地域においてHIV陽性者等のメンタルヘルスを支援する研究

文献情報

文献番号
201319019A
報告書区分
総括
研究課題名
地域においてHIV陽性者等のメンタルヘルスを支援する研究
課題番号
H24-エイズ-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
樽井 正義(特定非営利活動法人ぷれいす東京 研究事業/支援・相談サービス)
研究分担者(所属機関)
  • 生島 嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京 研究事業/支援・相談サービス)
  • 肥田 明日香(医療法人社団アパリ アパリ・クリニック)
  • 若林 チヒロ(埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科)
  • 大木 幸子(杏林大学保健学部 看護学科 地域看護学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,869,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、HIV感染症と薬物使用を含むメンタルヘルスに関してその現状と課題を明らかにし、必要な対応を検討することにより、HIV陽性者と薬物使用者を支援するための基礎資料の策定を目的とする6つの課題から構成される。
a.HIVおよび精神保健専門機関における支援と連携に関する研究(大木)
b.地域相談機関の担当者におけるHIV陽性者へのサービス提供における課題について-東京都と大阪府での検討-(生島)
c.HIV陽性者の生活と社会参加に関する研究(若林)
d.薬物使用者を対象にした聞き取り調査-HIVと薬物依存との関連要因をさぐる-(生島)
e.依存症治療施設におけるHIV陽性者診療の状況調査(肥田)
f.NGOにおけるHIV陽性者および薬物使用者への支援に関する研究(樽井)
研究方法
1)HIVおよび保健に関わる医療者、2)地域相談機関の担当者、3)陽性者支援および薬物依存回復施設の担当者、そして4)陽性者、これら4グループを対象とし、調査を行う。本年度は、1)と2)に対する質問紙調査の結果を分析し(a、b)、3)と4)に対しては面接調査を継続し(d、f)、また4)に対しては質問紙調査を実施した(c)。
結果と考察
各研究の成果は以下の通り。
a.保健所・保健センターにおけるエイズ担当者(A)と精神保健担当者(B)への質問紙調査からは、1)いずれもこれまで業務で陽性者から相談を受けた経験は多くはないが(A:18.1%、B:11.7%)、精神保健担当者の方がHIV担当者よりも2)薬物使用に関する一般からの相談経験はより豊かであり(A:35.4%、B:75.3%)、3)自己効力感についても、精神保健の課題を併せ持つ陽性者(A:22.4%、B:45.3%)、あるいは薬物の課題を併せ持つ陽性者の相談(A:9.0%、B:15.8%)に「十分対応できる」「まあ対応できる」との回答が多いことが示された。4)薬物相談への対応の困難要因として薬物使用は疾患か人格か(A:51.4%、B:53.8%)、どこまで関わるのか(A:70.5%、B:48.0%)が分からないことが挙げられた。
b.相談機関の担当者に対する質問紙調査からは、1)HIVに関する知識について「全く知らない」「ほとんど知らない」との回答が、「抗HIV薬の開発によりウイルスを血液中からみつからないレベルまでコントロールする技術が開発された」で2/3(東京:63%、大阪:72%)、「障害者認定のなかにHIVによる『免疫機能障害』が位置づけられた」では1/3(東京:32%、大阪:44%)見られた。2)こうした知識と、陽性者からの薬物使用に関する相談対応の自己効力感との間には有意な相関が認められた。
c.陽性者への質問紙調査(A)からは、1)感染源は注射器の共用が動向調査(B、2012年度:0.4%)より高い0.7%で、注射か性的接触か分からないという回答がさらに1.4%あり、また性的接触も同性間は高く(A:80.7%、B:56.6%)、異性間は低い(A:12.8%、B:28.7%)こと、2)いずれかの薬物使用経験は55.0%(過去1年以内に使用:20.9%、1年以上前に使用:34.1%)、3)使用量・回数を自身でコントロール「できている」「およそできている」は92.3%、「あまりできていない」「できていない」は7.7%であり、4)薬物についての基礎知識、HIVとの関係についての情報を半数近くが求めていること等が示された。
d.薬物使用経験をもちMSMである陽性者19名への面接調査においては、1)使用していない現在、非就労という社会復帰・適応の問題、うつというメンタルヘルスの問題をそれぞれ4割が持っていること、2)薬物についてのネガティブなイメージは使用を控えさせるが、それがポジティブに転化され、あるいは自暴自棄により使用が始まること、3)セックスと薬物が社会的差別・排除に抗する手段とされること、4)薬物使用に関連する複数の要因でセーファーセックスが阻害されることが示された。
f.薬物使用の回復施設職員へのインタビュー調査からは、1)薬物使用の文脈において2005年以降HIVが注目され始めた経緯として、一部のMSMにとってのセックスドラッグであったゴメオの麻薬指定による使用者の動揺に加えて、2)刑事収容施設法および障害者自立支援法の制定により、回復施設ダルクの役割と社会的認知が拡大し、入所者が増加したことが指摘された。3)また現在直面している課題としては、2014年の指定薬物所持・使用犯罪化の使用者への影響と、4)2016年実施の刑の一部執行猶予制度への対応が挙げられた。
結論
薬物使用はメンタルヘルスの課題として対処することが、陽性者支援にとって、さらにはHIV対策ならびに薬物対策にとっても不可欠であることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201319019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,338,000円
(2)補助金確定額
13,347,107円
差引額 [(1)-(2)]
-9,107円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 986,258円
人件費・謝金 3,078,529円
旅費 2,132,342円
その他 4,926,978円
間接経費 2,223,000円
合計 13,347,107円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
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