沈降インフルエンザワクチン(H5N1株)の新規株の有効性、安全性ならびに至適接種間隔ならびに異種株に対する交叉免疫性の検討

文献情報

文献番号
201318059A
報告書区分
総括
研究課題名
沈降インフルエンザワクチン(H5N1株)の新規株の有効性、安全性ならびに至適接種間隔ならびに異種株に対する交叉免疫性の検討
課題番号
H25-新興-指定-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
庵原 俊昭(国立病院機構三重病院 )
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 澄信(国立病院機構本部総合研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
35,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
沈降インフルエンザワクチンH5N1(以下H5N1ワクチン)は、初回の2回接種では専ら接種した株に対する抗体が上昇するが、初回接種後6ヶ月以上あけて追加接種を行うと、初回接種と同じ株を用いようが、異なる株を用いようが、クレードの異なる株も含めた幅広で高い抗体が誘導される(交叉免疫性)。今までの研究では、初回の2回接種を6ヶ月あけて行うと、2回接種後には幅広い抗体が誘導されており、供給できるワクチン量が少ないときには効果的な接種方法である。本研究では、24年度に新たに製造されたエジプト株を用い、2回の接種間隔を3週、2か月、3か月、6か月とすることで至適接種間隔を検討する。また、「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」に記載されている新型インフルエンザワクチン接種対象者のうち接種希望者に接種し、エジプト株に対する安全性を評価する。
研究方法
エジプト株免疫原性確認試験では、健常者50名を対象に3週間隔で2回接種し、初回接種前と2回目接種3週後に採血を行い、中和抗体価を測定する。将来、H5N1流行株の変異あるいはパンデミック発現時に、出現したH5N1ウイルスに対する抗体の交叉免疫性を評価するために、被験者の同意のもとに採取した血清を保存する。
初期2回至適接種間隔検討試験は、接種間隔を2か月、3か月、6か月とし、各グループ30名の計90名の健常者を対象に2回接種する。初回接種前と2回目接種3週後に採血し、エジプト株以外にもベトナム株、インドネシア株、アンフィ株に対する中和抗体を測定する。本研究でも同意のもとに採取した血清を保存する。
安全性確認試験では1000人を対象に、各接種後の発赤、腫脹、疼痛などの局所反応(観察期間1週間)、発熱、全身倦怠感などの全身反応(観察期間1週間)、脳炎、ギランバレー症候群などの重大な副反応(観察期間4週間)の出現率を調査する。なお、エジプト株免疫原性試験、初期2回至適接種間隔検討試験に参加した人も、安全性確認試験と同様の方法で安全性を確認する。
結果と考察
本試験では薬事法承認外の投与方法による研究が含まれているため、臨床研究に関する倫理指針に従い、補償保険を購入して実施した。十分な安全性を確保するためもあり、ワクチン接種は原則として救急対応が可能な病院内で原則実施した。また、地域による影響を除外するために多施設で行った。
エジプト株免疫原性試験では、50名にH5N1ワクチンの2回接種および採血が終了し、次年度に中和抗体を測定する予定である。安全性も調査した。初期2回至適接種間隔検討試験では、90名に対する2回接種および2回の採血が終了し、次年度に中和抗体測定を計画している。得られた抗体測定結果から、エジプト株の免疫原性を確認するとともに、2回接種で幅広い抗体が誘導できる接種間隔を明らかにする。パンデミック当初はH5N1ワクチンの不足が心配されており、2回の接種で幅広い抗体が誘導されるのは国民にとって有益である。
今までの研究では、用いる株が替わってもH5N1インフルエンザワクチンの安全性は替わらないとされている。今回行った安全性確認試験では、当初の予定よりも接種希望者が少なく、エジプト株の使用期限となる平成26年4月15日までに436名の接種が終了した。予測される全身反応、局所反応の頻度は、今までのワクチン株と同等であった。次年度は新たに製造されたワクチン株を用いて接種を継続して行う。株ごとの安全性について解析を行い、備蓄に関わる基礎資料を提供する計画である。
なお、H5N1インフルエンザワクチンの安全性に関しては、局所反応の面では皮下注射よりも筋肉注射の方が、出現頻度が少なく、H5N1インフルエンザワクチンは筋肉注射が勧められている。
結論
エジプト株免疫原性試験および初期2回至適接種間隔検討試験は計画通り行われており、今年度は各株に対する中和抗体価を測定し、その結果を解析する。安全性確認試験では、次年度も新たに製造されたH5N1ワクチンを用い、症例を増して検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201318059Z