HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究

文献情報

文献番号
201319027A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究
課題番号
H24-エイズ-指定-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター)
  • 久慈 直昭(東京医科大学産科婦人科学講座)
  • 鯉渕 智彦(東京大学医科学研究所先端医療研究センター)
  • 大北 全俊(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 吉村 和久(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 仲倉 高広(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床心理室)
  • 廣常 秀人(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 精神科)
  • 秋葉 隆(東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 血液浄化療法科)
  • 横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター感染症内科)
  • 高田 清式(愛媛大学医学部付属病院)
  • 佐保 美奈子 (井端 美奈子)(公立大学法人大阪府立大学大学院看護学研究科)
  • 井上 洋士(放送大学教養学部)
  • 藤原 良次(特定非営利活動法人りょうちゃんず)
  • 桜井 健司(特定非営利活動法人HIVと人権・情報センター)
  • 山崎 厚司(公益財団法人エイズ予防財団)
  • 小西 加保留(関西学院大学人間福祉学部)
  • 山内 哲也(社会福祉法人武蔵野会八王子生活実習所)
  • 下司 有加(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター看護部)
  • 村井 俊哉(京都大学精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
74,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 大北全俊 大阪大学文学研究科(平成25年4月1日~平成25年9月30日)→大阪大学大学院医学系研究科(平成25年10月1日以降) 研究分担者 久慈直昭 慶應義塾大学医学部産婦人科(平成25年4月1日~平成25年12月31日)→東京医科大学産科婦人科学講座(平成26年1月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染症はHAARTによって医学的管理ができる慢性疾患となったがHIV感染症の治療の分野で克服すべき課題が山積している。本研究ではH23年度に改定されたエイズ予防指針見直し作業班の報告に基づき、A. 治療・合併症、B.地域の医療の質の向上、C.陽性者支援のための地域連携、D.長期療養支援に大別し、課題の抽出と解決方法の提示を目的とし最終年度に対策と提言を目指す。
研究方法
A
1.残存プロウイルス量の長期観察および早期免疫低下関連因子の解析
2.精液中抗HIV剤等の測定、洗浄精液を用いた不妊治療の事業化の検討
3.唾液のサイトカインや口腔病原微生物量測定と口腔症状の関連性の解明
4.神経心理検査陽性者のMRI画像の検討
5.海外ジャーナル等の文献調査の実施
6.国内外の知見を基にガイドライン改訂
B
1.HIV陽性者の神経心理学的障害出現頻度調査継続、スクリーニング検査の開発
2.メンタルヘルス調査継続と課題抽出、AIDS精神疾患ハンドブック和訳
3.透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル改訂作業推進
4.愛知県でのICTによるHIV病・病診連携システム構築と評価
5.看護研修会の実施と養護教諭向け教材開発
6.HIV陽性者のセクシャルヘルスのウェブ調査とスキルアップコース開発
C
1.薬害HIV感染被害者の心理的現状把握のためのインタビュー調査
2.保健所等で発見された陽性者の受診行動の阻害因子と促進因子の解明、マニュアル改訂
3.NGOへのアンケート調査、NGO指導者研修の評価
D
1.精神疾患等の障碍陽性者の生活課題を解明
2.福祉施設の受入マニュアルを用いた研修会実施、効果的研修プログラム検討等
3.訪問看護研修会の実施と介護・福祉職を対象とした研修会実施
4.地方の診療モデルとして愛媛県と四国のHIV診療の実態調査
結果と考察
A1.今年度、横断的調査68例、縦断的調査30例について測定を終了。横断的調査では急性感染期治療例は残存プロウイルス量が低値を示した。2.密度勾配溶液についてはパーコールが市販密度勾配溶液にその洗浄効率において明らかに優る結果であった。3.HIV陽性者の菌定量では唾液中Candida spp.が207.1±424.4、対照者が2.3±3.3と約100倍多かった。S. mutansの菌数は対照者の約10倍多かった。4.国内外文献調査を行い研究実施施設の倫理委員会で承認を得た。5.昨年度抽出した主要トピックそれぞれの議論を精査し、議論の枠組みの検討を行った。6.国内外の知見と海外のガイドラインを参考に年度内改訂。
B1.206名に神経心理学的検査を実施し解析中。有症状HIV陽性者はHAND(疑)のみならず、アルツハイマーなど皮質性神経心理学的障害など多岐に亘っていた。2.Handbook of AIDS Psychiatryの一部を粗訳。298例の分析結果では1年後のメンタルヘルスは改善していたが約半数に問題があり不安はむしろ悪化していた。3.日本透析医学会、透析医会、透析看護学会、臨床工学技士会の各理事会に諮り改訂参加の承認を得て草稿作成に入った。4.基幹ネットワーク4カ所目の名古屋大学医学部附属病院で利用契約審査中。5.HIVサポートリーダー養成研修に累計115名修了。研究班作成DVD教材を使用し高校に出前講義、養護教諭向けDVDを企画製作。6.ウェブ調査参加者926人の中間集計「性生活の相談ができない」4割、「HIVの話を誰ともできない」2割であった。
C1.調査した10名全員に何らかの心理的課題が見られたがカウンセリング経験有りは3名であった。2.検査時の要確認及び陽性告知後カウンセリングにおける受検者30名の精神心理状況と聞き取り結果につき分析。マニュアル改訂作業中。3.アンケート調査では中核拠点病院52、自治体および保健所270から回答を得た。NGO指導者研修会の企画・運営につき参加NGOの意見も含め検討を行った。
D1.MSWによる経験報告は多くないが、チーム体制が成熟した環境では有効に機能する可能性が高かった。2.福祉関係者向けエイズ啓発研修を東京など5県域単位の研修を含め総数20回の研修開催。3.研修参加者は合計176名。研修参加でHIV陽性者支援の意識変化「あり」が78%で、受け入れ可能40%、要準備53%であった。4.HIV診療および福祉連携の実態および問題点の把握、今後のHIV患者の受入について検討を行った。その他、携帯を用いた服薬支援ツール改良、検査予約システム開発、HIV治療の薬剤情報提供ホームページ開発を行った。
結論
HIV感染症の治療と関連分野(治療・合併症、地域医療の質の向上、陽性者支援のための地域連携、長期療養支援)で課題を抽出し、ほぼ計画通りに研究を実施できた。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201319027Z