HIV-1感染・発症霊長類モデル研究:宿主内因性及び獲得免疫解析に基づく前臨床評価システムの最適化

文献情報

文献番号
201319003A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1感染・発症霊長類モデル研究:宿主内因性及び獲得免疫解析に基づく前臨床評価システムの最適化
課題番号
H23-エイズ-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
明里 宏文(京都大学  霊長類研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 足立 昭夫 (徳島大学 大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 )
  • 高折 晃史(京都大学 医学研究科 )
  • 中山 英美(大阪大学 微生物病研究所)
  • 松岡 佐織  (国立感染症研究所 エイズ研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,244,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当該研究課題では、サル類におけるHIV-1感染および病態発現の制御に寄与する宿主内因性及び獲得免疫の基礎的解析に基づき、慢性エイズを発症する病原性HIV-1感染霊長類モデルを確立し急性・慢性HIV-1感染霊長類モデルの前臨床評価システムとしての最適化を目指すものである。昨年度、我々はワクチン開発・評価研究において重要となるR5指向性Envを有するHIV-1mt MN38株を作出した。MN38株はカニクイザルPBMCのみならず、個体レベルにおいても優れた増殖能を有することが示された。平成25年度は、これまでの成果を踏まえ、個体間継代によるR5指向性HIV-1mtの持続感染化を重点課題として取り組んだ。またこれと平行して、宿主内因性抗ウイルス免疫因子と関連ウイルス側因子の機能的解析を行い、宿主因子によるウイルス制御機能をより効率良く回避可能なHIV-1mt樹立に寄与する基盤情報集積を目指した。
研究方法
本研究チームで同定済みのHIV-1宿主域を規定する宿主内因性免疫因子に関して、その機能ドメインや作用機序解析を進めるとともに、関連ウイルス遺伝子(gag-CA, vif, vpu等)との相互作用を規定する領域の分子構造生物学的検討を進める。この結果を基に、サル末梢血Tリンパ球での増殖能が向上したR5指向性HIV-1mtを構築し、TRIMCypアリル保有カニクイザルにおける増殖能および免疫応答を評価する。
(倫理面への配慮)
本研究では改正動愛法に基づいた動物福祉規程にのっとり、実験動物の飼育・実験・解剖作業を行う。また実験実施機関において実験動物委員会による承認を得た。また用いた組換え生物等については、第二種使用等拡散防止措置確認申請承認(大臣確認)済みである。
結果と考察
本研究課題の最終目標は、HIV-1自体を標的としたワクチンや新規抗HIV薬の有効性評価が可能となる実用的なHIV-1感染霊長類モデルの開発である。本研究において、R5指向性HIV-1mtによるカニクイザル持続感染モデルを世界で初めて確立することに成功した。特に、個体間継代により、血中ウイルス量がHIV-1感染者における急性期のそれとほぼ遜色ないレベルに達したことは特筆すべき点である。このことは、R5指向性HIV-1mtが基本的にカニクイザルでの感染増殖において馴化が進んだことを表しており、当初の目標が達成されたものと考えている。しかし慢性エイズを発症する病原性HIV-1感染霊長類モデルの確立に関しては、更なる宿主免疫因子からの回避、最適化などが来年度以降の課題として残されている。
これまでにSIV感染モデルでは主としてアカゲザルが使用されてきた。アカゲザルはMHCなどの解析も進んでいるなど研究リソースも充実しておりモデル動物として優れている。本研究では、塩基配列依存性の新しいHIV-1の適応変異とそれを可能にするゲノム領域の存在と分子機序を明らかにした。また、Env-gp120内の様々な変異によって環境に適応するHIV-1の順応力の高さも示した。我々の一連の研究成果から、HIV-1/アカゲザルモデルの有用性と実現性が明確に示されたと考える。
結論
本研究班におけるサル個体側およびウイルス側の最適化に関する研究成果に基づき、R5指向性HIV-1mtによるカニクイザル持続感染モデルを世界で初めて確立することに成功した。今後は、持続感染HIV-1mtカニクイザルモデルを用いて、HIV-1根治に向けた基盤的研究を推進する。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201319003B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV-1感染・発症霊長類モデル研究:宿主内因性及び獲得免疫解析に基づく前臨床評価システムの最適化
課題番号
H23-エイズ-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
明里 宏文(京都大学  霊長類研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 足立 昭夫 (徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 高折 晃史(京都大学 医学研究科)
