HIV母子感染児における神経学的予後についての研究

文献情報

文献番号
201319032A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV母子感染児における神経学的予後についての研究
課題番号
H25-エイズ-若手-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
田中 瑞恵(国立国際医療研究センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 敏晴(山梨英和大学 人間文化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,806,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、HIV母子感染児に対しカルテによる後方視的検討および新たにMRI検査・神経心理検査を施行し、わが国のHIV母子感染児の詳細な神経学的予後を明らかにすることを目的とする。
研究方法
 本研究は、後ろ向き観察研究であり、2010年末までに報告されているHIV感染児は51例のうち、死亡例や経過観察継続できない例、研究承諾が得られない症例の存在を考え、30例を目標とする。研究方法であるが、1)平成25年度に厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「HIV感染妊婦とその出生児の調査・解析および診療・支援体制の整備に関する総合的研究」(以下母子班)と協働で対象選定を行う。母子班より本研究で行う調査に協力可能な該当施設についての情報提供を受け、再度、調査依頼を実施する。2)当院および調査可能と返答のあった施設で必要に応じて倫理委員会の申請を行う。3)患者同意が得られた場合は、以下に示す評価項目について検討し、HIV感染児の神経学的予後について様々な因子を検討・解析する。4)分担班において、成人HANDを踏まえ、知能だけでなく認知機能も評価出来る神経心理検査バッテリーの選定を行い、実施する。
 研究体制として、調査可能となった施設において、各施設の研究協力者は後方視的にカルテより成長・発達、合併症等について評価および、MRI、神経心理検査を実施する。研究協力者より、提出された情報について研究代表者は連結可能匿名化し、情報を検討・解析する。検討・解析された事項については研究代表者を通じて研究協力者に報告する。
 本研究は「疫学研究に関する倫理指針:平成20年12月1日一部改正」及びヘルシンキ宣言(2008年改訂)を遵守して実施する。
結果と考察
 本研究計画は、当院での倫理委員会において平成25年7月18日付で承認を得た。承認後に、研究を開始した。対象の選定については、母子班と協働し行った。具体的には、母子班より本課題で行う調査に協力可能な該当施設についての情報提供を受けた。協力可能な該当施設は当院を含む12施設であった。12施設で診療経験のある対象者数は36例であったが、匿名での情報提供であるため、重複の可能性もあり、平成25年度内に、再度該当施設に調査依頼すると共に、対象の診療状況の追跡調査を行い、対象者の確定をする予定である。また、本年度の調査実施に向け、データベースの作成の基となるCRFの作成を当院臨床研究センターと協働し作成中であり、平成25年度内に完成する予定である。
 分担班では、神経心理学を専門とする2名の研究者と協議し、神経心理学的評価に関して本邦での標準値の少ないなかでも信頼性の高い検査の選定を行った。同時に、現在、成人を対象としたHAND研究において、各医療機関で共通する神経心理検査バッテリーを策定しているが、その検討会(2013年11月20日 熊本市民会館)に参加し、意見交換を諮ることで、17歳以上の母子感染児に行う心理検査バッテリーとの共通化を可能な限り図った。
 2010年末までに、母子班の報告書で報告されている感染児は51例である。しかし、本研究に対して情報提供が可能であったのは36例であった。小児HIV感染症は、希少疾患であり、またプライバシー保護要求の高い疾患であることから、診療している病院は公にはされておらず、情報保護の観点から母子班への情報提供が難しい施設もあると考えられる。また、希少疾患であるため、拠点病院であっても、継続的に複数人の感染児の診療を行っている施設は数少なく、経年と共に診療実績が不明となっている可能性がある。今回は、母子班の分担班(外川班)が、今までの診療経験について改めて調査した情報の提供を受けたため、36例と過小の対象数となったものと思われる。更に、情報提供を受けた症例は匿名であり、重複の可能性もあるため、今後の追跡調査により対象数は更に減少する可能性もある。対象の重複は、本研究のバイアスとなるため、重複のない対象選定が重要となる。
 分担班では、神経心理学的評価に関して本邦での標準値の少ないなかでも信頼性の高い検査の選定を行った。成人HANDを対象とした研究においても、神経心理検査バッテリーの構築が急がれている。先行して研究されている成人領域でも、今なお、神経心理検査バッテリーが策定されている状況である。このような状況下で、通常の知能検査のみならず、成人HAND研究の神経心理バッテリーとの共通性を可能な限り図った小児に対する神経心理検査バッテリーの構築は容易ではなかった。
結論
 HIV母子感染児における神経学的予後についての研究を、当院の倫理委員会の承認を受けた上で開始した。本年度は、研究計画の決定及び、準備を行った。対象の選定において当初の予定より時間を要しているが、概ね予定通りに遂行出来た。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201319032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,806,000円
(2)補助金確定額
1,806,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 436,115円
人件費・謝金 362,400円
旅費 370,329円
その他 637,165円
間接経費 0円
合計 1,806,009円

備考

備考
差額の9円は銀行利子である。

公開日・更新日

公開日
2014-06-03
更新日
-