多剤耐性HIV変異株に強力で高い中枢神経系透過性を有する新規抗HIV薬の開発

文献情報

文献番号
201319034A
報告書区分
総括
研究課題名
多剤耐性HIV変異株に強力で高い中枢神経系透過性を有する新規抗HIV薬の開発
課題番号
H25-エイズ-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
満屋 裕明((独)国立国際医療研究センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 慎一((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 宮川 寿一(熊本大学医学部附属病院感染免疫診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染症とAIDSに対する多剤併用療法 (ART) は長足の進歩を遂げ、HIV感染者とAIDS発症者の余命は飛躍的に伸長した。一方、長期のARTに伴う副作用や薬剤耐性変異株の出現はこれまで以上に大きな問題となった。特に、感染者・発症者の高齢化に伴うHIV関連神経認知障害 (HAND) や人格障害発現といったHIV関連中枢神経系 (CNS) 障害への対策は急務である。本研究は、(1) HIVの薬剤耐性獲得に高い抵抗性を示し良好なCNS透過性を有する治療薬の開発 (申請者 満屋および宮川担当) と (2) HIV関連CNS障害の診断法の確立 (岡担当)、を目的とする。本研究では、開発した薬剤の企業への早期導出を要に応じて図るが、申請者らによる前臨床・早期臨床試験(第1相・2a相)の国内での推進を前提とする。
研究方法
MTTアッセイやp24アッセイにより薬剤の抗ウィルス活性を測定、有望な化合物に関しては試験管内薬剤耐性誘導試験及び結晶構造解析を行い、HIV-1の薬剤耐性獲得への抵抗性、薬剤とHIVプロテアーゼ (PR) との相互作用形式を明らかにした。また化合物の脳移行性を調べる為に、脳毛細血管内皮細胞(サル由来)、血管周皮細胞および星状神経膠細胞(ラット由来)を用いたin vitro BBB再構築システムを用いた。他方、ブロック拠点病院を中心とした全国12施設に対し、HAND診断のためにどの様な神経心理テストを使用しているのかアンケートを行うと共に、文献検索を行い、各認知ドメインの使用頻度が高い検査を調べた。その結果をふまえ、国内で施行な検査であり、患者への負担や検査施行時間などを主な選定基準として協議を行い、7つの認知ドメインをカバーできる神経心理検査の選定を行った。
結果と考察
米国Purdue UniversityのDr. Ghoshグループとの共同研究によりARTに使用されるPR阻害剤のほとんどに強い抵抗性を示す多剤耐性HIV-1株(HIVDRVRP51)に対しても阻害効果を示す強力な化合物GRL-085-11Aの同定に成功、HIVDRVRP51に由来するDRV耐性プロテアーゼ (PRDRVRP51)との複合体の結晶構造解析を行い、GRL-085-11Aが耐性株に対して効果を発揮する機構を解明した。更に、非常に良好なCNS移行性を有し得る5種類の新規CNS標的化合物群を同定した。これらの新規化合物は既存の薬剤に比して抗ウィルス活性が高く、細胞毒性が低い事からHANDの有望な予防/治療薬候補と成り得る可能性を示す。既にこれら化合物に対して構造の最適化を行い、より有望な化合物を複数同定している事から、前臨床・早期臨床試験に用いられる候補化合物は遅くとも次年度中期までに確定すると強く期待される。
神経心理検査 の選定 (研究方法参照) を行った後、神経心理検査を精力的に行っている全国18施設の心理士による検討会及び、琉球大学の富永教授の監修を経て、今後日本で行うHAND診断のための神経心理コアバッテリーとすることに決定した。今後は、心理士の研修などを行い、検査方法を標準化するとともに、画像や血液検査などでHANDの診断を補完する検査を研究、心理士がいない施設においてもHANDの診断ができるような診断補助法の作成が必要となる。
結論
創薬研究に関しては、DRVに対しても耐性を示す多剤耐性HIVに対して効果を発揮する新規化合物の同定の成功し、その化合物とPR変異体の複合体を結晶化する事に成功した。更に、強力な抗HIV-1活性と良好なCNS移行性を発揮する新規抗HIV剤のデザイン・合成・評価を行った。今後も結晶構造解析等の研究手法を用いて薬剤の構造の最適化を継続し、動物実験および臨床試験に移行し得る化合物の開発を進める。
臨床面においては、HANDの診断のために行う日本での共通の心理検査バッテリーが決定できたことから、今年度設定した目標を100%達成できたといえる。本年度の成果をもとに、今後日本におけるHANDの疫学等が明らかになると期待できる。また、中枢神経系透過性を有する新規抗HIV薬を開発する時の多施設共同臨床試験時に、共通の物差しでHANDの評価が行えるようになった。今後は心理士の研修、診断補助法の作成を通してより洗練された診断法を作製する。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201319034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
58,500,000円
(2)補助金確定額
58,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 41,868,564円
人件費・謝金 1,541,396円
旅費 1,147,650円
その他 442,390円
間接経費 13,500,000円
合計 58,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-06-03
更新日
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