肝疾患患者における肝がん発症に寄与する宿主遺伝要因の同定・遺伝子機能解析を目指す研究

文献情報

文献番号
201320034A
報告書区分
総括
研究課題名
肝疾患患者における肝がん発症に寄与する宿主遺伝要因の同定・遺伝子機能解析を目指す研究
課題番号
H25-肺炎-若手-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
西田 奈央(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本は先進国中で肝がんが最も多い国であり、近年では肝炎ウイルスが原因の肝がん発症だけでなく、HBV、HCV以外を背景とする肝がん患者が増加している。また、欧米だけなく日本においても肥満と糖尿病の増加が社会的な問題の一つとなっており、肥満や糖尿病から肝臓がんが誘発されることが裏付けられていることから、糖尿病と肝がんの関わりを明らかにすることを本研究の目的とする。
本研究は2つの最終目標達成を目指す。1つは、「B型肝炎およびC型肝炎由来肝がんの関連遺伝子の同定およびその遺伝子機能の解明」とし、もう1つは「各種肝疾患における2型糖尿病発症の関連遺伝子の同定とその遺伝子機能の解明」とする。
研究方法
研究全体の計画として、肝がん関連遺伝子および肝疾患患者における2型糖尿病発症関連遺伝子の同定を目指して、ゲノムワイドSNP解析やNGSを用いたゲノム解析を実施する。NGSを用いたゲノム解析では、100検体程度の肝がん患者を対象として全RNA解析や全ゲノム解析を実施し、癌化に関連する融合遺伝子やゲノム変異、ゲノム構造異常などを探索する(平成25-26年度)。また、肝がん患者群を対象としたGWASでは多くの検体を必要とするため、FFPEサンプルが使用できる状態になった後でゲノムワイドSNP解析を実施する(平成26-27年度、目標症例数:1,000検体)。また、各種肝炎患者群の中で2型糖尿病を発症した群、発症しなかった群、肝疾患を有さない2型糖尿病患者群の3群に分けたGWASを実施することで、2型糖尿病発症の関連遺伝子の同定を目指す。2型糖尿病発症の関連遺伝子周辺におけるSNP変異情報や全RNA解析結果、全ゲノム解析結果などのゲノム解析データと各検体の詳細な臨床背景を加えて統合的に解析することで、その遺伝子機能の解明を目指す(平成27年度)。
結果と考察
(1) アジア人4集団(日本人、韓国人、香港人、タイ人)のB型肝炎患者群、ウイルス排除群、健常対照群の合計3,167例を対象として、HLA-DPタイピングを実施した。その結果、HLA-DPB1*02:01が肝発癌に抵抗性の関連を示すことを明らかにした(論文発表(1)参照)
(2) 2型糖尿病関連遺伝子を文献から検索し、71遺伝子領域の全92か所のSNPを選択した。それら92か所のSNPを対象として、DigiTag2法による(Nishida et al. PLoS One, 2012)SNPタイピングセットを構築した。
(3) 92 SNPのうち、32 SNPを対象とした予備的な検証を日本人糖尿病患者194例(肝発癌あり:72例、肝発癌なし:122例)で実施し、有意水準を満たすSNPを1か所同定した。
B型肝炎慢性化に関することが明らか(Nishida et al. PLoS One, 2012)となっていたHLA-DPB1遺伝子が肝発癌にも関連することを世界に先駆けて発見し、報告した。また、2型糖尿病関連遺伝子として報告されている遺伝子の中に、肝発癌との関連を示す遺伝子を一か所同定することができた。しかしながら、2型糖尿病患者における肝発癌発症については、193症例という小規模な解析であるため、今後さらに症例数を増やした解析が必要と考えられる。
結論
肝発癌に関連するホスト側遺伝要因として、HLA-DPと共に、2型糖尿病関連遺伝子が同定された。今後さらに症例数を増やした解析を実施し、予備的な解析で同定された2型糖尿病関連遺伝子の関連が再現されるか確認するとともに、新たな肝発癌関連遺伝子の同定を目指す。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201320034Z