HIV感染症とその合併症に対する新規治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201319020A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症とその合併症に対する新規治療法の開発に関する研究
課題番号
H25-エイズ-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一 (独立行政法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 潟永 博之(独立行政法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター )
  • 塚田 訓久(独立行政法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
13,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染症とその合併症に対する新規治療法の開発を目的として、次の3つの研究を行った。①HIV感染症に対する新しい治療法開発に関する研究(SPARE試験)、②HIV/HCV重複感染者の肝硬変に対する自己骨髄を用いた肝再生療法、③d4Tを含んだ治療の副作用としての顔面のやせ(Facial Lipoatrophy: FL)に対する治療。
研究方法
①SPARE試験:全国12施設にて実施。本研究の概要は、カレトラ+ツルバダ服用中の安定期の患者で、無作為に同じ治療の継続群とダルナビル/リトナビル+ラルテグラビル群に割付け、48週時点での腎機能の回復を1次評価項目として検討、2次評価項目として、安定期の患者においてNRTIを含まない治療の有効性についても検討する。この治療の安全性、有効性を96週まで経過観察する。②肝再生療法:全身麻酔下に両腸骨より骨髄液約400mLを採取し、血球分離装置を用いて単核球分離を行い、得られた細胞分画を経静脈的に投与する。定期的な経過観察により安全性と有効性を判定する。③FLに対する治療法開発: HIV関連顔面脂肪萎縮に対する形成外科的手法を用いた修復術の安全性と有効性を検索する。腹部、腰背部、大腿部などの自家脂肪が利用できる症例においては、全身麻酔下に自家脂肪移植術を行う(A群)。それ以外の症例においては、局所麻酔下に架橋ヒアルロン酸注射剤(Restylane SubQ ®)注入術を行う(B群)。予定登録数は10例で、治療後約48週間を観察期間とし、安全性と有効性を検討する。
結果と考察
SPARE試験:ラルテグラビル・ダルナビルのNRTIスペアリングレジメンは、一次評価項目の48週時点でのテノホビル中止による腎機能の回復は認めなかった。しかし、96週までの観察において、治療継続例ではウイルス抑制も持続していた。治療安定期の患者において、NRTIを含まない治療法が可能となれば、安全性を重視しなければならない長期治療の観点からも意義は大きい。②肝再生療法:平成24年度までに実施した4例は、すべて経過観察期間を終えた。平成25年4月16日に第5例の自己骨髄細胞採取・投与処置を施行した。前年度までに処置を終えた例も含め全例の経過を慎重に観察したが、研究参加に関連すると考えられる重篤な有害事象は確認されなかった。症例数が目標に達しておらず本療法の有効性に関しては判断できない状態であるが、血友病・HIV感染症を合併する肝硬変例においても本処置を安全に遂行可能であることはある程度確立できたと考えている。③FLに対する治療法開発:本研究を開始するにあたり、形成外科の専門家2名と綿密な検討を行った。その結果、第一段階のPLLAとヒアルロン酸の比較は、物質の差よりも術者のテクニックの差の方が大きく、RCTにはなじまないという結論になった。予備的な検討から、対象患者には、極度に脂肪組織が退行し脂肪吸引の手技自体が危険を伴う可能性が高い方の含まれるため、この様な場合には、ヒアルロン酸を注入する方法も選択できるようにした。
結論
安定期の患者においては、NRTIを使用しない治療法も十分有効であることがわかった。自己骨髄細胞投与療法の有効性に関しては、今後さらに症例を集積して検討する必要がある。脂肪注入療法は、次年度に期待したい。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201319020Z