国内の病原体サーベイランスに資する機能的なラボネットワークの強化に関する研究

文献情報

文献番号
201318056A
報告書区分
総括
研究課題名
国内の病原体サーベイランスに資する機能的なラボネットワークの強化に関する研究
課題番号
H25-新興-指定-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
研究分担者(所属機関)
  • 大西 真(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 甲斐 明美(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 加藤 はる(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所 ウイルス 第一部)
  • 清水 博之(国立感染症研究所 ウイルス 第二部)
  • 竹田 誠(国立感染症研究所 ウイルス 第三部)
  • 蒲地 一成(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 御手洗 聡(公益財団法人結核予防会結核研究所抗酸菌部)
  • 森川 茂(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 俣野 哲朗(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 藤本 嗣人(国立感染症研究所感染症疫学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型インフルエンザ等の感染症アウトブレイクなど国民生活に脅威となる感染症のリスクは常に存在し、時に現実となっている。しかし、現行では国全体として統一的に病原体を特定し、その病原体のサーベイランスにより感染拡大を把握するような、法的に整備されたシステムが存在しない。危機発生時に直ちに対応できる病原体診断を全国規模で実施できる体制が必要であり、その基盤となる全国ラボネットワークを構築・維持することは危機管理上必須である。本研究班では、感染研と各地衛研が相互に補完協力することを前提として、危機的な感染症の発生に対処する体制を構築維持する。ウイルス、細菌、真菌、寄生虫などあらゆる病原体を想定し危機的感染症に備える研究を実施する。
 本研究の成果は、全国の行政機関における病原診断能力の向上と維持につながり、わが国における精度の高い感染症発生動向調査結果として報告され、施策に直接反映される。また、インフルエンザ等のパンデミックにおいて流行状況を把握する必要が生じた場合、本研究成果の活用により、全国での病原体検査実施が迅速かつ円滑に行われ、また流行状況の正確な把握が可能になり、パンデミック対策等の危機管理に資する。

研究方法
地方衛生研究所と感染研が共同で実施すべきレファレンス活動として、国立感染症研究所長をはじめとする感染研のスタッフと、地方衛生協議会全国協議会会長、および、感染症対策部会の委員が協議を行った。また、これまでに行ったレファレンスセンターに関する調査結果、地域保健総合推進事業において調査されている自治体における検査項目などを利用して考察を行った。
 各病原体レファレンスセンター活動としては、1)大腸菌・レジオネラ・レンサ球菌、2)カンピロバクター、3)寄生虫、4)ジフテリア・ボツリヌス、5)フラビウイルス・トガウイルス、6)リケッチア、7)腸管ウイルス感染症(下痢症ウイルス)、8)腸管ウイルス感染症(エンテロウイルス)、9)麻疹・風疹、10)百日咳、11)抗酸菌、12)動物由来感染症、13)HIV関連感染症、14)アデノウイルス、を設定した。それぞれの病原体について、全国で分離された株の型別、薬剤耐性株の出現状況調査、講習会・技術研修会の実施、検査法の検討を行った。また、レファレンス活動に該当する病原体・細菌毒素などの診断法・疫学解析法の確立および評価を行った。
結果と考察
感染研と地衛研の間で常時連携して特定の疾病に対応する機能的な枠組みとしてレファレンスセンターをおくこととし、その概要につき設置、対象疾患、設置期間、実施項目、危機対応、研究利用につき明文化した。レファレンスセンターの概要について明文化したことにより、わが国の病原体検査が円滑に実施できることが期待される。実際に運用し修正が必要な事項等が明らかになれば、協議の上変更が必要と考える。
 地方衛生研究所において①精度管理、GLP対応が必要と思われる感染症(インフルエンザ・麻疹・風疹・ノロウイルス・新興感染症)、② 検査の強化が必要と思われる感染症(薬剤耐性菌)、③病原体検出マニュアル整備等が必要と考えられる疾患を明確にした。特定の感染症について定期的にEQAを課すことにより地方衛生研究所のレベルはある程度保障する必要がある。
 各レファレンスセンターで取り扱う病原体について、遺伝子検出系・血清診断・型別法の開発・改良・地衛研への配布を行い、各レファレンスセンターを中心とした地衛研の検査体制の強化に貢献した。病原体検査法のマニュアル改訂・研修会・講習会を行うことによって、検査技術の維持・向上に貢献した。いくつかの病原体について疫学調査を行い、全国発生動向・集団発生事例の監視を可能にした。
結論
地方衛生研究所と感染研が共同で実施すべきレファレンスセンターの概要について明文化した。特定の感染症について定期的にEQAを課すことにより地方衛生研究所のレベルはある程度保障する必要がある。GLPへの対応としてプロトコールの作成、機器の保守管理、職員の資格の規定などが今後求められる。
  各病原体の遺伝子検出系・血清診断・型別法の開発・改良・地衛研への配布を行った。病原体検出マニュアルの記載事項の整備、改訂等を定期的に行なう必要があり、今後も地研、保健所、医療研究機関との監視体制強化が求められる。検査技術の継承のために継続して講習会を行うことも必要と考えられる。
 全国のラボネットワークの構築方法の検討、各ブロックのレファレンスセンターを中心とした地衛研の検査体制を維持するために、その専門性を考慮した人員配置と組織作りに取り組むことが、臨床に即した迅速対応と情報発信が可能となり、患者のみならず国民の福祉に資する。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318056Z