠や就労に与える影響、AD患者血清からの新規かゆみ因子同定、かゆみ関連因子IL-31のAD患者での解析、AD患者の汗中かゆみ物質の同定、AD患者由来樹状細胞のアレルギー関連因子解析、小児ADでの卵早期摂取による食物アレルギー予防及び皮膚炎への影響を調べるプラセボコントロール試験を行う。
また、「アトピー性皮膚炎についていっしょに考えましょう」というウェブサイトを患者会と協力し、患者視点でわかりやすいようにリニューアルする。
基礎研究では、アトピー・掻痒マウスモデルを用いた、in vivo siRNAによる治療的制御、かゆみ・皮膚炎抑制遺伝子のプロモーター領域の同定と制御法の探索、治療薬のタクロリムス軟膏のかゆみ予防効果、セロトニン感受性痒み伝達神経の電気生理学的探索、抗IL-33抗体治療効果をみた。臨床研究では、ADが睡眠や就労に与える影響、AD患者血清からの新規かゆみ因子同定、かゆみ関連因子IL-31のAD患者での解析、AD患者の汗中かゆみ物質の同定、AD患者由来樹状細胞のアレルギー関連因子解析、小児ADでの卵早期摂取による食物アレルギー予防及び皮膚炎への影響を調べるプラセボコントロール試験を行う。
また、「アトピー性皮膚炎についていっしょに考えましょう」というウェブサイトを患者会と協力し、患者視点でわかりやすいようにリニューアルする。
結果と考察
石垣島コホート2006-2008年度の血清を用いてAD園児でのTh2ケモカインMDC値高値を示し、また疾患関連因子である保湿因子フィラグリン遺伝子変異の有無が高温多湿の石垣島ではアトピー性皮膚炎の発症に必ずしも寄与しないこと、AD発症因子としてRAG1、2、SOCS1、NGFR、NLRP10、CCR4の関与を示した。
モデルマウスを用いた基礎研究ではTNF-α誘導性の起痒物質NGFがin vivo siRNA局所注射での抑制、皮膚炎と掻破抑制に有効なSema3Aを発現プロモーターRORαを同定、同作動薬によるSema3A発現誘導、モデルマウスでFK506のかゆみ抑制効果が外用中止後3日までは持続しその後徐々に消失すること、多様式ニューロンのセロトニン感受性かゆみ伝達神経、抗IL-33抗体治療による皮膚炎抑制を確認した。
臨床研究ではAD患者の労働生産性と睡眠の障害度と重症度スコアや皮膚QOLスコアとの相関、AD患者でのかゆみ物質GRPとautotaxin高値、AD患者由来の樹状細胞Th2ケモカインMDCの産生能高値、重症度マーカーTARCとSCORAD、掻痒VAS、好酸球数、LDHとの相関、ADでの発汗かゆみの原因物質として、常在真菌マラセチア分泌タンパクを同定した。また、生後6ヶ月~1歳児による卵の早期摂食による食物アレルギーの発症抑制による皮膚炎への関与を臨床試験中である。
モデルマウスを用いた基礎研究ではTNF-α誘導性の起痒物質NGFがin vivo siRNA局所注射での抑制、皮膚炎と掻破抑制に有効なSema3Aを発現プロモーターRORαを同定、同作動薬によるSema3A発現誘導、モデルマウスでFK506のかゆみ抑制効果が外用中止後3日までは持続しその後徐々に消失すること、多様式ニューロンのセロトニン感受性かゆみ伝達神経、抗IL-33抗体治療による皮膚炎抑制を確認した。
臨床研究ではAD患者の労働生産性と睡眠の障害度と重症度スコアや皮膚QOLスコアとの相関、AD患者でのかゆみ物質GRPとautotaxin高値、AD患者由来の樹状細胞Th2ケモカインMDCの産生能高値、重症度マーカーTARCとSCORAD、掻痒VAS、好酸球数、LDHとの相関、ADでの発汗かゆみの原因物質として、常在真菌マラセチア分泌タンパクを同定した。また、生後6ヶ月~1歳児による卵の早期摂食による食物アレルギーの発症抑制による皮膚炎への関与を臨床試験中である。
結論
平成25年度の本研究によって基礎的、臨床的に多くの新知見が得られ、また現在も成果を得るべく継続中である。患者教育ウェブサイトは患者会の協力のもと、患者側からの視点を加えて再構成した。さらに成果を整理・解析し、科学論文や患者教育ウェブサイトの充実を通してアトピー性皮膚炎の正しい治療の普及を図りたい。
公開日・更新日
公開日
2015-06-30
更新日
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