文献情報
文献番号
201320007A
報告書区分
総括
研究課題名
経口感染によるウイルス性肝炎(A型及びE型)の感染防止、病態解明、遺伝的多様性及び治療に関する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 宏明(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター)
- 中山 伸朗(埼玉医科大学)
- 新井 雅裕(東芝病院)
- 横須賀 收(千葉大学)
- 石井 孝司(国立感染症研究所)
- 鈴木 一幸(岩手医科大学)
- 日野 学(日本赤十字社)
- 姜 貞憲(手稲渓仁会病院)
- 李 天成(国立感染症研究所)
- 大河内信弘(筑波大学医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
33,500,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
経口感染によるウイルス性肝炎(A型及びE型)の発生実態の把握と臨床病態の解明、起因ウイルスの遺伝的多様性に関する理解の深化、感染源・感染経路の解明、診断法の改良及び治療法・予防法の確立を目標とする。
研究方法
発生動向と重症化リスク因子の調査、感染実態と臨床病態の調査、A型肝炎ウイルス(HAV)株並びにE型肝炎ウイルス(HEV)株のゲノム塩基配列の蒐集と解析、HEV宿主動物調査、食品媒介感染の可能性の調査、慢性HEV感染と肝外病変の調査、HEV増殖機構解明、診断法の改良、抗ウイルス剤、ワクチン開発のための予備的検討などによる。
結果と考察
A型肝炎については、1)散発発生が主体で、患者数は低値横ばいであったが、重症化率は上昇傾向を示し、内科的治療による救命率が低下していること、2)アジアの常在・流行地域からのHAVの流入・定着が懸念されること、3) A型肝炎ワクチンが小児に適応拡大されたこともあり、渡航前の接種の必要性を広く啓発・発信するべきであること、また4)LA/SSBなどの宿主因子も治療のターゲットになりうること、などが示された。E型肝炎については、1)E型肝炎抗体診断薬の保険収載による影響と推測されるが、2013年の届け出件数は2011年に比べて倍増し、A型肝炎とほぼ同数であったこと、2)合計216例の国内感染E型肝炎症例の解析によって、4型HEVが3型HEVに比べて重症化と密接な関係にあることが確かめられ、4型HEVによる重症化率は北海道株と非北海道株とで差が見られないこと、3)北海道株とは別系統の4型HEVが野生イノシシによって維持され、東海4県に跨って広範囲に分布し、感染拡大が懸念される状況にあること、4)三重県ではヨーロッパ型(3e型)HEV株によるE型肝炎例が多く認められるが、そのHEV株が県内産ブタから分離されたこと、5)わが国でも肝移植患者での慢性HEV感染や、肝外病変としてのGuillain-Barré syndromeを併発したE型肝炎患者が認められたこと、6) カニクイザルへの接種実験によって、培養細胞由来HEVが不活化ワクチンとして応用可能であることが示唆されたこと、7)HEVが細胞内の多胞体[multivesicular body (MVB)]内腔へと出芽し、エクソソーム分泌経路を介して細胞外に放出されるというHEVの放出機構が明らかになったこと、8) 培養系に於いて、IFNα、リバビリン、アマンタジンの他、IFNλ1-3、2’-C-methylcytidineは単剤投与でHEVの増殖を濃度依存性に抑制し、2剤併用はさらに有効であることなど、病態解明、治療法の確立や感染予防対策の構築に資する多くの成果が班員及び班友の協力によって得られた。これらの研究成果は今後の肝炎医療の水準の向上を目指した厚生労働行政施策の推進に資するものと考えられる。
結論
肝炎発生の動向把握に加え、病態解明、感染予防対策の構築や治療法確立に資する多くの成果を班員及び班友の協力によって得ることができた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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