侵襲性真菌症例から分離された原因真菌の分子疫学解析と疫学データべース化を用いた院内感染対策の研究

文献情報

文献番号
201318066A
報告書区分
総括
研究課題名
侵襲性真菌症例から分離された原因真菌の分子疫学解析と疫学データべース化を用いた院内感染対策の研究
課題番号
H24-新興-若手-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
田辺 公一(国立感染症研究所 真菌部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、国内の主要医療機関において侵襲性感染を引き起こしたCandida属、特に分離頻度の高いC. albicansを収集し、感染症発生動向と分離菌の薬剤感受性を検証することを目的とする。分離された菌の菌学的解析、分子疫学的解析を通じて、これらに共通する特定の遺伝学的パターンや因子の存在を検討する。
研究方法
<菌株輸送のプロトコル>
 埼玉医科大付属病院・検査部より月2回を目安に、臨床検体(皮膚、喀痰、血液、膿など)から分離された酵母様真菌を分与いただいた。介入は行わず検査の一環で分離された菌株のみを対象とした。
<Candida株遺伝子解析>
 7遺伝子の特定の領域をコロニーPCRで増幅し、塩基配列を決定しMLST解析を行った。
<薬剤感受性試験>
 臨床で用いられる代表的な抗真菌薬(フルコナゾール、ミカファンギン、アムホテリシンB)について耐性株の有無を調べた。96穴プレートのすべてのウェルに耐性株しか発育できない薬剤を含む培地を調製し、同じく96穴プレートの各ウェルに菌の懸濁液を調製し、トランスファープレートを用いて菌の接種を行った。この実験系によって耐性株の有無について一度に96株試験することができた。
結果と考察
埼玉医大より150株のCandida株を分与いただき、解析を行った。まずリボソームDNAの塩基配列を決定し、遺伝子データベース情報検索から104株(69.3%)がC. albicansであることを確認し、MLST解析に進めた。今年度、血液より分離されたC. albicans株は11株(11/104=10.6%)であり、血液培養分離株には共通性が認められた。
分与いただいたCandida株の薬剤感受性を調べた。耐性化が懸念される、アゾール系抗真菌薬、キャンディン系抗真菌薬についてまずはスクリーニングを行った。その結果、8株のアゾール系抗真菌薬耐性株を同定した。キャンディン系抗真菌薬耐性株やアムホテリシンB耐性株は検出されなかった。
本検討における遺伝子型解析を行った株数はまだ十分ではないが、血液培養分離株の遺伝子型は互いに共通性があることが予想された。これらの結果は、すべてのC. albicans株が同じ確率で重症の血流感染症を引き起こすのではなく、血流感染を引き起こす確率はC. albicans株によって異なることを示唆している。この仮説をさらに検証するために、さらに多数の検体を複数の医療機関から分与いただき、解析する必要がある。
薬剤感受性の簡易試験の結果、分与いただいた株の中に、8株のアゾール耐性C. albicans株が存在したが、分離された臓器の共通性や、遺伝子型の相同性もなかった。これらの抗真菌薬に対する耐性C. albicans株の発生頻度は極めて低いと考えられており、本検討で得られた結果は、これまでの予測と矛盾しないものであった。
結論
C. albicans株のMLST解析結果から、血液培養分離株の遺伝子型には、互いに共通性があることを示唆する結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201318066Z