文献情報
文献番号
201319015A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV検査相談の充実と利用機会の促進に関する研究
課題番号
H24-エイズ-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 真吾(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 近藤 真規子(神奈川衛生研究所 微生物部)
- 嶋 貴子(神奈川衛生研究所 微生物部)
- 矢永 由里子(慶應義塾大学 医学部 感染制御センター )
- 川畑 拓也(大阪府立公衆衛生研究所 感染症部)
- 今井 光信(田園調布学園大学 人間福祉学部)
- 貞升 健志(東京都健康安全研究センター 微生物部)
- 杉浦 亙(国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
- 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系 )
- 松岡 佐織(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
- 長野 秀樹(北海道立衛生研究所 感染症部)
- 上木 隆人(東京都南新宿検査・相談室)
- 日野 学(日本赤十字社 血液事業本部)
- 前田 憲昭(医療法人社団皓歯会)
- 井戸田 一朗(しらかば診療所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,157,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HIV検査相談を充実させ、その利用機会の拡大を促進することにより、HIV感染者をより早期に診断し、早期治療・発症予防の機会を提供し、行動変容と抗HIV治療による感染拡大の抑制を図る。
研究方法
以下の三課題に関する研究を行った。
(1)HIV検査相談の利用機会を促進するための研究
(2)HIV検査相談体制の実態を把握するための研究
(3)HIV検査技術の向上に関する研究
(1)HIV検査相談の利用機会を促進するための研究
(2)HIV検査相談体制の実態を把握するための研究
(3)HIV検査技術の向上に関する研究
結果と考察
(1)HIV検査相談の利用機会を促進するための研究
ウェブサイト「HIV検査・相談マップ」のスマートフォン対応の完了により検査相談情報の発信を飛躍的に増大させることができた。昨年のマスコミの報道のなかで「日赤輸血後感染」ついで「中高年患者の増加」が最も社会的関心を増大させたことがわかった。
病院のアンケート調査とカウンセラーによるグループディスカッションの結果から、医療機関における検査結果の告知において、結果説明が曖昧であったり、家族に先に知らされていたりするなどの問題があることがわかった。今後、医療機関の検査時対応者向けの研修やマニュアルが必要と思われる。
民間クリニックのHIV即日検査プログラムに現在34施設が参加している。2013年の成績は、検査数25,396件(男性54%、女性46%)、確認検査陽性数87件(男性86人、女性1人、陽性率0.34%)、迅速検査の偽陽性率0.2%であった。このプログラムは陽性率が高く、医療につながる陽性者の割合が高いなどの特徴がある。
MSM向けの自発的HIV/STIs即日検査相談は2013年に11回実施し、受検者97件、HIV抗体陽性者4件、梅毒TPHA陽性者18件、HBs抗原陽性者1件であった。唾液迅速HIV検査キットの結果は通常の検査結果と一致していた。受検希望者は173件で予約定員100件を大きく上回っていた。唾液検査を次回以降の検査で希望した受検者は63%と高く、ハイリスク層に受け入れられやすい検査法でることが示唆された。
南新宿検査相談室及び東京都内3保健所でMSMを対象に感染予防支援とHIV検査の定期受検のためのカードツールを242枚配布。カードツールおよび紹介カードの効果を現在調査中。
宮城県の全歯科診療所に1500枚の院内掲示用HIV検査啓発ポスターを配布した。
(2)HIV検査相談体制の実態を把握するための研究
病院におけるHIV検査の推定数は約620万件で、そのうちの73%が手術前あるいは入院時の検査であった。全都道府県における病院内HIV検査率と過去12年間のHIV感染拡大率の間に有意な負の相関(r=-0.584、P<0.001)があった。
全国の保健所等を対象としたアンケート調査の結果、保健所における陽性結果受取率94%、医療機関受診確認率68%、自施設からの届出率62%であった。また、即日検査実施率66%、夜間検査実施率36%、土日検査実施率13%であった。全国的な検査相談の実施形態はここ数年大きく変わっていなかった。
献血者におけるHIV陽性率は2008年をピークにその後大きく減少している。それには大阪府における陽性率の低下が大きく寄与していた。保健所等におけるHIV検査情報のわかりやすい提供が重要であることが示唆された。
海外では、送付(郵送)検査キットが米国、英国、カナダ、ニュージーランドで認可されていた。自己検査キットは米国に次いで最近フランスで認可された。一方、未認可の自己検査キットがインターネット等で数多く販売されていた。
