文献情報
文献番号
201322006A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫療法による花粉症予防と免疫療法のガイドライン作成に向けた研究
課題番号
H23-免疫-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 美孝(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 櫻井 大樹(千葉大学 大学院医学研究院)
- 下条 直樹(千葉大学 大学院医学研究院)
- 岡野 光博(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 藤枝 重治(福井大学 医学部)
- 竹内 万彦(三重大学 大学院医学系研究科)
- 大久保 公裕(日本医科大学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
21,039,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
スギ花粉症に対して、免疫療法を用いた早期介入による発症予防効果を検討し、さらに花粉症を含むアレルギー性鼻炎の治療内容、費用、効果、問題点を明らかにして、免疫療法の確立に向けたガイドラインの作成に取り組む。
研究方法
(1)研究班にて作成したアレルギー性鼻炎治療に関して、内容、費用、効果などから
問題点を問うアンケート用紙を用いて、学校健診、あるいは疫学調査など直接受療と関係なく医療機関を訪れたアレルギー性鼻炎患者に対して調査を行った。また、アレルギー性鼻炎患者を診察する機会を有する耳鼻咽喉科医、内科医、小児科医を対象に現在の治療法の評価、舌下免疫療法への関心や実施に関するアンケート調査を行った。
(2)感作陽性でかつ未発症者を対象に、スギ花粉エキスを用いた舌下免疫療法の発症予防についての介入試験を、プラセボエキスを対照とした2重盲検試験を行った。
(3)スギ花粉症患者、スギ感作陽性未発症者、非アレルギー健常者を対象に、末梢血を用いて好塩基球のスギアレルゲンへの反応性、特異的IgE抗体の受容体への反応性について検討を行った。
(4)スギ花粉症患者群、感作陽性未発症者群、非アレルギー群からなる参加者を対象に、スギ花粉飛散時期に鼻粘膜を擦過し、抽出したRNAサンプルを用いた網羅的遺伝子発現解析を行った。
(5)舌下免疫療法の有効性を示すバイオマーカー、効果予測因子について検討を行った。
(6)スギ花粉エキスを用いた舌下免疫療法のヒノキ花粉症に対する有効性について、舌下免疫療法参加者を対象に花粉飛散室を用いたヒノキ花粉曝露による検討を行った。
(7)免疫療法に対するアジュバントの検討を行った。
(8)舌下免疫によるスギ花粉症の治療研究に参加している患者のQOL調査を行った。
問題点を問うアンケート用紙を用いて、学校健診、あるいは疫学調査など直接受療と関係なく医療機関を訪れたアレルギー性鼻炎患者に対して調査を行った。また、アレルギー性鼻炎患者を診察する機会を有する耳鼻咽喉科医、内科医、小児科医を対象に現在の治療法の評価、舌下免疫療法への関心や実施に関するアンケート調査を行った。
(2)感作陽性でかつ未発症者を対象に、スギ花粉エキスを用いた舌下免疫療法の発症予防についての介入試験を、プラセボエキスを対照とした2重盲検試験を行った。
(3)スギ花粉症患者、スギ感作陽性未発症者、非アレルギー健常者を対象に、末梢血を用いて好塩基球のスギアレルゲンへの反応性、特異的IgE抗体の受容体への反応性について検討を行った。
(4)スギ花粉症患者群、感作陽性未発症者群、非アレルギー群からなる参加者を対象に、スギ花粉飛散時期に鼻粘膜を擦過し、抽出したRNAサンプルを用いた網羅的遺伝子発現解析を行った。
(5)舌下免疫療法の有効性を示すバイオマーカー、効果予測因子について検討を行った。
(6)スギ花粉エキスを用いた舌下免疫療法のヒノキ花粉症に対する有効性について、舌下免疫療法参加者を対象に花粉飛散室を用いたヒノキ花粉曝露による検討を行った。
(7)免疫療法に対するアジュバントの検討を行った。
(8)舌下免疫によるスギ花粉症の治療研究に参加している患者のQOL調査を行った。
結果と考察
(1)患者2810名の検討から、治療に対する満足度は、通年性・花粉症とも満足、やや満足を合わせてもその割合が20%台にとどまった。治療に対する不満の理由は効果不十分が半数を越えて最も多かった。アレルゲン免疫療法への期待度は25%程度で、無回答者も多く患者の認知度は低い結果であった。医師へのアンケート調査では、患者が現在の治療に満足、あるいはほぼ満足していると考えている医師は耳鼻咽喉科医で45%、内科医で26%、小児科医で36%であり、舌下免疫療法に関心のある医師は80-90%に達していた。
