集団予防接種等によるHBV感染拡大の真相究明と被害救済に関する調査研究

文献情報

文献番号
201318078A
報告書区分
総括
研究課題名
集団予防接種等によるHBV感染拡大の真相究明と被害救済に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-新興‐指定-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 喜比古(日本福祉大学 社会福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡 多枝子(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 倉持 香苗(日本福祉大学 福祉経営学部)
  • 田中 泰惠(青森明の星短期大学)
  • 横山 由香里(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 荻野 剛史(東洋大学 ライフデザイン学部)
  • 越田 明子(長野大学 社会福祉学部)
  • 三並 めぐる(広島国際大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
11,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
3年間にわたる本研究の目的は,集団予防接種等によるHBV(B型肝炎ウイルス)感染被害の実態と支援ニーズを明らかにし,被害者及び遺族のQOLの回復・向上を支援する観点から,具体的な支援策の検討及び政策提言を行い,厚生労働行政の課題に貢献することである.初年度の平成25年度は,被害者及び遺族を対象としたインタビュー調査を通して,被害の実態と支援ニーズを検討することを目的とした.
研究方法
3年間で,被害者及び遺族を対象としたインタビュー調査とアンケート調査を行い,質的研究及び量的研究のトライアンギュレーションによる研究課題の明確化を行う.平成25年度は,研究課題をめぐる先行研究レビュー,全国インタビュー調査,KJ法(川喜田1967,1970,1986)を用いた質的研究を行った.調査時期:平成25年 10月~平成26年3月.調査対象:全国B型肝炎訴訟弁護団を通じて,同原告団の中から同意を得られた111名を選定した.調査方法:研究者が各地(北海道,東北,北陸,関東,甲信越,東海,近畿,山陰,中国,四国,九州)に赴き,半構造化による面接調査を実施した.インタビューガイド:「感染判明当初の状況と現在の病態,医療機関や治療の状況と医療費等の負担,生活上の困難,国や社会への要望」等を中心に構成した.倫理的配慮:回答者の匿名性を確保し,研究代表者の所属する研究機関の研究倫理審査の承認後に実施した.
結果と考察
(1)先行研究レビュー:国内最大の感染症といわれるウイルス性肝炎感染者は300万人以上,集団予防接種等によるHBV感染者は40万人以上と推定され(厚生労働省2011),感染被害者及び遺族に対する救済と支援は,社会福祉学分野の重要な研究課題である.B型肝炎訴訟は,1989年に札幌地方裁判所での提訴に始まり(奥泉・安井2004,奥泉2007),2006年の最高裁判決(渡邉2001,与芝2011),2011年のB型肝炎訴訟に関する「基本合意書」の締結と総理大臣の謝罪で一定の決着をみた.2013年,厚生労働省「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会(検証会議)」は,国の体制等がB型肝炎感染拡大を引き起こしたとした.検証会議の調査を対象とした研究(岡・三並2013)によると,遺族は,「今も癒されない悲嘆」の中で,HIV感染被害者遺族の「差別不安由来の生活行動自主規制」(瀬戸2008)と通底する状況下に置かれていた.他方で,HIV感染被害の中で「立ち直る遺族」(坂野2008)や.水俣病第2世代が獲得した「新しいアイデンティティ」(原田1997)と同様に,当事者の力を発揮する場面も示された.ところで,公開されている検証会議の調査では,被害を個別的総体としてとらえていない.そこで,本研究では,被害者及び遺族の個別インタビューを実施して,感染判明から現在に至る病態や生活困難と支援ニーズを検討した.
(2)インタビュー調査及び調査結果に対する質的研究(KJ法):調査対象者は,被害者が男性50名(平均58.4歳),女性58名(平均55.8歳)の,合計108名(平均57.5歳)であり,現在の病態は,キャリアが15名,慢性肝炎が35名,肝硬変が19名,肝がんが39名であった.遺族3名と合計して111名である.質的研究の結果,被害者は,「感染判明に驚愕」し,「重篤な病に苦闘」する中で,医療差別や医療格差などの「医療環境の不条理」に直面し,働きたくても「働く機会を奪われ」,深刻な「生活の困窮」や社会的な「差別に晒され」,これまで営んできた「当たり前のくらし」を諦めざるをえない状況下に置かれていた.しかし,「家族」をはじめとした周囲のキーパーソンの支えを受けながら「煩雑な」提訴に踏み切り,「当事者活動」を通したエンパワーメントによって「被害を回復」する可能性も示され,『重層的被害からの回復を』願っていた.
結論
研究の結果,苛酷な闘病や医療費の負担,スティグマによる社会的排除等が相互に関連して,被害の拡大と深刻化を招くという「被害の重層的構造」が浮上した.従って,それを断ち切る保健医療,雇用保障,生活保障,教育啓発,地域福祉,母子保健,遺族ケアなど,「支援の重層的構築」が必要とある.一方,当事者活動を通したピアサポートや教育・啓発活動の中で,エンパワーメントによる被害回復の可能性も見出され,新たな相談支援体制の確立等が求められる.

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318078Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 624,789円
人件費・謝金 604,310円
旅費 3,807,376円
その他 6,513,525円
間接経費 3,450,000円
合計 15,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-06-03
更新日
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