HBV cccDNAの制御と排除を目指す新規免疫治療薬の開発

文献情報

文献番号
201321009A
報告書区分
総括
研究課題名
HBV cccDNAの制御と排除を目指す新規免疫治療薬の開発
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
金子 周一(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 今村 道雄(広島大学病院 消化器・代謝内科)
  • 中本 安成(福井大学 医学部)
  • 橋本 真一(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 村上 清史(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 石川 哲也(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 考藤 達哉(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
  • 高橋 健(京都大学 医学研究科)
  • 加藤 孝宣(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 村口 篤(富山大学大学院 医学・薬学研究部)
  • 池田 裕明(三重大学大学院 医学系研究科)
  • 石井 健(独立行政法人医薬基盤研究所)
  • 水腰英四郎(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究経費
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
76,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型慢性肝炎の治療においてはcccDNAを中心とするHBVの再活性化機構を制御することが重要である。再活性化に関わる免疫監視機構はほとんど明らかにされていない。本研究では、cccDNAの制御と排除を行う治療法を開発するためcccDNAの存在様式と遺伝子発現の調節機構といったcccDNAの基本的な動態を解明するとともに、そうした動態にあるcccDNAに対して、どのような免疫が作動しているかを明らかにして研究開発を行っている。cccDNAの制御と排除を行う新規治療薬の開発研究を目指している。
研究方法
本研究では世界最先端の分子生物学、および免疫学の技術を用いたcccDNAの制御と排除をめざす開発研究を行った。本研究は大きく3つの課題、1)cccDNAの存在様式、および遺伝子発現調節機構の研究、2)cccDNA感染細胞に対する免疫監視機構の研究、3)cccDNA感染細胞に対する免疫治療法、の開発を設定した。
結果と考察
研究課題ごとに結果と考察を記載する。1)従来から課題であったcccDNAの測定系の開発では、DNAをヌクレアーゼ処理しprimerを最適化することにより、血中HBV DNAは検出されずマウス肝臓内のcccDNAを特異的に検出する条件を明らかにした。HBx ORF、HBV EnhI及びEnh IIなどHBV転写制御域等に変異を持つ各種HBVレプリコン系の構築と、トランスに働く野生型及び各領域に変異を持つHBx発現系を準備し、HBV持続産生細胞からHBV粒子の高効率な産生条件の検討と濃縮HBV粒子を用いた感染系の構築の検討を開始した。HBxはHBVの複製に必須の蛋白質であり、その転写活性能を調節することでHBVの複製を制御できる可能性が示された。HBV感染細胞株、並びにPXBマウス由来新鮮ヒト肝細胞を用い、エピジェネティック薬剤であるヒストンメチル化阻害剤及びヒストン脱アセチル化阻害剤のHBV複製に対する影響について検討した。また、抗ウイルス剤によってHBV複製が低下した肝臓におけるcccDNAの存在様式を示した。2)では、ケモカインCCL5/CCR5分子が関連するSTAT3およびNFkB径路が亢進していることなど、ケモカイン、サイトカインの動態を明らかにした。HBs抗原を樹状細胞(DC)にターゲティングすることにより、HBs抗原特異的CTLの誘導効率が上昇することが示唆され、樹状細胞のサブセットであるPDCはHBVを認識して、NKとの相互作用によりNKを更に活性化し、HBV複製抑制に関与することが示された。この結果は、ウイルス排除における樹状細胞の役割を明らかにした。3)では、標的とする抗原エピトープの同定をすすめた。large S領域から28種類、pre-core/core領域から13種類、HBx領域から4種類、polymerase領域から44種類のエピトープを作製し、ELISPOTアッセイ、CTL誘導を行い、標的とする抗原の選択を進めた。末梢血中の抗原特異的プライマリーT細胞から単一細胞レベルで、迅速にヒトTCRを取得するための技術を確立し、TCRクローニングとヒトへの導入の基礎研究をすすめた。TLR9リガンドであるCpGDNAやTLR3リガンドのdsRNAなどについて検討を行い、新たにβグルカンであるシゾフィラン(SPG)でCpGをくるんだ凝集塊のないナノサイズの新規CpG ODNの作製に成功した。このCpGとSPGの複合体、CpG-SPGはヒト抹消血単核球に作用し、強力にIFN-α、IFN-γの産生を誘導した。実際にCpG-SPGはマウスにおいて強力なワクチンアジュバントとして働き、タンパク抗原と混ぜるのみで、強いCTL活性を誘導した。
結論
研究計画の2年目にあたる本年度は全体として計画通りに進捗した。本研究は1)cccDNAの存在様式、および遺伝子発現調節機構の研究、2)cccDNA感染細胞に対する免疫監視機構の研究、3)cccDNA感染細胞に対する免疫治療法の開発、を実施している。1)では、従来から課題であった正確なcccDNAの測定系が開発された。また、抗ウイルス剤によって複製が低下した肝臓におけるcccDNAの存在様式が示された。2)では、最新の免疫学によるケモカイン、サイトカインの動態が報告された。また、ウイルス排除における樹上細胞の役割が明らかにされた。3)では、標的とする抗原エピトープの同定がすすめられ、TCRクローニングとヒトへの導入の基礎研究がすすんだ。また、アジュバントの効果が報告された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201321009Z