HIVの潜伏・再活性化および慢性的免疫活性化を左右する細胞因子・免疫応答の解明とその制御

文献情報

文献番号
201319014A
報告書区分
総括
研究課題名
HIVの潜伏・再活性化および慢性的免疫活性化を左右する細胞因子・免疫応答の解明とその制御
課題番号
H24-エイズ-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
横田 恭子(国立感染症研究所 免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永 研三(国立感染症研究所  感染病理部)
  • 渡邉 俊樹(東京大学 新領域創成科学研究科)
  • 立川 愛(東京大学 医科学研究所)
  • 田中 勇悦(琉球大学 医学部)
  • 小柳 義夫(京都大学 ウイルス研究所)
  • 山本 浩之(国立感染症研究所 エイズ学研究センター)
  • 五十嵐 樹彦(京都大学 ウイルス研究所)
  • 上野 貴将(熊本大学 エイズ学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
27,950,000円
研究者交替、所属機関変更
代表研究者である横田恭子は、平成26年3月31日をもって国立感染症研究所を定年退職し、平成26年4月1日より東京工科大学・医療保健学部・臨床検査学会の教授に就任しました。国立感染症研究所には客員研究員として籍をおいています。引き続き代表研究者として研究を遂行するため、代表研究者所属機関変更の手続きを済ませました。

研究報告書(概要版)

研究目的
HIVの潜伏感染とウイルス再活性化および慢性的免疫活性化によるT細胞の疲弊化を左右する細胞内因子および免疫学的要因を明らかにすることにより、エイズ病態を制御する新規治療戦略のための基盤を確立する。
研究方法
サルモデルでは、MHCクラスIハプロタイプ共有SIVmac239初期制御群の潜伏プロウイルスのSIV gagとnef領域の塩基配列解析を行い、Gag特異的CTL応答のパターンを評価した。また、非病原性SIV 1A11をアカゲザルに経直腸感染させ、経時的に血中ウイルス量と血中およびリンパ節中のリンパ球サブセットを調べた。これら感染サルに抗CD8抗体を投与してウイルス再活性化とそれに伴う免疫応答の変動を解析した。ヒト化マウスモデルにおいては、異なる蛍光を発現するX4型とR5型HIV-1を同時にヒト化NOJマウスに感染させた時のウイルス感染細胞の分布や血中ウイルス量の変動、HIV-1 vpr変異株と野生株感染ヒト化NOGマウスのTreg細胞や活性化メモリーT細胞の動態を解析した。初期培養CD4陽性T細胞をT細胞受容体刺激あるいはサイトカイン添加培養維持し、増殖レベル、表面抗原や感染細胞頻度、HIV mRNA発現及びプロウイルスのintegration量を比較解析した。Jurkat T細胞のHIV潜伏感染系においてバイサルファイト法やChIP assayによるメチル化DNAやLTR上の修飾ヒストンの検出と特異的阻害剤による再活性化の解析を行った。健常人PBMC由来マクロファージ、樹状細胞及び活性化Tリンパ球でIFNαにより強く誘導されるISG遺伝子のうち6種類のタンパクのHIVウイルスの感染・増殖に及ぼす影響を検証した。慢性期HIV感染者のCD4陽性とCD8陽性T細胞においてIL-2発現およびプロモーター領域のDNAメチル化と細胞表面抗原の解析を行った。慢性HIV感染者とウイルス感染制御者(Elite Controller)の検体においてnef遺伝子配列の遺伝子系統樹とnefタンパクの機能との関係に関する統計学的解析を行った。HTLV-1で不死化したT細胞株のOX40L発現とHIV-1抑制、抗CXCR4抗体(A120)のT細胞活性化に対する影響を検討した。
結果と考察
いわゆるlatent reservoir(潜伏感染)とactive reservoir (再活性化、持続感染)の存在を念頭に動物モデルで解析を行った結果、SIV初期制御群の病態進行は感染1-2年後のGag特異的CTLエスケープ変異プロウイルス蓄積の有無に依存し、特異的CTL応答とウイルス制御の関連が示唆され、非病原性SIV1A11潜伏持続感染の新規モデルが確立された。ヒト化マウスモデルでは、VprがTregへの感染性促進因子となりうること、R5型HIV-1存在下でX4型HIV-1が潜伏しうることが示された。潜伏感染T細胞培養系では、異なるメカニズムを介した潜伏感染成立の不均一性と宿主エピジェネティック因子群による制御の実態が明らかにされた。また、慢性HIV感染者のT細胞機能不全の要因となるCD4陽性T細胞の老化とIL-2遺伝子のエピジェネティックな変化、免疫活性化に関連するNefの機能と病態との関係、I型インターフェロン刺激遺伝子群の強力なHIV-1感染抑制効果、HTLV-I不死化細胞株のOX40L発現と抗CXCR4抗体によるR5 HIV-1感染抑制とT細胞活性化抑制効果等、新たな治療法開発の基盤となる知見が蓄積された。
結論
サルSIV感染における初期制御後の病態進行がある程度予測可能となり、比較的短期間に潜伏と再活性化が誘導可能な非病原性SIV感染サルモデルとともに今後の感染個体の免疫学的解析に活用できる。ヒト化マウスではR5型とX4型HIV-1の感染様式の相違からHIVの生体内での潜伏感染部位や記憶T細胞への潜伏機構の解析がモデル化され、Treg細胞へのHIV感染とVprタンパクの関係が示唆された。更に、HIV感染者のT細胞機能異常に関わる細胞要因やnefタンパクに関する知見に加え、マクロファージや樹状細胞のHIV-1感染制御分子としてのI型インターフェロンが誘導する一連のISG遺伝子群や新規のエピジェネティック調節因子を同定し、OX40やA120抗体の併用効果を利用する新たなエイズ治療戦略の基盤を構築した。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201319014Z