  • 中山 英美(大阪大学 微生物病研究所)
  • 松岡 佐織  (国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規抗HIV-1薬やワクチン開発、有効性評価研究において、実験用サル類を用いた前臨床試験は今や不可欠である。しかしHIV-1は実験用サル類に感染発症しないことから、これまでSIVおよびSHIV/マカクザル感染発症モデルが汎用されてきた。一方HIV-1特異的でSIV, SHIVモデルでは評価困難な新規薬剤や予防治療ワクチンの前臨床評価研究を目的として、実用的なHIV-1感染霊長類モデルの開発が求められてきた。当該研究課題では、サル類におけるHIV-1感染および病態発現の制御に寄与する宿主内因性及び獲得免疫の基礎的解析に基づき、HIV-1感染霊長類モデルを確立し急性・慢性HIV-1感染霊長類モデルの前臨床評価システムとしての最適化を目指すものである。
研究方法
本研究チームで同定済みのHIV-1宿主域を規定する宿主内因性免疫因子に関して、その機能ドメインや作用機序解析を進めるとともに、関連ウイルス遺伝子との相互作用を規定する領域の分子構造生物学的検討を進める。この結果を基に、サル末梢血Tリンパ球での増殖能が向上したR5指向性HIV-1mtを構築し、TRIMCypアリル保有カニクイザルにおける増殖能および免疫応答を評価する。
(倫理面への配慮)
本研究では改正動愛法に基づいた動物福祉規程に則り実験動物の飼育・実験・解剖作業を行うとともに、実験実施機関において実験動物委員会による承認を得た。また用いた組換え生物等については、第二種使用等拡散防止措置確認申請承認(大臣確認)済みである。
結果と考察
本研究課題の最終目標は、HIV-1自体を標的としたワクチンや新規抗HIV薬の有効性評価が可能となる実用的なHIV-1感染霊長類モデルの開発である。そのための基盤として、HIV-1感受性に関するカニクイザル個体差をTRIM5遺伝子型が専ら規定していることをin vitroのみならずin vivoでも初めて明らかにしたことは特筆すべき成果である。今後はTRIM5遺伝子型をHIV-1感受性選択マーカーとすることで、より信頼性・再現性の高い霊長類モデルが構築可能となった。実際、R5指向性HIV-1mt感染継代実験において、安定かつ再現性の高いウイルス動態データが得られていることは我々の結論を支持するものである。さらに、ウイルス側の遺伝子改変と個体間継代による最適化、および宿主であるカニクイザルの遺伝的背景に基づくHIV感受性に関する個体差の決定要因の同定という両面からのアプローチにより、本邦での入手が容易なカニクイザルをモデル動物とするHIV-1mt感染システムの樹立に成功した。特にR5指向性HIV-1mtによるカニクイザル持続感染モデルを世界で初めて確立出来たことは学術的に特筆すべき成果である。抗HIV-1薬剤開発における臨床試験への「橋渡し研究」迅速化に向け更なる発展が大いに期待できる事から、社会的にもその意義は高い。今後は、病原性を伴う持続感染HIV-1mtクローン作出を目指すとともに、今回樹立したHIV-1感染霊長類モデルを用いて、ウイルスフリーのための新たな治療法開発に向けた基盤・応用研究を推進していきたい。
結論
本研究班におけるサル個体側およびウイルス側の最適化に関する研究成果に基づき、R5指向性HIV-1mtによるカニクイザル持続感染モデルを世界で初めて確立することに成功した。今後のHIVフリーを目指した橋渡し研究推進において大きな一助となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201319003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本邦での入手が容易なカニクイザルをモデル動物とするHIV-1mt感染システムの樹立に成功し、特にR5指向性HIV-1mtによるカニクイザル持続感染モデルを世界で初めて確立出来たことは学術的に特筆すべき成果である。
臨床的観点からの成果
抗HIV-1薬剤開発における臨床試験への「橋渡し研究」迅速化に向け更なる発展が大いに期待できる。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
今後のHIVフリーを目指した橋渡し研究推進における重要な動物モデルとして非常に意義深い。
その他のインパクト
1.エイズ対策研究事業基礎研究班合同公開シンポジウム「進化するエイズウイルス・人類は克服出来るか?」にて講演を行った(2013年6月16日、東京)。
2.第6回市民公開シンポジウム「エイズ無き時代を目指して」にて講演を行った(2014年2月1日、名古屋)。なお中日新聞2014年2月2日版に本シンポジウム発表内容が取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
62件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
55件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-06-03
更新日
2018-06-11

収支報告書

文献番号
201319003Z