(2)プラセボ群107名では32%が発症し、実薬群123名では22%が発症した(p=0.09).千葉大学では91名が参加し、プラセボ群40名中37.5%が、実薬群51名中17.7%が発症した(p=0.03)。1施設以外の3施設では発症予防効果が見られた。2年間にわたって試験に参加した全52症例では実薬群26例からは2例(7.7%)、プラセボ群16例からは7例(43.8%)が発症したが、有意に実薬群で低値であった(p=0.017)。舌下免疫療法は発症予防の介入法として期待される結果であったが、服薬コンプライアンスについては課題が残った。
(3)好塩基球の反応性 は特異的IgEの濃度に依存する結果であったが、好塩基球の抗原に対する反応性,および 血清IgEとFcεRⅠとの反応性は発症者と比較して感作陽性未発症者では低い傾向がみられた。
(4)スギ花粉症患者群と非アレルギー群との間で最も発現に違いがあったCystatin SN (CST-1)は花粉症患者で151.4倍増加していた。コントロール群と感作陽性未発症者には有意な変化は認めなかった。Cystatin SNはアレルギー反応の抑制にも作用するが、発症のマーカーとして可能性が期待された。
(5)舌下免疫療法の有効性を示すバイオマーカー、効果予測因子の検討ではEXiLE法による検討から、プラセボ群では花粉飛散期にスギIgE値および EXiLE値が増加したが、実薬群ではIgEのみ上昇を認め、EXiLE値の上昇は抑えられていた。
(6)花粉飛散室でのヒノキ花粉暴露による鼻症状はスギ花粉暴露による症状に比較して経度であったが、症状が強く発現した症例ではヒノキ特異的Th2細胞が有意に上昇し、また同時にスギ花粉に対するTh2細胞数も増加していた。
(7)α-ガラクトシルセラミドを含むアジュバントはマウスでの検討から有効性が期待される結果であった。
(8)花粉飛散が多いと2年間の免疫療法施行症例では3年以上の症例に比較してQOLスコアが高かった。
(2)プラセボ群107名では32%が発症し、実薬群123名では22%が発症した(p=0.09).千葉大学では91名が参加し、プラセボ群40名中37.5%が、実薬群51名中17.7%が発症した(p=0.03)。1施設以外の3施設では発症予防効果が見られた。2年間にわたって試験に参加した全52症例では実薬群26例からは2例(7.7%)、プラセボ群16例からは7例(43.8%)が発症したが、有意に実薬群で低値であった(p=0.017)。舌下免疫療法は発症予防の介入法として期待される結果であったが、服薬コンプライアンスについては課題が残った。
(3)好塩基球の反応性 は特異的IgEの濃度に依存する結果であったが、好塩基球の抗原に対する反応性,および 血清IgEとFcεRⅠとの反応性は発症者と比較して感作陽性未発症者では低い傾向がみられた。
(4)スギ花粉症患者群と非アレルギー群との間で最も発現に違いがあったCystatin SN (CST-1)は花粉症患者で151.4倍増加していた。コントロール群と感作陽性未発症者には有意な変化は認めなかった。Cystatin SNはアレルギー反応の抑制にも作用するが、発症のマーカーとして可能性が期待された。
(5)舌下免疫療法の有効性を示すバイオマーカー、効果予測因子の検討ではEXiLE法による検討から、プラセボ群では花粉飛散期にスギIgE値および EXiLE値が増加したが、実薬群ではIgEのみ上昇を認め、EXiLE値の上昇は抑えられていた。
(6)花粉飛散室でのヒノキ花粉暴露による鼻症状はスギ花粉暴露による症状に比較して経度であったが、症状が強く発現した症例ではヒノキ特異的Th2細胞が有意に上昇し、また同時にスギ花粉に対するTh2細胞数も増加していた。
(7)α-ガラクトシルセラミドを含むアジュバントはマウスでの検討から有効性が期待される結果であった。
(8)花粉飛散が多いと2年間の免疫療法施行症例では3年以上の症例に比較してQOLスコアが高かった。
結論
舌下免疫療法は患者満足度を高める治療としてのみならず、発症予防の手段として活用できる事も期待される。今後、舌下免疫療法の効果に対するバイオマーカー、効果予測因子の検証、アドヒアランスの向上に向けた取り組み、正しい普及を目指したガイドラインの作成を進める必要がある。
公開日・更新日
公開日
2014-08-25
更新日
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