粘膜免疫誘導型新規結核ワクチンの開発

文献情報

文献番号
201318080A
報告書区分
総括
研究課題名
粘膜免疫誘導型新規結核ワクチンの開発
課題番号
H25-新興‐一般-019
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
保富 康宏(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 野阪 哲哉(三重大学大学院医学系研究科 )
  • 庵原 俊昭(国立病院機構三重病院)
  • 石井 健(独立行政法人医薬基盤研究所 アジュバント開発プロジェクト)
  • 國澤 純(独立行政法人医薬基盤研究所 ワクチンマテリアルプロジェクト)
  • 伊奈田 宏康(鈴鹿医療科学大学薬学部)
  • 松尾 和浩(日本BCG製造(株)日本BCG研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規の結核患者は世界中で毎年800万人発生しており、唯一のワクチンであるBCGは、小児の結核性髄膜炎並びに粟粒結核に対しては防御効果を示すが、成人の肺結核に対して明確な予防効果は認められない。これらのことから、新規ワクチン開発は急務である。粘膜より感染を示す病原体には、感染時の粘膜での免疫反応が感染防御等に重要であり、この粘膜免疫を誘導するためには抗原を適切に粘膜面に投与しなければならない。つまり、肺結核の防御には適切な手法を用いてワクチン抗原を粘膜面へ投与することが重要である。本研究ではパラインフルエンザ2型ウイルス(HPIV2)に結核抗原を組み込んだ新たな粘膜免疫誘導型結核ワクチンの開発を目的とした。
研究方法
遺伝子組み込みHPIV2を用いてウイルス学的評価、ワクチン効果の評価、安全性評価をおこなった。さらに自然界でのHPIV2感染状況を調査した。
結果と考察
HPIV2に結核菌分泌抗原Ag85B遺伝子を組み込んだ結核菌に対する組み換えワクチンを作製したところ、経鼻投与で肺結核を優位に抑制することが示され、BCG感作ではらに効果が増強されることも確認された。また、新たな結核抗原(ESAT-6、Rv1733、Rv2626、Rpf D)を組み込んだHPIV2をHN遺伝子欠損、V遺伝子欠損HPIV2作製した。さらに、これに対応すべく、ゲノムにVまたはHN遺伝子を組み込んだVero細胞を作製し、安定的な生産系の確立を行った。生体内における毒性評価の予備試験としてHPIV2ワクチン経鼻投与カニクイザルの鼻粘膜周囲の骨組織を脱灰処理をせず染色可能か検討し、実現可能となった。このことから経鼻投与によるカニクイザルの鼻粘膜について、投与後6時間、12時間、24時間での病理組織学的解析を行い、組織学的変化を確認した。この毒性評価をマウスを用いて、内因性アジュバント効果とその作用機序の解析を開始し、HPIV2のV遺伝子を用い、V遺伝子と自然免疫抑制機能を検討する実験系を確立した。さらに粘膜リンパ組織依存的IgA抗体高産生細胞の同定や樹状細胞を介した粘膜リンパ組織形成など、HPIV2システムの機能解析と安全性評価につながる新規知見を得ることが出来た。また、ヒトでのHPIV2感染における疫学調査のために呼吸器症状を呈して国立三重病院を受診した小児から鼻汁・咽頭ぬぐい液を採取、保存を開始し、一部は測定した。さらに、クリニカルデータシートを作成し、臨床ウイルス学的解析も可能な体制を整え、 HPIV2特異抗体の測定のため、小児から成人に及ぶ健常者の保存血清準備を開始した。
結論
HPIV2ベクターを用いた結核ワクチンの開発に向けて多様な知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201318080Z