C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変に対する抗線維化治療薬の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201320039A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変に対する抗線維化治療薬の開発に関する研究
課題番号
H25-肝炎-一般-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
木村 公則(東京都立駒込病院 肝臓内科)
研究分担者(所属機関)
  • 小嶋 聡一(理化学研究所・微量シグナル制御技術特別開発ユニット・分子細胞病態学、ケミカルバイオロジー)
  • 池嶋 健一(順天堂大学大学院医学研究科 消化器内科学)
  • 奥坂 拓志(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科)
  • 原田 憲一(金沢大学医薬保健総合研究科 形態機能病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HCV感染者は現在世界で約1億7千万人、国内では約200万人いると推定される。また肝硬変患者は国内で約40万人に上るといわれ、約70%がHCVに起因している。肝硬変の進行は、蛋白質合成などの肝臓の様々な機能の低下をもたらし、腹水や門脈圧亢進症等の合併症を誘発する。C型慢性肝炎の治療薬としての抗ウイルス剤の開発はかなり進んでいるが、未だ肝硬変に対する抗線維化薬は実用化されていない。従って、抗ウイルス療法が実施出来ないあるいは治療効果を認めなかったC型肝硬変患者への対策が肝細胞癌発症予防への鍵となっている。PRISM PharmaはWntシグナル伝達を阻害し、β-カテニンとCREB-binding proteinの蛋白相互作用を選択的に阻害できる化合物、PRI-724を見いだした。肝線維化マウスモデルを用いてPRI-724の抗線維化作用機序の解明として、1)骨髄系特にマクロファージの機能解析 2)星細胞の不活化 3)肝細胞の分化誘導作用に焦点を当てる。またヒト肝硬変患者に対するPRI-724の安全性と有効性を検証するため、PRI-724のphase1試験を行う。本研究では、Wntシグナル阻害剤が抗線維化作用を有するという新しい知見をもとに、線維化のメカニズムを実験マウスモデルで解明し、同時に臨床研究として第一段階(H25-27年度)で、HCV肝硬変に対するPRI-724の安全性と忍容性を確認する医師主導治験(Phase I試験)を行い、引き続き第二段階(H27年度以降)では有効性を検討する臨床試験(Phase IIa試験)を開始の目標とする。
研究方法
基礎的研究;17ヶ月齢のHCV発現肝線維化マウスにPRI-724(1mg/kg)を42日間持続静脈投与し肝臓組織を観察したところ、PRI-724投与群ではコントロール群と比較して肝線維化像の著しい改善が認められた。同時に肝脂肪化、肝細胞索の異常構造等の組織所見も改善しておりほぼ正常組織の所見であった。
PRI-724投与後肝臓内に活性化したマクロファージ、単球、好中球の増加を認め、肝臓内MMP-8の発現上昇を認めた。また肝臓ハイドロキシプロリンの定量をおこない、PRI-724投与後の低下を示し抗線維化作用を有することを確認した。今後肝線維化の重要な炎症細胞である星細胞とPRI-724の関与を検討する予定である。


結果と考察
研究代表者らはPRI-724が抗線維化作用を有するか検討し、17ヶ月齢のHCV-Tg肝線維化マウスにPRI-724(1mg/kg)を42日間持続静脈投与し肝臓組織を観察したところ、PRI-724投与群ではコントロール群と比較して肝線維化像の著しい改善が認められた。また同様の効果は肺線維症、腎硬化症マウスモデルでも確認されており(PNAS;2010)、抗線維化薬としてのPRI-724の可能性が示唆された。PRI-724投与後の肝臓内では、マクロファージ、単球、好中球などの炎症性細胞の増加がみられ、特にMMP-8の上昇が顕著であった。臨床研究ではヒトC型肝硬変患者に対するPRI-724の安全性及び有効性を確認するための医師主導治験を実施するにあたり治験実施施設である駒込病院の治験支援体制の整備(臨床研究支援室の設立、SOPの作成、CRO選定等)をおこなった。「C 型肝炎ウイルスに起因する肝硬変患者を対象とした PRI-724の非盲検・用量検討試験」の治験実施計画書の確定し、PRI-724の治験にあたりPMDAと薬事戦略相談(事前面談)を2回実施し、対面助言をH26年1月に行った。
結論
Wnt阻害剤であるPRI-724が抗線維化作用を有することをHCV肝線維化マウスで確認した。今後詳細な抗線維化作用機序の解明を進める。またHCV肝硬変患者を対象とした医師主導臨床治験の準備を進めており平成26年度中の開始を目指す。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201320039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
29,000,000円
(2)補助金確定額
29,001,016円
差引額 [(1)-(2)]
-1,016円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,208,596円
人件費・謝金 886,560円
旅費 562,320円
その他 13,343,540円
間接経費 0円
合計 29,001,016円

備考

備考
研究に必要な物品等購入する際に研究費が不足し、自己資金にて購入したため、交付額と確定額に差異が生じてしまった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-