文献情報
文献番号
201321010A
報告書区分
総括
研究課題名
人工キメラ遺伝子と肝臓特異的な輸送担体の開発を基盤とした肝臓内HBV DNA不活化を目指した新規治療法の開発
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
溝上 雅史(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 片岡 一則(東京大学大学院 医学研究科)
- 中西 真(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
- 武冨 紹信(北海道大学大学院 医学研究科)
- 田中 榮司(信州大学 医学部)
- 星野 真一(名古屋市立大学大学院 薬学研究科)
- 杉山 真也(国立国際医療センター 肝炎・免疫研究センター)
- 福原 崇介(大阪大学 微生物病研究所)
- 安井 文彦(東京都医学総合研究所 ゲノム医科学研究分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究経費
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
166,667,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究課題は、B型肝炎に感染した患者の体内に永続的に残存するHBVゲノムを不活化することで、B型肝炎患者の治癒を目指すものである。
核内のHBVゲノムを不活化もしくは排除することを目的として、人工キメラ遺伝子を用いた創薬研究を進める。研究班としては、1)人工キメラ遺伝子の設計と効果の確認を行うグループ(杉山真也、福原崇介、安井文彦)、2)人工キメラ遺伝子の輸送手法を開発するグループ(片岡一則)、3)人工キメラ遺伝子の発現レベルを最適化するグループ(星野真一)、4)人工キメラ遺伝子の副作用を検討するグループ(中西真、杉山真也)、5)ex vivo系の開発をするグループ(武冨紹信)、6)臨床試験に向けた臨床的評価マーカーを検討するグループ(田中榮司)で構成されている。各グループが共同することで、最終的には人工キメラ遺伝子の実用化を目指して研究を進める。
核内のHBVゲノムを不活化もしくは排除することを目的として、人工キメラ遺伝子を用いた創薬研究を進める。研究班としては、1)人工キメラ遺伝子の設計と効果の確認を行うグループ(杉山真也、福原崇介、安井文彦)、2)人工キメラ遺伝子の輸送手法を開発するグループ(片岡一則)、3)人工キメラ遺伝子の発現レベルを最適化するグループ(星野真一)、4)人工キメラ遺伝子の副作用を検討するグループ(中西真、杉山真也)、5)ex vivo系の開発をするグループ(武冨紹信)、6)臨床試験に向けた臨床的評価マーカーを検討するグループ(田中榮司)で構成されている。各グループが共同することで、最終的には人工キメラ遺伝子の実用化を目指して研究を進める。
研究方法
1)人工キメラ遺伝子の作成と最適化を行い、切断活性の評価を行った。遺伝子切断活性を簡便に評価する実験系の構築を目指して、GFP遺伝子を利用して、遺伝子の相補的補修機構を用いた系を構築した。
2)自己会合型のナノミセルを利用し、動物モデルでの遺伝子デリバリー効率について検討した。カチオン性ポリマー・脂質を用いた系でも検討した。
3)人工合成mRNA(EGFP)を利用して、EGFP ORFの3’非翻訳領域(3’UTR)にはβ-globinのmRNA安定化シス配列を導入した。タンパク質検出用にFlagタグを5コピー付加し、3’末端には72塩基のポリA鎖を付加した。
4)FUCCIのシステムを用いて、DNA截断が生じた際の細胞周期進行制御、および細胞老化誘導機構について検討した。また細胞老化誘導におけるがん抑制遺伝子p53やpRbの作用機構を明らかにする目的で、これらに対するレンチウイルスshRNAシステムを用いた。
5)切除肝を冷生食に浸漬し細分化した。組織片はコラゲナーゼ処理をおこない、金属メッシュでシングルセル化した。DMEMにFBSを10%、F12栄養液、抗生物質を添加した。検討のために必要に応じて成長因子を加えた。12種類の培養条件を検討し、24時間以内に培養皿に付着する細胞数が多いものを基準として条件を検討した。
6)HBV RNA検出の臨床的意義を検討した。患者は、核酸アナログ治療例を含むB型慢性肝炎例546例を対象とした。In houseのHBV DNAとHBV RNAの測定方法を用いた。
2)自己会合型のナノミセルを利用し、動物モデルでの遺伝子デリバリー効率について検討した。カチオン性ポリマー・脂質を用いた系でも検討した。
