「エイズ関連悪性腫瘍誘発機序の理解と抗体療法の有効性評価」

文献情報

文献番号
201319036A
報告書区分
総括
研究課題名
「エイズ関連悪性腫瘍誘発機序の理解と抗体療法の有効性評価」
課題番号
H25-エイズ-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
石坂 幸人(国立国際医療センター 難治性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 志村まり(国立国際医療研究センター 難治性疾患研究部)
  • 徳永研三(国立感染症研究所 感染病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
35,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 Antiretroviral therapy (ART療法)が導入され、HIV-1(以下HIV)感染者の予後は著しく改善されたが、悪性腫瘍の発症率は依然高く、現在も死亡原因の約30%を占めているが、その要因は不明であり、発がん阻止に向けた戦略も全く構築できていない。
 申請者らは、DNAメチル化アレイ解析を行い、その後の階層的クラスター解析から、HIV関連リンパ腫と非感染リンパ腫ではDNAメチル化パターンが異なることを見いだした。即ち、HIV関連リンパ腫と非HIVリンパ腫が異なる分子機序で発症している可能性が考えられる。本課題では、癌化に関与する因子を明らかにし、研究期間内に当該分子に対するヒト化単クローン抗体を作成する。
研究方法
a. ウイルス感染に伴うメチル化変化: 感染実験に使用するウイルスとして、野生型ウイルスと三種類の変異型うウイルス、即ち、Vpr、VpuおよびNef変異型ウイルスを作成し、Tリンパ球に感染させ、B細胞と共培養後、それぞれの全ゲノムを対象としたDNAメチル化解析を行った。
b.患者血中に存在する癌化誘導因子の把握と活性評価:Tat、NefおよびVprについて、RTP誘導活性評価するとともに、HIV感染者血清中のRTP活性の有無とVprに対する単クローン抗体(8D1)による活性阻害効果を検証した。
c.ヒト化抗体の作成:血中Vpr濃度の把握するためのELISA用抗体とVpr作用に対する阻害因子として機能する2種類の抗体作成をニワトリの系で開始した。

結果と考察
a. ウイルス感染に伴うメチル化変化:ウイルス感染に伴ってT細胞と、感染T細胞と共培養した未分化B細胞において、DNAメチル化パターンの変動が認められ、感染T細胞からの作用によってB細胞の形質が変化する可能性が示唆された。
b.患血中に存在するゲノム不安定性誘導活性の把握:Vprに加えて、患者血中に存在するとされるTatおよびNef蛋白質を用いてゲノム不安定性誘導活性であるレトロトランスポジション誘導能(RTP誘導能)を評価した。その結果、Vprが最も強い活性を示した。一方、未治療患者血清15例について、RTP誘導活性を調べたところ、6例が陽性所見を示し、全例がVprに対する単クローン抗体で阻害された。
結論
HIV-1感染T細胞との共培養で、B細胞のDNAメチル化変動がゲノムワイドに認められた。B細胞に作用するトランス因子がウイルス感染によって産生される可能性が示唆される。今後、ターゲットを同定し、hypomethylation傾向とゲノム不安定性との関連、メチル化変動の原因、及び、分子機序を解明する。
 患者血中に検出されるRTP誘導能の多くがVpr作用に起因する可能性が示唆された。引き続き、Vprに対するヒト化単クローン抗体の作成を試みる。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201319036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,525,000円
(2)補助金確定額
4,525,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 26,096,108円
人件費・謝金 2,673,291円
旅費 408,140円
その他 6,322,562円
間接経費 9,750,000円
合計 45,250,101円

備考

備考
銀行利息

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-