B型肝炎の核酸アナログ薬治療におけるdrug freeを目指したインターフェロン治療の有用性に関する研究

文献情報

文献番号
201320008A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎の核酸アナログ薬治療におけるdrug freeを目指したインターフェロン治療の有用性に関する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
田中 榮司(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 新海 登(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 平松 直樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 鈴木 義之(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
  • 八橋 弘(国立病院機構 長崎医療センター)
  • 西口 修平(兵庫医科大学 内科学)
  • 柘植 雅貴(広島大学 自然科学研究支援開発センター)
  • 神田 達郎(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 姜 貞憲(手稲渓仁会病院)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院)
  • 向坂 彰太郎(福岡大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 核酸アナログ薬(NA薬)を単純中止できる症例は少なく、同薬の効率的な中止には積極的な治療介入が必要と考えられた。本研究班ではNA薬の中止に際しインターフェロン(IFN)を併用することの有用性およびその効果予測因子を検討することを目的とする。
研究方法
 本班の前向き共同研究である「B型慢性肝炎の治療における、NA薬中止時のPEG-IFNα2a投与に関する有効性の検討」、通称RESET研究(Release from NAs with Sequential Therapy)は初年度にプロトコールを作成しUMIN登録を行った。プロトコールは大きくA群とB群に分かれ、A群ではNA薬中止直後にPeg-IFNを投与し、B群では中止後肝炎が再燃した時点でPeg-IFNの投与(B-1)かNA薬の再投与(B-2)を行う。このプロトコールの主要な部分はA群であり、ここでPeg-IFNをシークエンシャルに使用した場合の治療効果とその予測因子を検討する。IFNは全てPeg-IFNα2aを使用し、基本的に180μg/日で開始し、48週間投与とした。
 RESET研究の登録は2012年2月1日に開始し、2013年12月31日に終了した。合計149例が登録され、A群が106例、B群が43例であった。本年度は2013年10月の時点でデータが集積されたA群の96例の中間解析を行った。中間解析では観察期間が短いため、主にHBV DNA量、HBs抗原量、HBcr抗原量の推移を中心に解析を行った。
結果と考察
 HBV DNA量は、NA薬中止後に約2/3の症例で有意に上昇した。この中には、Peg-IFN投与中に上昇する症例と投与終了後に上昇する症例があった。経過中HBV DNA量が5.7 log copes/mlを超えるような症例は最終的にHBV DNAの安定化は難しいと考えられた。HBs抗原量とHBcr抗原量はPeg-IFN投与中に緩徐な低下傾向を示したがその傾向はHBs抗原量で強かった。NA薬中止基準で用いたHBs抗原量とHBcr抗原量のカテゴリーを用いると、HBs抗原量は低値群が20%近く増加し、その分高値群の割合が低下した。これに対しHBcr抗原量では明らかな変化はなかった。ウイルス抗原量からNA薬単純中止後の再燃リスクを推定すると、低リスク群の増加はないが、中リスク群が20%近く増加し、その分、高リスク群が減少した。このリスク群改善効果はNA薬単独では得られにくく、シークエンシャル治療の効果であると考えられた。
 Peg-IFN治療終了時にHBs抗原量が1.9 log IU/ml未満に低下する症例をHBs抗原量低下群とし、この低下群を予測する因子を検討した。多変量解析では、NA中止時のHBs抗原量低値、ETVの非使用、Peg-IFN治療中のALT高値が有意な因子であった。
Peg-IFNαの安全性評価では中等度以上の副作用が約10%にみられたが、これまでの報告と明らかな差はなかった。
 前向き共同研究であるRESET研究は順調に進み、その登録を終了した。Peg-IFN投与中のHBs抗原量とHBcr抗原量の低下傾向には差があり、両抗原間で質的な差があることが示唆された。シークエンシャル治療によりNA薬単純中止のリスク群が改善する可能性が示唆された。多変量解析で算出された、Peg-IFN治療終了時にHBs抗原量が1.9 log IU/ml未満に低下することに寄与する3因子の中で、ETVの非使用に関しては、その機序は不明であり今後の課題であると考えられた。
 今回は観察期間が短かったため最終的な効果判定はできなかった。このため、今後、引き続き登録症例の経過観察を行いPeg-IFN投与終了後の効果判定を行う。さらに、HBV RNA、サイトカインなどの測定やGWAS解析を行い、治療効果予測因子を明らかにする。
結論
1. 前向き共同研究であるRESET研究の登録症例数は順調に増え、登録を終了した2013年12月31日の時点でA群106例、B群43例となった。
2. Peg-IFN投与中、HBs抗原量とHBcr抗原量は緩徐な低下傾向を示した。この低下傾向はHBs抗原で強く、両抗原間で質的な差があることから、Peg-IFN治療効果の予測や判定に両者の併用が有用である可能性が示された。また、Peg-IFN投与による中リスク群の増加と高リスク群の減少はシークエンシャル治療の効果と考えられた。
3. Peg-IFN投与終了時にHBs抗原量が低下することを予測する因子としては、NA薬中止時のHBs抗原量低値、ETV以外のNA薬使用、Peg-IFNα投与中のALT高値が有意の因子であった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201320008Z