C型肝炎ウイルス感染特異的な長鎖ノンコーディングRNAの探索

文献情報

文献番号
201320030A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎ウイルス感染特異的な長鎖ノンコーディングRNAの探索
課題番号
H24-肝炎-若手-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
島上 哲朗(金沢大学 付属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 白崎 尚芳(金沢大学 医薬保健研究域保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦での抗C型肝炎ウイルス(HCV)療法は、従来のペグインターフェロンとリバビリン併用療法に加え、プロテアーゼ阻害剤の使用が可能となり、HCV排除率は著明に改善した。しかし、今後プロテアーゼ阻害剤耐性ウイルスによるbreakthrough肝炎、またインターフェロンの副作用による治療困難例への対策が必要となる。そのため既存治療とは異なる作用機序の新規抗HCV療法の開発が急務と考えられる。近年、200塩基以上のlong non-coding RNA(lncRNA)が、様々な疾患・病態において重要な役割を果たしていることが報告されている。HCVとnon-coding RNAに関しては、microRNA-122(miR-122)が、HCV複製に促進的に働き、有力な治療標的であることが明らかとなったが、HCV感染とlncRNAとの関連は未検討である。本研究はHCV感染を制御しうるlncRNAの同定を行なうことを目的とした。
研究方法
ヒト肝癌細胞株にHCVを感染させ、感染後24時間から72時間まで24時間おきに経時的にRNAを回収、また感染24時間後からNS5A阻害剤によりHCV複製を抑制し、NS5A阻害剤投与後48時間後にRNAを回収した。これらのRNAを次世代シークエンサーを用いて解析し、既存の遺伝子情報、統計学的手法を用いて、HCV感染特異的に発現が変化するlncRNA群26個を同定した。さらにこれらlncRNAに対するsiRNAを作成し、HCV複製細胞に投与したところ、4種のlncRNAに対するsiRNAの投与によりHCV複製の抑制を認めた。この中で既にlncRNAのデータベースに登録されているlncRNA-Hに着目して、ペグインターフェロン・リバビリン療法を施行された165例の治療前肝生検組織を用いて肝内のlncRNA-Hの発現量を測定した。またlncRNA-HのHCV複製における影響をHCVの培養細胞系を用いて詳細に解析した。
結果と考察
1)Huh7.5細胞にHJ3-5ウイルスをMOI0.01-1で感染させ、lncRNA-H発現量を定量PCR法で測定した。その結果、時間・MOI依存性のlncRNA-Hの発現誘導を認めた。
2)lncRNA-Hに対するsiRNAを3種類作成し、ヒト肝癌細胞株(FT3-7細胞)にそれぞれ導入したところ、全てのsiRNA導入でlncRNA-Hの発現抑制を認めた。さらにHJ3-5複製FT3-7細胞においてlncRNA-H に対する3種類のsiRNAを投与したところ、いずれのsiRNAによるlncRNA-Hの発現抑制においてもHCV複製の抑制を認めた。
3)異なるHCVゲノタイプであるIa H77S株、Ib N株(いずれもチンパンジー感染クローン)に対してもlncRNA-Hの発現を抑制することで、HCV複製を抑制した。
4)ペグインターフェロンとリバビリン療法を施行されたC型慢性患者165例(IL28Bゲノタイプ、major 119例、minor 46例)の治療前肝生検組織由来RNAを用いてlncRNA-H発現量を定量PCR法により測定した。lncRNA-H量をIL28B majorとminor群で比較したところ、minor群で有意に発現が高値であった。
5)lncRNA-HはHCV複製により発現が促進され、またその発現抑制によりHCV複製の抑制を認めたことから、抗HCV療法の新規治療標的と考えられた。
6)肝内のlncRNA-Hの発現量は、インターフェロン療法難治性であるIL28B minor群において、感受性であるmajor群より高値あった。lncRNA-Hは、インターフェロン治療抵抗性に関与している可能性が示唆された。またIL28Bゲノタイプ同様にインターフェロン療法の治療効果予測に有用である可能性が示唆された。
結論
HCV感染培養細胞由来RNAを次世代シークエンサーを用いて解析し、HCV感染を制御している可能性が考えられるlncRNA群を4種類抽出した。そのうち既にlncRNAとしてデータベースに登録され肝内での発現も報告されているlncRNA-Hに着目して解析を行った。その結果HCV感染培養細胞系を用いた解析から、lncRNA-Hの発現はHCV感染により誘導され、さらにlncRNA-Hの発現抑制によりHCVの複製も抑制された。さらにlncRNA-Hの肝内発現量は、インターフェロン療法難治性であるIL28B minor群において、感受性であるmajor群より高値であった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201320030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,400,000円
(2)補助金確定額
10,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,222,964円
人件費・謝金 0円
旅費 592,520円
その他 184,516円
間接経費 2,400,000円
合計 10,400,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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