全国を対象とした抗菌薬使用動向調査システムの構築および感染対策防止加算の評価

文献情報

文献番号
201318072A
報告書区分
総括
研究課題名
全国を対象とした抗菌薬使用動向調査システムの構築および感染対策防止加算の評価
課題番号
H25-新興-若手-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
村木 優一(三重大学医学部附属病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 辻泰弘(富山大学大学院医学薬学研究部 薬物動態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗菌薬耐性菌の増加は、公衆衛生上の世界的な問題であり、特に医療施設で懸念されている。多剤耐性菌は入院期間の延長や罹患率を上昇させるだけでなく、死亡率も上昇させる。そのため、諸外国では耐性菌の感受性率や抗菌薬使用量における継続したサーベイランスの重要性が認識され、国家レベルで実施されている(Lancet 365:548-549, 2005)。
我が国においても厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業として薬剤耐性菌の感染発生動向調査は実施されているが、全国を対象とした抗菌薬使用量の大規模なサーベイランスは実施されていなかった。申請者はこれまでに日本病院薬剤師会を介して大規模調査を3年間実施した。しかし、継続した評価を実施するシステムを構築するまでは至らなかった。
平成24年4月に感染防止対策加算が新設され、各医療施設における院内感染対策防止策は経年的な評価が必要であり、国民に還元しなければならない。
そこで、本研究の第一の目的は、全ての医療施設において、抗菌薬の使用状況を簡便に把握できるシステムを構築し、感染防止対策加算へ与える影響を評価することとした。第二に、抗菌薬の使用状況を把握するために必須となる算出方法を統一し、感染防止対策加算に参考となる資料を作成することとした。
研究方法
1. 抗菌薬使用量サーベイランスシステムの構築
我々はこれまで、全国を対象として抗菌薬使用動向調査を実施してきた。しかしながら、全ての医療施設で経年的に使用動向を把握できる無償のシステムが存在しなかったため、Webを介した使用動向調査システムの開発に着手した。これまではMicrosoft Excelを利用していたため、Web上に置き換える場合、得意/不得意とする部分が異なるため、システム開発会社と打ち合わせを重ねた。
2. 感染防止対策加算における客観的指標の探索
広域抗菌薬の使用においてWHOが推奨するAUDとCDCが推奨するDOTの比較を行った。
3. 抗菌薬使用量算出方法における標準化
WHO監修の「Guidelines for ATC classification and DDD assignment 2014 47頁」および「Introduction to Drug Utilization Research 48頁」の日本語訳に取りかかった。
4. 倫理面への配慮
本研究は、抗菌薬の使用量調査を目的にしているため、直接的に患者情報を取り扱うものではない。すなわち、データとしては、患者情報から切り離した使用量のみを取り扱う。病院名も番号などで匿名化を図り、団体および個人の不利益に十分配慮する。
結果と考察
結果
抗菌薬の使用状況を把握するためのシステムはすでに構築しており、現在はテスト環境にて最終作業を行っている。八木班・藤本班、国公立大学附属病院感染対策協議会(国公大協)、私立医科大学病院感染対策協議会(私大協)とも連携し、パイロット試験を実施およびその解析を行うよう調整した。さらに、最終年度に向けた全国調査の参加施設への依頼の調整を実施する。
当院において、AUDとDOTを算出し、その比を経年的に評価したところ、入院期間の短縮や緑膿菌耐性率の改善に1日使用量の増加および抗菌薬使用比率の分散が関与している可能性が考えられた。平成26年度はこの結果を上述のパイロット調査で検証予定である。
抗菌薬の使用状況を把握するために必須となる算出方法は、世界保健機構(WHO)の手法が主である。その手順は英文で構成されており、そのツールを用いることは、我が国において、全ての利用者の妨げとなっている。Webサイトに掲載されている手順書については、既に翻訳しており、本年度はこれらの公開許可の取得、もしくは翻訳に基づいた資料を公開することを行う。

考察
抗菌薬の使用状況は、これまで医療施設からの能動的な収集、計算、提出といった手順を踏むため、全ての医療施設の情報を収集することは困難である。一方で、レセプト(ビッグデータ)情報を利用することが可能となれば、必然的に日本における使用状況が掌握できる。そのため、これらの情報を利用するために、必要な情報検索・調整等を併せて行っていく。また、我々の研究については、研究協力者の八木班、藤本班と情報を共有しながら連携することが重要であり、次年度以降も連携を強化して進めていくこととした。また、本システムは八木班、藤本班が進めている地域連携間での調査においても活用可能であり、研究内容の調整を行っていく。
結論
これらの結果は、いずれも我が国全体の感染制御を質的に向上させ、抗菌薬の適正使用を促し、患者の予後だけでなく多剤耐性菌の抑止に繋がる可能性もあり、非常に重要な成果となる。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201318072Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,900,000円
(2)補助金確定額
3,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 352,940円
人件費・謝金 0円
旅費 240,820円
その他 2,406,240円
間接経費 900,000円
合計 3,900,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2014-05-08
更新日
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