文献情報
文献番号
201319018A
報告書区分
総括
研究課題名
地方公共団体及びNGO連携による個別施策層を含めたHIV対策に関する研究
課題番号
H24-エイズ-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
嶋田 憲司(特定非営利活動法人動くゲイとレズビアンの会 研究部門)
研究分担者(所属機関)
- 河口 和也(広島修道大学人文学部 社会学 教授)
- 高嶋 能文(医療法人社団めぐみ会 自由が丘メディカルプラザ2 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,180,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、一般層・個別施策層を対象としたHIV検査事業及び普及啓発事業において、地方公共団体とNGOの連携を進め、その成果をNGO不在地域にも普及させ、検査体制及び予防啓発を充実させることを目標とし、①連携・協働の意義と課題の整理、②連携・協働による検査相談及び普及啓発における個別施策層への効果的な介入の実施、③連携による検査相談事業の効果評価と全国への普及、の3つの目的を掲げる。
研究方法
研究1「地方公共団体とNGOによるHIV対策の実態把握と効果の普及」では、地方公共団体(N=133)へのHIV対策やNGO連携等についての質問票調査、NGO連携による検査事業を実施しているNGO(N=4)への事例と効果に関する質問票調査、NGO連携の先行事例の情報収集を行った。
研究2「地方公共団体とNGOによるHIV対策の実践を活かした検査相談体制ならびに個別施策層への啓発普及の充実」では、地方公共団体とNGOの連携による検査事業の効果評価、性行動及び予防知識に関する質問票調査、MSM向け普及啓発事業の実践と評価、MSM(N=142)のコミュニティでの予防行動及び社会的脆弱性に関する調査を行った。
研究2「地方公共団体とNGOによるHIV対策の実践を活かした検査相談体制ならびに個別施策層への啓発普及の充実」では、地方公共団体とNGOの連携による検査事業の効果評価、性行動及び予防知識に関する質問票調査、MSM向け普及啓発事業の実践と評価、MSM(N=142)のコミュニティでの予防行動及び社会的脆弱性に関する調査を行った。
結果と考察
研究1:HIV対策は、一般層では啓発普及活動(96.2%)等が多く実施されているが、青少年以外の個別施策層では最も実施の割合が高いものでも25.6%と、対策の実施割合が低い。地方公共団体の54.9%がNGOとの連携経験をもち、21.1%がNGOに事業を委託しており、その中で全国30事業の実施を把握したが、評価基準や効果の情報や財源が不足している課題があり、国内外の事例や効果評価の情報提供が必要である。NGO連携による検査事業では、地方公共団体が単特で行う検査事業と比較し、4団体全てにおいて個別施策層の受検者数と予防啓発介入や相談対応の増加が、3団体において受検者数と陽性率の増加が見られた。
研究2:2地域(さいたま市・中野区)でNGO連携による検査事業を実施し、NGO連携による検査事業での受験者数の割合を高め、さいたま市では連続して総受検者数を増加させた。NGOの実施する相談等による受検者の不安の軽減や性行動の変容意図への効果を確認し、中野区ではMSMへの検査機会をより多く提供した(男性の感染不安の34.5%)。MSM向け普及啓発事業では、3つの地方公共団体とNPOが連携し、行動変容を目的としたワークショップ「LIFEGUARD」を全国5ヵ所で実施し、介入前・後・1ヵ月後の質問票調査の回答から、参加者の「知識の向上」、「リスク要因の改善」、「性行動の行動変容」の点で、有意な介入効果が確認された。MSMのコミュニティでの予防行動及び社会的脆弱性に関する調査(N=142)では、MSMの生活状況や利用媒体、友人を所持していない層のHIV検査の受検経験の少なさ、自身のセクシュアリティの受容度とHIV感染リスクやトラブルの相談先の所持の相関を明らかにし、社会的脆弱性とHIV感染リスクの両方に対応できる相談窓口といったサポートの必要性を確認した。
研究2:2地域(さいたま市・中野区)でNGO連携による検査事業を実施し、NGO連携による検査事業での受験者数の割合を高め、さいたま市では連続して総受検者数を増加させた。NGOの実施する相談等による受検者の不安の軽減や性行動の変容意図への効果を確認し、中野区ではMSMへの検査機会をより多く提供した(男性の感染不安の34.5%)。MSM向け普及啓発事業では、3つの地方公共団体とNPOが連携し、行動変容を目的としたワークショップ「LIFEGUARD」を全国5ヵ所で実施し、介入前・後・1ヵ月後の質問票調査の回答から、参加者の「知識の向上」、「リスク要因の改善」、「性行動の行動変容」の点で、有意な介入効果が確認された。MSMのコミュニティでの予防行動及び社会的脆弱性に関する調査(N=142)では、MSMの生活状況や利用媒体、友人を所持していない層のHIV検査の受検経験の少なさ、自身のセクシュアリティの受容度とHIV感染リスクやトラブルの相談先の所持の相関を明らかにし、社会的脆弱性とHIV感染リスクの両方に対応できる相談窓口といったサポートの必要性を確認した。
結論
地方公共団体では、一般層や青少年以外の個別施策層への対策が進んでおらず、事業委託の経験を有する地域は30.1%にとどまっている。地方公共団体による直接のアプローチ等が困難な個別施策層向け対策においてNGOの役割が期待されており、地方公共団体と連携(事業委託)して検査事業を実施しているNGOの調査から確認した量的成果と質的充実の他、連携事例の効果内容や事業化プロセスといった情報の蓄積・提供が必要である。地方公共団体-NGO連携の事業において、MSM向けワークショップでは行動変容の効果を確認し、一般層向け検査事業では2地域での連携を達成する中で、受検者の個別施策層別の性行動及び予防知識、MSMのコミュニティ内の行動様式と社会的脆弱性の調査により、各層の特性に見合った情報提供や相談窓口の必要性、MSMの情報アクセスの向上やHIV感染リスクだけでないトラブル解決や自己受容といった支援プログラムの開発の必要性を確認した。
公開日・更新日
公開日
2015-07-03
更新日
-