自己幹細胞からの革新的肝再生療法の開発と応用

文献情報

文献番号
201320038A
報告書区分
総括
研究課題名
自己幹細胞からの革新的肝再生療法の開発と応用
課題番号
H25-肝炎-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
石坂 幸人(国立国際医療センター 難治性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 大河内仁志(国立国際医療研究センター 細胞組織再生医学研究部)
  • 霜田 雅之(国立国際医療研究センター 膵島移植プロジェクト)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
32,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 近年、ヒト間葉系幹細胞(以下hMSC:human mesenchymal stem cell) から肝臓細胞が誘導できることが分かり、国内でも肝硬変症例に対する自己骨髄移植の臨床トライアルが行われている。しかし、充分な臨床効果が得られないのに加えて自己骨髄移植は患者にとって大きな負担であるため、革新的なシステムへの改良が必須となっている。
 本プロジェクトでは研究代表者が国際特許を取得した新規ペプチドベクター(NTP: nuclear trafficking peptide)を用いて、画期的な肝再生療法を実現する。その要素は3つからなる。まず、i. 患者自身のiPS細をウイルスフリーで作成し、ii. これにゲノム操作を加えることでウイルス感染に必須な遺伝子に変異を挿入する。次に、iii. 本課題で実現するシステムを用いて迅速かつ効率的に肝細胞へ分化誘導させる。
研究方法
a. 三段階分化法による肝細胞の分化誘導法:ヒト脂肪由来間葉系幹細胞から肝臓細胞への誘導法は三段階からなり、最終的にアルブミン陽性細胞が出現し、低比重リポタンパク低分子の取り込みやグリコーゲンの産生が陽性となる。 
 今回、改めて同方法の有効性を検証するため、市販のヒト脂肪組織由来幹細胞含む5株の細胞を用いて三段階誘導法を行い、それぞれ処理の第一段階の3日目、第二段階の10日目、そして第三段階の4日目で細胞を回収し、RT-PCR法を用いてHNF-1、HNF-3、HNF-4、HEX、およびAlbuminの発現を調べた。
b. ヒト間葉系幹細胞(hMSCs)から肝臓細胞への分化誘導:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を特定のサイトカイン存在下に培養すると4週間後に肝臓細胞への分化が誘導される。培養ステップは2段階からなり、1次分化培地での培養期間の1日目、3日目、5日目においてNTP付加型蛋白質を作用させ、肝臓細胞への分化誘導が促進されるかどうかを検証した。

c. NTPを用いたゲノム編集技術の確立:近年、新規人工制限酵素として、シングルモジュールによるTALEN(compact TALEN、以下C-TALEN)が開発された。このシステムでは、エンドヌクレアーゼとしてI-Tevlが使用されており、このヌクレアーゼドメインとDNA認識ドメインを含む分子をNTP付加型タンパク質として発現させ、機能性を検証した。
結果と考察
a. 間葉系幹細胞からより高機能な肝細胞の分化誘導法の確立:皮下脂肪に由来する異なる5種類の間葉系幹細胞について、三段階誘導法を適応し、RT-PCRを用いて遺伝子発現を調べた結果、分化誘導は細胞ごとに異なることが判明した。
 論文報告では三段階誘導法の第一段階の処理が終わる三日目にHNF-3βの発現を確認できるとされている。そこで、第一段階においてHNF-3βが発現する条件を検討した。また、Fgf4とActivin Aの濃度を論文より2-3倍に引き上げたところ、HNF-3βの発現が確認され、その発現様式はActivin Aの濃度に応答し、FGF4とActivin Aの濃度を同時に引き上げるとより強い発現が誘導された。以上の結果は、NTP付き HNF-3βの機能性の評価には、3つのステップの内、第一段階での作用から検証することが妥当であることを示唆する。
b. ヒト間葉系幹細胞(hMSCs)から肝臓細胞への分化誘導: NTP付加型HNF3β、HNF4αを添加したとこと、で肝臓分化の指標である種々のmRNA発現量の増加を認めた。

c. NTPを用いたゲノム編集技術の確立:NTP付加型C-TALENもNTPを付加していないものと遜色なく標的ゲノム部位を切断した。またqPCRにおいてもCleavage活性を検討し、こちらも同様にNTP付加型タンパク質でCleavage活性を認めた。また、塩基配列選択的に切断活性を示すことも認められた。
結論
1. NTP付加型HNF3β,HNF4αの同時添加により、hMSCからの肝臓細胞への分化誘導が促進されたことから、次年度では、肝障害モデルマウスでのNTPシステムの有効性を検証し、マーモセットを用いた有効性の検証実験を開始する。
2. C-TALENは、NTP付きの状態でもDNA切断活性を示したことから、次年度では、ヒト肝臓癌由来細胞株であるHuh7.5細胞を用いて、NTP付きc-TALENによるC型肝炎ウイルス感染に必須な宿主側遺伝子のノックアウトを試みる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201320038Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
42,250,000円
(2)補助金確定額
42,250,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 30,638,511円
人件費・謝金 1,609,683円
旅費 31,220円
その他 220,586円
間接経費 9,750,000円
合計 42,250,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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