文献情報
文献番号
201319011A
報告書区分
総括
研究課題名
抗ウイルス宿主因子を基盤とする新規抗HIV戦略の開発・確立に向けた系統的研究
課題番号
H24-エイズ-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
足立 昭夫(国立大学法人徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
- 岩谷 靖雅(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター)
- 大塚 雅巳(熊本大学大学院生命科学研究部)
- 徳永 研三(国立感染症研究所)
- 中山 英美(大阪大学微生物病研究所)
- 藤田 美歌子(熊本大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
24,510,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
多剤併用療法の進歩によってHIV感染者の予後は改善されつつあるが,未だ根治(eradication)療法の確立には至っていない。治療長期化の懸念も増大しているため、根治に繋がる戦略の構築が重要である。既存の抗HIV薬や従来のワクチンあるいは免疫学的治療概念では、この問題をクリアすることは困難である。最近、レトロウイルスに対する細胞内宿主因子が次々と同定された。一方、HIVはこれら宿主防御因子の働きを解除する蛋白質をコードしている。本研究班では、宿主防御因子を活用した治療戦略への基盤を創出することを目指し、HIV感染・増殖に関与する宿主防御因子の抗HIV作用機序とウイルス蛋白質による解除機構の分子基盤を明らかにする研究に取組む。さらに、新規抗HIV細胞因子の探索・同定も試みる。これらにより、従来の免疫学とは異なる抗HIV防御システムの全体像を明らかにし、宿主因子を利用した次世代型治療戦略や病態解明への新たな知見を輩出する。
研究方法
三つの主軸に沿って各研究分担者が各論を展開し、成果や手法を共有することで研究班全体として研究を強力に推進していく。研究目的により各種の研究手法(ウイルス学、分子生物学、生化学、有機化学、計算科学、構造生物学等)を用いる。(1)宿主因子とウイルスの増殖阻止の分子機序を明らかにする。(2)抗ウイルス宿主因子の発現制御機構と分解機構について解明し、ウイルス感染による変化もしくは個体差に関する研究を行う。(3)抗ウイルス宿主因子/解除因子の相互作用を阻害、あるいは抗ウイルス宿主因子の発現制御をコントロールする分子モジュレータや低分子化合物を探索する。
結果と考察
主要な成果として以下の成績を得た。(1)SAMHD1以外にもHIV-2 Vpxの標的分子があることを明らかにした。Vpxの翻訳調節に重要なモチーフ(poly-proline motif; PPM)を同定した。(2)APOBEC3蛋白質群の立体構造を解明し、Vif阻害化合物のデザインの基礎を構築した。(3)強い抗HIV-1活性を示す新規抗ウイルス因子MARCH 8を同定した。(4)センダイウイルスベクターを用いたTRIM5評価系を確立し、HIV Gag-CAの試験管内アセンブリー系の構築にも成功した。(5)TRIM5機能を擬似化する抗HIV-1化合物BMMPを合成した。APOBEC3の発現量を有意に増加させる低分子化合物SN-2を得た。
本研究の目標達成には、抗HIV細胞因子とこれを無効にするHIV解除因子(Gag、Vif、Vpx及びVpu)との相互作用を分子レベルで解明する必要がある。また、ウイルス複製に関与する未同定因子についての探索も活発に行う必要がある。本年度の研究により、各ウイルス解除因子とその標的である宿主防御因子について、多くの学術的知見が得られた。HIVの複製や感染病態における宿主因子の重要性は明らかであるので、治療戦略の基盤を構成するウイルス蛋白質との相互作用機序の分子レベルでの解析を継続する。(1)新規Vpx細胞内標的因子及びVpx-PPM結合細胞因子を同定する。(2)APOBEC3の発現量とHIV複製との関係を解析する。(3)APOBEC3の立体構造解析が進展し、Vifとの結合部位の詳細が明らかになりつつあるので、今後はその阻害化合物の創製を目指す。(4)MARCH 8の作用機構の詳細を解明し、その作用を増強する戦略を構築する。(5)試験管内HIV Gag-CAアセンブリー系やセンダイウイルスベクター系を用い、微弱なヒトTRIM5活性を増強させる低分子化合物を探索する。(6)BMMP及びSN-2からnMオーダーの活性を持つ選択的なHIV阻害剤の創製を試みる。
本研究の目標達成には、抗HIV細胞因子とこれを無効にするHIV解除因子(Gag、Vif、Vpx及びVpu)との相互作用を分子レベルで解明する必要がある。また、ウイルス複製に関与する未同定因子についての探索も活発に行う必要がある。本年度の研究により、各ウイルス解除因子とその標的である宿主防御因子について、多くの学術的知見が得られた。HIVの複製や感染病態における宿主因子の重要性は明らかであるので、治療戦略の基盤を構成するウイルス蛋白質との相互作用機序の分子レベルでの解析を継続する。(1)新規Vpx細胞内標的因子及びVpx-PPM結合細胞因子を同定する。(2)APOBEC3の発現量とHIV複製との関係を解析する。(3)APOBEC3の立体構造解析が進展し、Vifとの結合部位の詳細が明らかになりつつあるので、今後はその阻害化合物の創製を目指す。(4)MARCH 8の作用機構の詳細を解明し、その作用を増強する戦略を構築する。(5)試験管内HIV Gag-CAアセンブリー系やセンダイウイルスベクター系を用い、微弱なヒトTRIM5活性を増強させる低分子化合物を探索する。(6)BMMP及びSN-2からnMオーダーの活性を持つ選択的なHIV阻害剤の創製を試みる。
結論
HIV感染・増殖に関与する宿主細胞防御因子の抗ウイルス作用機序とウイルス遺伝子産物による解除機構の解明に取組み、新たな学術的知見を得た。これまでに同定した因子や因子内領域は、Vpxの翻訳に関わるVpx-PPM、APOBEC3とVifの相互作用部位、APOBEC3の発現量を増加させるモジュレータ、新規抗HIV-1因子MARCH 8及びBST-2/tetherinの抗ウイルス活性を増強させる宿主因子SCYL2である。構築した評価系はTRIM5の標的であるGag-CAの試験管内アセンブリー系である。この他、創薬に繋がり得る抗ウイルス宿主因子を擬似・制御する低分子化合物として、TRIM5機能を擬似化するBMMP 及びAPOBEC3の発現量を有意に増加させるSN-2を得た。
公開日・更新日
公開日
2015-07-03
更新日
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