新興再興感染症に対する経鼻ワクチンの開発・実用化に関する研究

文献情報

文献番号
201318079A
報告書区分
総括
研究課題名
新興再興感染症に対する経鼻ワクチンの開発・実用化に関する研究
課題番号
H25-新興‐一般-018
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 秀樹(国立感染症研究所 感染病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 奥野良信(一般財団法人阪大微生物病研究会 観音寺研究所)
  • 一戸猛志(東京大学医科学研究所)
  • 瀬谷 司(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 相内 章(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフルエンザウイルスの感染を阻止できる分泌型IgA抗体を気道粘膜上に誘導する経鼻インフルエンザワクチンは、現在注射により皮下に接種されているワクチンと比べて感染防御効果が高いと考えられている。経鼻不活化全粒子インフルエンザワクチンの実用化に向け、健常人ボランティアを募りワクチン接種による抗体応答を詳細に検討し、その有効性を明らかにすることを目的とする。
研究方法
現行の3価季節性インフルエンザHAワクチン皮下接種あるいは3価不活化全粒子インフルエンザワクチン経鼻接種により誘導される抗体応答を評価した。また健康成人ボランティアを募った臨床試験において、高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)の不活化全粒子ワクチンを用いた経鼻ワクチン接種により誘導される抗体応答の評価を行った。インフルエンザウイルスの細胞培養系における生産性の向上を目的として、使用する細胞の選抜、培地及び培養条件の検討を行い、生産能力の向上を試みた。経鼻投与で分泌型IgAの高産生を促進する免疫アジュバントを開発しインフルエンザワクチンHA蛋白に最適な条件をマウス系で検討することを目指して系を作製した。更にインフルエンザウイルス感染細胞における、NLRP3の免疫誘導における役割を解析した。
結果と考察
本研究では現行の3価季節性インフルエンザHAワクチン皮下接種と3価不活化全粒子インフルエンザワクチン経鼻接種により誘導されるA(H3N2)株に対する血清HI抗体価を評価した。野外株とワクチン製造株の間に抗原性の乖離の可能性が考えられたが、粘稠剤CVPを添加した不活化全粒子インフルエンザワクチン経鼻接種は、現行のワクチンと同等の血清HI抗体を誘導することが示された。
健康成人ボランティアに対して、高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)に対する経鼻ワクチン接種を行い誘導される抗体応答を評価した。免疫学的に無垢な状態にあるA(H5N1)ウイルスの不活化全粒子ワクチンのみの2回の経鼻接種では、十分な抗体応答を誘導することが出来なかった。しかしながら、ワクチン接種の確実性を高めると期待されるCVPの添加により、抗体応答が促進する可能性が示唆された。新規のワクチン生産用細胞及び培地の選抜、及び発育鶏卵培養による全粒子インフルエンザワクチン製剤の試作を行った。各種アジュバントのIgA産生誘導活性を確定し、RNAアジュバントの優位性を確認するため、マウス経鼻投与系でKOマウスを含めた試験系を作製した。アジュバントは大量化学合成の方策を検討中である。ウイルス感染によるNLRP3 inflammasomeの活性化には、ミトコンドリアの膜電位(連結したミトコンドリア)と、ミトコンドリア外膜上でのNLRP3とMfn2の相互作用が必要であった。
結論
3価季節性インフルエンザHAワクチン皮下接種と3価不活化全粒子インフルエンザワクチン経鼻接種により誘導されるA(H3N2)株に対する血清HI抗体価を評価し3価不活化全粒子季節性インフルエンザワクチンの接種で皮下接種と同等の血中のHI抗体が誘導され更に鼻腔洗浄液中に中和抗体を誘導した。免疫的に無垢なH5N1の全粒子不活化ワクチンの2回の経鼻接種では血中および鼻腔洗浄液中の十分な中和抗体を誘導できなかった。アジュバントの必要性が考えられ分担研究者において開発を進めている。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318079Z