3)人工合成mRNA(EGFP)を利用して、EGFP ORFの3’非翻訳領域(3’UTR)にはβ-globinのmRNA安定化シス配列を導入した。タンパク質検出用にFlagタグを5コピー付加し、3’末端には72塩基のポリA鎖を付加した。
4)FUCCIのシステムを用いて、DNA截断が生じた際の細胞周期進行制御、および細胞老化誘導機構について検討した。また細胞老化誘導におけるがん抑制遺伝子p53やpRbの作用機構を明らかにする目的で、これらに対するレンチウイルスshRNAシステムを用いた。
5)切除肝を冷生食に浸漬し細分化した。組織片はコラゲナーゼ処理をおこない、金属メッシュでシングルセル化した。DMEMにFBSを10%、F12栄養液、抗生物質を添加した。検討のために必要に応じて成長因子を加えた。12種類の培養条件を検討し、24時間以内に培養皿に付着する細胞数が多いものを基準として条件を検討した。
6)HBV RNA検出の臨床的意義を検討した。患者は、核酸アナログ治療例を含むB型慢性肝炎例546例を対象とした。In houseのHBV DNAとHBV RNAの測定方法を用いた。
結果と考察
1)従来構築してきたHBVゲノム切断用のZFNを改変することで、切断効率が20-40%程度向上した。3種類の改変を行い、ZFN投与量を増やすことで切断活性も向上することを確認した。TALENについても同様であり、量依存的な切断活性の向上が認められた。
2)核酸輸送能力については、修飾mRNAを用いて、ナノミセルと他のmRNA導入システムとの比較を行った。肝臓でのルシフェラーゼ発現効率を、PEGを持たないPAsp(DET)ポリカチオンや、汎用されている試薬であるlinear polyethyleneimine (LPEI)、lipofectamineと比較したところ、ナノミセル群では他の群と比較して、数倍~10倍程度高い発現を示した。
3)人工合成mRNAは、ポリA鎖長によってmRNAの安定性は影響をうけなかった。しかしながら、3’→5’分解に関わるエキソソーム-SKI複合体をノックダウンするとRNAの安定化が観察された。
4)FUCCIのシステムに対して、電離放射線照射を行い、DNA切断を誘導した。その後、細胞周期進行をタイムラプスイメージングで解析した。高線量で細胞はDNA複製後、分裂期をとおらずにG1期に移行した。その後、細胞老化へと至った。
5)切除肝組織の癌部・非癌部から細胞の分離、培養が可能となった。また、血管構成細胞の単離、培養も成功した。血流遮断から組織の氷冷までに3時間以上を要した症例では、生細胞はほとんど培養できなかった。
6)HBV DNA量はラミブジン(LAM)投与後速やかに低下したが、HBV RNA量は一過性にやや上昇した後に低下した。LAM投与前はHBV DNA優位であったが、投与中はHBV RNAが比較的高値を示した。HBcr抗原とHBc抗原の定量値はHBV RNAと類似して徐々に低下した。
2)核酸輸送能力については、修飾mRNAを用いて、ナノミセルと他のmRNA導入システムとの比較を行った。肝臓でのルシフェラーゼ発現効率を、PEGを持たないPAsp(DET)ポリカチオンや、汎用されている試薬であるlinear polyethyleneimine (LPEI)、lipofectamineと比較したところ、ナノミセル群では他の群と比較して、数倍~10倍程度高い発現を示した。
3)人工合成mRNAは、ポリA鎖長によってmRNAの安定性は影響をうけなかった。しかしながら、3’→5’分解に関わるエキソソーム-SKI複合体をノックダウンするとRNAの安定化が観察された。
4)FUCCIのシステムに対して、電離放射線照射を行い、DNA切断を誘導した。その後、細胞周期進行をタイムラプスイメージングで解析した。高線量で細胞はDNA複製後、分裂期をとおらずにG1期に移行した。その後、細胞老化へと至った。
5)切除肝組織の癌部・非癌部から細胞の分離、培養が可能となった。また、血管構成細胞の単離、培養も成功した。血流遮断から組織の氷冷までに3時間以上を要した症例では、生細胞はほとんど培養できなかった。
6)HBV DNA量はラミブジン(LAM)投与後速やかに低下したが、HBV RNA量は一過性にやや上昇した後に低下した。LAM投与前はHBV DNA優位であったが、投与中はHBV RNAが比較的高値を示した。HBcr抗原とHBc抗原の定量値はHBV RNAと類似して徐々に低下した。
結論
各分担者の成果によって目標としていた進捗を得ることが出来た。来年度以降も開発を進めて、効果を最大化した人工キメラ遺伝子の開発とデリバリーシステムの改善を行っていく。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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