郵送検査会社へのアンケート調査の結果、2013年の検査数は73,863件、スクリーニング検査陽性数は192件(0.26%)であった。団体受付による受検者の割合は45%であった。その場合、個人だけでなく依頼者にも結果が通知されていることがわかった。検査精度管理、検査前後の説明・相談、フォローアップ等に課題がある。
(3)HIV検査技術の向上に関する研究
急性期感染者4例についてHIV-1の塩基配列を次世代シークエンサーにより解析したところ、遺伝的多様度および遺伝的距離と感染期間の間に有意な相関があり、近時感染(recent infection)の判別法につながる可能性が示唆された。
汎用型HIV-1 RNA測定法の地方衛生研究所への技術移管を15施設で完了した。他の9カ所で導入を検討中。
HIV-1/2 RNA同時検出法(感度40コピー/ml)を完成した。
HIV-1/2技術研修会を名古屋医療センターにおいて開催し、HIV-1核酸検査法、薬剤耐性検査、サブタイピング等に関する講義および実習を行った。
ウェブサイト「HIV検査・相談マップ」のスマートフォン対応の完了により検査相談情報の発信を飛躍的に増大させることができた。昨年のマスコミの報道のなかで「日赤輸血後感染」ついで「中高年患者の増加」が最も社会的関心を増大させたことがわかった。
病院のアンケート調査とカウンセラーによるグループディスカッションの結果から、医療機関における検査結果の告知において、結果説明が曖昧であったり、家族に先に知らされていたりするなどの問題があることがわかった。今後、医療機関の検査時対応者向けの研修やマニュアルが必要と思われる。
民間クリニックのHIV即日検査プログラムに現在34施設が参加している。2013年の成績は、検査数25,396件(男性54%、女性46%)、確認検査陽性数87件(男性86人、女性1人、陽性率0.34%)、迅速検査の偽陽性率0.2%であった。このプログラムは陽性率が高く、医療につながる陽性者の割合が高いなどの特徴がある。
MSM向けの自発的HIV/STIs即日検査相談は2013年に11回実施し、受検者97件、HIV抗体陽性者4件、梅毒TPHA陽性者18件、HBs抗原陽性者1件であった。唾液迅速HIV検査キットの結果は通常の検査結果と一致していた。受検希望者は173件で予約定員100件を大きく上回っていた。唾液検査を次回以降の検査で希望した受検者は63%と高く、ハイリスク層に受け入れられやすい検査法でることが示唆された。
南新宿検査相談室及び東京都内3保健所でMSMを対象に感染予防支援とHIV検査の定期受検のためのカードツールを242枚配布。カードツールおよび紹介カードの効果を現在調査中。
宮城県の全歯科診療所に1500枚の院内掲示用HIV検査啓発ポスターを配布した。
(2)HIV検査相談体制の実態を把握するための研究
病院におけるHIV検査の推定数は約620万件で、そのうちの73%が手術前あるいは入院時の検査であった。全都道府県における病院内HIV検査率と過去12年間のHIV感染拡大率の間に有意な負の相関(r=-0.584、P<0.001)があった。
全国の保健所等を対象としたアンケート調査の結果、保健所における陽性結果受取率94%、医療機関受診確認率68%、自施設からの届出率62%であった。また、即日検査実施率66%、夜間検査実施率36%、土日検査実施率13%であった。全国的な検査相談の実施形態はここ数年大きく変わっていなかった。
献血者におけるHIV陽性率は2008年をピークにその後大きく減少している。それには大阪府における陽性率の低下が大きく寄与していた。保健所等におけるHIV検査情報のわかりやすい提供が重要であることが示唆された。
海外では、送付(郵送)検査キットが米国、英国、カナダ、ニュージーランドで認可されていた。自己検査キットは米国に次いで最近フランスで認可された。一方、未認可の自己検査キットがインターネット等で数多く販売されていた。
郵送検査会社へのアンケート調査の結果、2013年の検査数は73,863件、スクリーニング検査陽性数は192件(0.26%)であった。団体受付による受検者の割合は45%であった。その場合、個人だけでなく依頼者にも結果が通知されていることがわかった。検査精度管理、検査前後の説明・相談、フォローアップ等に課題がある。
(3)HIV検査技術の向上に関する研究
急性期感染者4例についてHIV-1の塩基配列を次世代シークエンサーにより解析したところ、遺伝的多様度および遺伝的距離と感染期間の間に有意な相関があり、近時感染(recent infection)の判別法につながる可能性が示唆された。
汎用型HIV-1 RNA測定法の地方衛生研究所への技術移管を15施設で完了した。他の9カ所で導入を検討中。
HIV-1/2 RNA同時検出法(感度40コピー/ml)を完成した。
HIV-1/2技術研修会を名古屋医療センターにおいて開催し、HIV-1核酸検査法、薬剤耐性検査、サブタイピング等に関する講義および実習を行った。
結論
HIV感染者の早期診断、早期治療を推進し、HIV感染流行の速やかな終息を図るため、HIV検査相談に関係する様々な課題について包括的に研究を進め、多くの具体的な成果を上げることができた。
公開日・更新日
公開日
2015-07-03
更新日
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