C型肝炎の新規診断法や新規治療法を開発するためのゲノムワイド関連解析の手法を用いた宿主因子の解析に関する研究

文献情報

文献番号
201320018A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎の新規診断法や新規治療法を開発するためのゲノムワイド関連解析の手法を用いた宿主因子の解析に関する研究
課題番号
H25-肝炎-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
田中 靖人(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永 勝士(東京大学大学院医学系研究科)
  • 本多 政夫(金沢大学医薬保健研究域保健学系 )
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院)
  • 渡辺 久剛(山形大学医学部)
  • 宇都宮 徹(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 中島 淳(横浜市立大学附属病院消化器内科)
  • 近藤 泰輝(東北大学病院 消化器内科)
  • 中馬 誠(北海道大学大学院医学研究科)
  • 小森 敦正(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター)
  • 池尾 一穂(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立遺伝学研究所生命情報研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HCV感染に対する自然経過、新規薬剤に対する応答性、病態進展(特に発癌)に関わる宿主要因を従来のSNP-/CNV(コピー数多型)-based GWASに加えて、次世代シークエンスを用いたSequencing-based GWASにより同定する。遺伝要因のみならず、HCV感染各ステージにおけるエピジェネティックな変化やmicroRNAの関与を解析し、新規診断法・治療法の開発を目標とする。
研究方法
ヒト遺伝子解析倫理委員会の規定に基づいて、(1)検体及び付帯情報の収集を継続(全国38施設から5,000検体以上)。(2)国立がん研究センター多目的コホート研究グループとの共同研究により肝発癌例と年齢をマッチさせたコントロール群の検体収集。(3) IL28B/ITPA SNPsをTaqMan法により測定、結果の開示。(4)ヒトSNPsを用いたゲノムワイド関連解析:①好中球減少、うつ病などIFN副作用及び扁平苔癬に関連する遺伝要因探索。②住民/患者コホートにおける病態進展に関わる遺伝因子の探索。③遺伝子発現解析によるIFN-lambdaシグナルの解析。④肝線維化進展に関連する因子の検討。(5)エピゲノム解析を含むオミックス解析:①Infinium HumanMethylation450 BeadChip Kit (Illumina) を用いた網羅的メチル化解析及びmicro 3D-Gene ® miRNA Oligo Chip (Toray)を用いた網羅的miRNA解析を実施、遺伝子発現情報とともに統合解析。②キメラマウスを用いた機能解析。
結果と考察
(1)SNP-/CNV-based GWAS:Affy 6.0、AxiomASI、Illumina Omni 2.5Mを合わせた300万SNP/CNVのimputationを高い精度で行える環境にある。1,000人ゲノムプロジェクトの日本人データおよび自らのチームで獲得した全ゲノムシークエンス解析データを追加。肝疾患患者に関しても1,000人以上のタイピングが終了し、CNVのデータも取得。(2)ゲノムワイド関連解析:①HCV自然治癒にIL28B以外にHLA-DQが関与。②好中球減少、うつ病などIFNによる副作用及び扁平苔癬に関連する遺伝子要因を同定。③肝癌関連要因:年齢あるいは感染期間など背景を揃えた複数の住民コホート(山形県コホート、国がん多目的コホート)や大規模病院コホートでの検討。また、IFN著効後の肝発癌に関連する遺伝要因:年齢・性別をマッチさせたCase-control studyを開始。④IL28Bマイナーでは、IFN-λ4と肝内ISGsが有意に相関し、Wntシグナル・リガンドであるWnt5Aの発現亢進。⑤PNPLA3遺伝子は、NASHのみならずC型肝炎線維化進展に関与。(3)オミックス解析:①肝硬変のない非B非C型肝癌部と非癌部のオミックス解析(メチル化、miRNA)を開始した。②HCV感染キメラマウス:NK細胞由来のサイトカイン誘導、ROS産生、メチル化蓄積→病態進展に寄与。③HCV感染各ステージにおけるPBMC中のmRNA発現パターン、血清中エクソソーム内miRNA解析。④次世代型シークエンサーを代表とする大規模配列データの解析に必要となる解析フローを整備・検証を進めた。
結論
IL28B/ITPA SNPsに基づいた個別化医療を実現した。さらに、発癌母地としての非癌部肝組織を対象としてHCV感染病態をより細分化しIL28B SNP以外の宿主因子探索を行うことにより、新たな治療標的を同定し、肝病態進展の新規診断法や治療法を確立する。すなわち、高齢者の多いC型肝炎患者に対して、遺伝情報に基づいた個別化医療を目指すことで、社会福祉に貢献できる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201320018Z